かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2013.3.04 update.
東京警察病院看護専門学校卒業後、臨床看護、フリーナース、看護系人材紹介所勤務を経て、フリーライターに。医療・看護系雑誌を中心に執筆活動を行う。現在の関心事は、介護職の専門性と看護と介護の連携について。「看護と介護の強い連携で、日本の医療も社会も、きっと、ずっと良くなる!」と思っている。
このところ1日に1回は耳にする「アベノミクス」。自分のお財布の中すら操作できないほど経済オンチの私でさえ、関心をひきつけられる出来事が起こっています。ローソンに続いて、病院もアベノミクスに賛同して従業員の手当を増額するというのです。
コンビニンスストアの一つであるローソンが、「2013年度から社員の年収を平均3%引き上げる」と発表したのは、記憶に新しいこと。対象は20歳代後半から40歳代の約3300人。年2回の賞与を増額して、年収を平均で15万円増やすそうです。
それからしばらくして、「仙台の病院も賞与加算10万円、アベノミクス賛同」(共同通信社2月18日配信)というニュースの見出しが目に留まりました。“病院”ということで、ローソンの時よりも何倍も興味が湧いてきました。
その病院は宮城県仙台市にある仙台厚生病院で「3月に支給する期末賞与に一律10万円を上乗せする」というものです。
ローソンも、仙台厚生病院も、2012年12月に誕生した安倍晋三内閣が進めようとしているデフレ脱却・経済成長を目指すアベノミクスに賛同し、推進へ少しでも協力したい、ということでした。
アベノミクスでは、「3本の矢」に例えた「財政出動」「金融緩和」「成長戦略」により、経済の活性化を図って長期のデフレ脱却と経済成長を目指しています。これに沿って従業員の年収を増額し、購買意欲を向上させて経済活動の活性化に一役買おう、ということのようです。
国の政策に企業などが応えてさまざまな活動をするのは、良いことだと思います。ただ、今回の取り組みの恩恵にあずかるのは、一部の人です。ローソンであれば、社内にたくさんいるであろう派遣社員や契約社員、フランチャイズチェーンの店長やアルバイトスタッフ等は対象に含まれていません。正社員だけを保護するようなこの取り組みに、ちょっと不公平感を覚えます。また、年に1~2度の手当の上乗せで、みんなそうそう消費を増やすでしょうか?不安定な世情にあって子どもの進学や将来のために、もしもの時のために、貯蓄に回す人もいるはずです。また、買い物をしても一時的に増えた分は普段の買い物に充てて消費金額はそれまでと変わらない…といったことも起こるような気がします。<消費を促進して景気回復の一助としよう>という今回の目的は、果たして達成できるのでしょうか、疑問が残ります。
手当増額の財源は、それぞれの会社の内部留保金―いわゆる会社のヘソクリのようなお金です。従業員らの労働によって得られた結果ですから、もちろん社員に還元することは正しい使い方だと思います。ただし、景気回復を目指すのであれば、社会への還元ももっと促進してほしいと思います。例えば、企業が資金を提供してコンサートやイベントなど文化・芸術活動を支援するメセナをより積極的に行ったり、ドナルド・マクドナルド・ハウスのように病気の子どもとその家族のための施設やサービスを提供したり、そういったことにも今まで以上に協力してほしいものです。こうした社会の人たちが広く利用し、楽しむ施設を作ったり取り組みを行ったりすることで、アベノミクスの恩恵はより多くの人にもたらされ、そこには新たな経済の流れが生まれるのではないでしょうか。
参考HP