「ありのまま」を受け止める

「ありのまま」を受け止める

2011.8.09 update.

常石 悠子(つねいし ゆうこ) イメージ

常石 悠子(つねいし ゆうこ)

2004年5月米国カリフォルニア州にあるミルズ大学大学院教育学部Child Life in Hospitals and Community Health Centers学科修了後、同州、Easter Seals Child Development Centerにて勤務。2005年夏日本に帰国し、同年12月より、国立病院機構名古屋医療センターにてCLSとして3年間活動。「もう日本を離れることはないだろうな」と思っていたら、夫と共に再びアメリカへ転居することに。現在、Visiting Nurse Service of New Yorkにて大切な人を亡くした子どもとその家族をサポートするボランティアを経て、小児緩和ケアプログラムのCLSとして勤務。周りが呆れるほどの方向音痴。でも、そんなことも全く気にせず、自分の道を突き進むマイペースなB型です。

 

CLSになりたい方、留学等に関心がある方は以下のサイトをご参照下さい!

book 北米チャイルド・ライフ協会

book 日本チャイルド・ライフ学会

book チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会

 

 

前回はこちら

 

さて、今回は、今までのCLSとしての経験が、現在の私の活動にどのように活かされているかをお話したいと思います。

 

大切な人を亡くすこと

 

CLSとして勤務した名古屋医療センターで、私は主に小児がんの子どもやその家族と関わってきました。その中には、元気になって元の生活に戻って行く子どもたちもいましたが、天国に旅立つ子どもたちもいました。私たちスタッフも、子どもを亡くした家族のケアの必要性を理解していましたが、そこまでの継続的な支援ができず、いつも心の片隅で、残された家族のことを思いながら、入院している子どもたちやその家族と向き合う日々でした。

 

そんな中、私はお子さんを亡くされたお母さんたちから連絡をいただくことがありました。「毎日泣いてばかりいる」、「信じられない」、「いつ深い悲しみから抜け出せるのか」、など、それぞれの親御さんたちが、本当に多様で複雑な思いを抱えながら、毎日を過ごされていることを痛感しました。また、亡くなられたお子さんの兄弟姉妹について伺うと、「何事もなかったように過ごしている」、「以前より甘えるようになった」、など、心の奥底で渦巻いている自分自身のいろいろな感情とどのようにつきあえばいいのかわからなかったり、自分の心に鍵をかけて気持ちを周囲と共有できなかったり、一生懸命周りのおとなの期待に答えようと元気に明るく振る舞っていたりする兄弟姉妹もいるようでした。

 

お母さんたちの話を聞かせていただく中で、私は、大切な人を亡くすことは、ただ深い悲しみを感じるだけではなく、怒りや孤独などの言葉では表しづらい感情が、毎日波のように寄せては返す、その繰り返しであること、また、兄弟姉妹を亡くした子どもの思いは、子どもを亡くしたおとな(親、祖父母、親戚など)の思いの影に隠れてしまうこともあるということに気がつきました。しかし、深い喪失感の中いる周囲のおとなにとって、子どもの気持ちに気づき、寄り添い、支えることはとても難しいことです。お母さんたちの話を聞くたびに、他の医療スタッフと一緒に、継続的な支援ができればと考えていたところ、アメリカに再び転居することになりました。大切な人を亡くした家族へのサポートが盛んなこの国で、CLSの視点から現場でさらに経験を積みたいと思い、ボランティア活動を始めることにしました。

 

 

アメリカでの活動をとおして

 

私は現在、アメリカのニューヨーク州にあるVisiting Nurse Service of New Yorkという在宅医療やホスピス・ケアを提供しているNPO団体で、ボランティアを行っています。主な活動の一つは、大切な人を亡くした家族が定期的に集まるサポート・グループのお手伝いです。この会の運営は、グリーフ・ケア専門のカウンセラー(以下、カウンセラー)とソーシャル・ワーカーが中心となって行われており、大切な人を亡くした家族に限らず、親戚や友人も参加することができます。子どもの対象年齢は5歳以上となっていますが、家族の状況に応じて柔軟に対応しています。この会では、主にアートや遊びをとおして家族が亡くなった人のことを想い、他の家族と気持ちを共有し、安全に、そして、安心して時間を過ごせるよう支援しています。この時間は、毎日忙しくしている家族が一緒に過ごし、亡くなった人を想う貴重な時間にもなっているようです。

 

もう一つの活動は、おじいさんやおばあさん、お父さんやお母さんなど、大切な家族がホスピス・ケアを受けている子どもや家族を亡くした子どもの家を訪問し、遊びをとおして関わることです。この活動はまだ始めて間もないのですが、CLSの活動をとおして学んだことを基盤にして、「子どもの遊びを見守り、思いに寄り添うこと」を心がけています。私が子どもと一緒に行う遊びは、特別なものを提供する形ではなく、子どもが自由に遊ぶことができるように援助しています。前回お話しした「メディカル・プレイ」のように、子どもが考えていることや思っていることが遊びの中で表れることもあります。子どもとの遊びや会話、家族の様子などを毎回記録し、カウンセラーと共有し、何か気になることがあれば、すぐにカウンセラーや他の医療スタッフが対応できるように体制が整えられています。

 

私はこの2つの活動をとおして、「今」のありのままの子どもや家族を受け止めることが大事であると改めて実感しています。また、大切な人を亡くした家族同士の交流が励みとなる家族もいれば、個別のサポートが助けとなる家族もいます。アートや遊び、会話などをとおして気持ちを表現することにより、大切な人の死と向き合う子どもや家族もいれば、静かに安心できる場所にいることが支えとなっている子どもや家族もいます。それぞれに合った形やペースで、家族全体を、CLSとして支援できるように、ボランティア活動をとおして模索しているところです。

 

さて、私の担当は今回で終了です。読んでいただき、ありがとうございました!次回からは広島大学病院・県立広島病院CLSの藤原彩さんが連載を担当してくださいます。是非、お楽しみに!

 

次回は→こちら

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