JJNスペシャル『看護研究の進め方 論文の書き方 第2版』を活用した授業展開,指導のポイント

JJNスペシャル『看護研究の進め方 論文の書き方 第2版』を活用した授業展開,指導のポイント

2012.12.11 update.

加藤憲司(神戸市看護大学・准教授) イメージ

加藤憲司(神戸市看護大学・准教授)

1966年岐阜市生まれ。早稲田大学教育学部生物学専修および大阪大学医学部保健学科卒業。
大阪大学大学院およびスウェーデン王立カロリンスカ大学大学院修了。大阪大学博士(保健学)、カロリンスカ大学PhD(epidemiology)、保健師、看護師。大阪大学大学院医学系研究科附属ツインリサーチセンター・特任教授などを経て、2013年春から現職。
岐阜県職員、世界保健機関(WHO)神戸センター技術担当官、国際医療福祉大学小田原保健医療学部講師、千里金蘭大学看護学部准教授を経て、現職。専門は疫学、地域保健学。

 

 はじめまして。加藤憲司と申します。第2版の共著者の一人として,本書を基礎教育における「看護研究」などの授業でご活用いただく際のヒントや指導のポイントとなる事項について,できるだけわかりやすく述べたいと思います。

JN研究初版-1.jpgのサムネール画像

 

2版の特徴・編集上の工夫

 まず,第2版の特徴や工夫した点をお話しします。本書はコンパクトなサイズでありながら,研究の最初の取っかかりから論文投稿にいたるまでの全過程を解説しようという,大変意欲的な試みを具現化したものです。したがって,盛り込む内容は厳選に厳選を重ね,本当に大切なことだけを,できる限りシンプルに記述するよう心がけました。

 もちろん,「本書を読めばすぐに看護研究ができるようになる」などとは申しません。本格的に研究しようとするならば,もっと分厚い定番のテキストや個別の研究法を詳述した解説書を,辛抱強く読み進めていく必要があります。

 本書が目的としているのは,将来看護研究をする,しないにかかわらず,初学者でも通読できるサイズの教科書によって,研究というものの全体の流れをイメージできるようにすることです。

 

*本書の詳細目次は右記をクリックしてください。→看護研究の進め方 論文の書き方 第2版目次.pdf

 

“砂時計モデル”で理解する研究プロセスと授業の全体計画

 本書ではその「流れ」を,砂時計の砂が上から下へ落ちていく様子にたとえました。なぜ砂時計にたとえたかというと,「①研究の各ステップの重要度は同等ではなく,それぞれに要する時間も一様ではないこと」と,「②上に砂をたくさん詰めておけば(つまり,準備をしっかりすれば),あとは自然に砂が下へ落ちるに任せればよいこと」を表現したかったからです。

 ②については,ドミノ倒しにたとえる先生もおられますが,そのココロは同じです。砂時計のたとえの方がすぐれている点は,各部分の断面積が,それぞれのステップの所要時間とおおむね比例することです。

砂時計モデルjpeg.jpg

 

 本書を手にとって,砂時計の形をした図表を見つけてみてください(上図表。書籍のⅲページ,17ページに同じ図表があります)。

 そこには10のステップが上から下へと書かれています。これらの10ステップのうち,砂時計が横にふくらんでいる部分,すなわちステップ①~③あたりと⑧~⑩あたりが,時間と労力を要する部分に相当します。

 欧米では,完成度の高い研究計画書を書けるようになってはじめて,実際の研究に取り組むことを許されます。研究者として解き明かしたい問いを洗練させ,それを解き明かすための設計図である研究計画書を書けるようになる――初学者としては,これができるようになるだけでも十分なのです。

 各専門学校,大学の授業計画・シラバスにもよるかと思いますが,初学者である看護学生にいきなり実際の研究を行わせることは,かなり大変なことだと考えます。「看護研究Ⅰ」「看護研究Ⅱ」のように看護研究の授業を2年間に分けて実施される学校も多いことでしょう。

 そこで「看護研究Ⅰ」などとして初めて看護研究を学ぶ学生を対象に,本書を用いた授業展開案をまずはご提案したいと思います。

 授業の目標としてはステップ⑦までに設定し,①~⑦を砂時計モデルに沿って時間配分するというのが,私からのご提案です。ステップ⑦,つまり研究計画書を作成することを授業の到達目標とするわけです。

 さらに,ステップ①~⑤までを授業時間全体の前半を使って行い,ステップ⑥~⑦までを授業時間全体の後半を使って行うというプランで授業全体の構成を考えてみました。

 また,「指導者用のチェックリスト」を別表(指導者用チェックリスト).pdfとして掲げました(左記,緑色の文字部分をクリックしてください)。これらの項目を満たすような研究計画書を各学生が書き上げることを目標に,全体の授業構成を設計することになります。

 

学生が「答えを見つけたい」と思えるリサーチクエスチョンを探し出すための授業展開

 では,再び砂時計をご覧ください。本書で繰り返し述べているように,研究の全過程のなかでもっとも重要なのが,ステップ⑤の「リサーチクエスチョン・研究目的を決定する」です。「研究目的」というのは「リサーチクエスチョン」を肯定文に置き換えたものです(編集部註=文末)。したがって,「よい問いを立てられるかどうか」が,まさに研究の命(いのち)だと言えます。本書19ページでは「厳しい言い方をすれば、『答えを見つけたい』と思う問いをあなたがもっていないのならば、本書を読んで研究について学ぶ必要もないということになります」というやや強い表現を用いましたが、それほどこのステップが研究において重要であることを学生に伝えていただきたいと思います。

 授業設計にあたっては,ステップ⑤で洗練された問いにたどり着くために,ステップ①~④を何度もループするような構成が望ましいでしょう。

 

【ステップ①】

 ステップ①ではまず,各学生にこれまでの学習や実習,あるいは日常生活において,「不思議だなあ」と感じる疑問や,興味を引かれる現象などを思いつくままに書き出させます。次に数人のグループ内で,思いついたことをお互いに披露し合うワークを行います。このとき,話し手が「なぜ自分がそれに疑問や興味をもつのか」を聞き手に理解させ,納得させるように話させることが大切です。一方,聞き手は話し手があいまいな部分を具体化したり,偏ったものの見方を正したり,議論を深めたりできるような意見を述べさせます。

  ↓↓

【ステップ②】

 ステップ②では,グループワークで得られた気づきをもとに,自分の思いを「問い」の形で表現させます。最初に思いついたことだけにこだわらず,ワークを通じて別の問いが見つかれば,変更や改良を繰り返して構いません。問いの形で表現したら,本書2章第2で挙げている「適切でない問い」(20~22ページ)に該当しないかどうかを各自で考察させ,修正させます。

  ↓↓

【ステップ③】

 ある程度適切と言えそうな問いが立てられたら,ステップ③の文献検索に進みます。

 ここで,各学校の文献データベース利用環境における検索ツールの使用方法についての講義ならびに演習を,本書3と照らし合わせつつ行うとよいでしょう。

 その後,各学生に自分の立てた問いに関連するキーワードを考えさせます。学生一人ひとりがデータベースにアクセスし,試行錯誤を繰り返しながら適切なキーワードを選び取る練習をさせてください。おおむね適切なキーワードが選択できたら,検索でヒットした文献の題名や抄録を,理解できるかどうかを気にせず広く浅く読ませてみます。これは3章第3でいうところの「情報収集の視点」での文献の読み方に相当します。

  ↓↓

【ステップ④】

 前のステップで多くの学生は,文献からどんな情報をどのように読み取ったらよいかわからず,頭が混乱してくるのではないでしょうか。この経験を敢えてさせることは,ステップ④の「リサーチクエスチョンの絞り込み」の重要性を実感させるうえで効果的です。ここで本書2章第3をていねいに読ませ,研究上の問いには「レベル」と「構造」がある,という知識を与えるのです。そして,前のステップで集めた文献一つひとつについて,「この研究の問いのレベルはどれか」「この研究の問いの構造はどのようなものか」を書き出させましょう。そのうえで,あらためて自分の問いを見つめ直させます。おそらく1回目に立てた問いは大幅な改良が必要となるでしょうから,ステップ①または②に戻ってやり直します。

 この①~④のループの回数は学生ごとに異なって構いません。意欲のある学生ほど,ループの回数が多くなると思います。なお,このループについては,3章第3でも例を挙げて解説しています。

  ↓↓

【ステップ⑤】

 授業回数が残り半分を切ったあたりで,中間発表会もしくは短いレポート提出の形で,各学生に自分のリサーチクエスチョンを発表させます。発表会での質疑応答もしくはレポートに対する指導者の添削を経て,各自のリサーチクエスチョンが決定することになります。これがステップ⑤です。

 

後半の授業展開

 後半の授業では,最終課題である研究計画書を意識させながら,本書46の内容の講義を行います。ただし第4章は発展的な内容を含むので,初学者は質的研究と量的研究の違い,および量的研究における実験研究と観察研究(非実験研究)の違いが理解できればよいでしょう。研究計画書の提出をもって,ステップ⑥と⑦の到達の度合いをチェックし,評価します。このうちステップ⑥の研究デザインの適切性に関しては,4章第4にある「問いのレベルと研究デザイン」の対応表と合致しているかどうかのチェックだけで十分だと思います。

 

 

 以上,砂時計モデルに即して,指導のポイントを解説してきました。この解説自体,砂時計を意識した構成(すなわち,前半重視)になっていることにお気づきかと思います。

 研究の入り口に学生をしっかり導くことができたら,次のステップとして「看護研究Ⅱ」などの授業において478で解説した研究の具体的な実施,口頭発表や論文執筆につなげていきます。

 本書を通じて,一人でも多くの学生が看護研究の基本を体得していただければ,著者の一人として望外の喜びです。長文にお付き合いいただき,ありがとうございました。

 

 

 

編集部註:本書では,リサーチクエスチョン(研究上の問い)と表記を統一しています。これらの用語は「リサーチクエスチョン≒研究上の問い≒研究目的」とほぼ同義とご理解ください。

≪JJNスペシャル≫看護研究の進め方 論文の書き方(第2版)

看護研究の進め方、論文の書き方、プレゼンテーションの方法をコンパクトに凝縮!
ベストセラーの第2版。「研究テーマを探す」「研究を実際に進める」「論文や口頭発表で成果をまとめる」という看護研究の一連のプロセスを、この1冊でしっかりサポート。カラー化し、理解を助ける図表・イラストも豊富に盛り込み、入門書として最適の1冊。基礎教育のテキストとしても活用しやすいよう、基本事項を網羅し、読者に語りかけるような解説で、親しみやすさをめざしました。

詳細はこちら

このページのトップへ