大学病院でのオシゴト。

大学病院でのオシゴト。

2011.8.23 update.

藤原 彩(ふじわら あや) イメージ

藤原 彩(ふじわら あや)

2001年3月に広島大学大学院博士課程前期修了。同年8月からアメリカのIllinois State University大学院でChild Lifeを学ぶ。2004年にCertified Child Life Specialistとなり、2005年3月から広島大学病院で勤務。2007年からは週末の1日に県立広島病院でも勤務している。留学中からアメリカのテレビ番組にハマり、今も平日の夜や休日に自宅でアメリカのドラマやリアリティショーを見るのが楽しみ。今、もっともハマっているのは「Glee」。「注射」が怖く、痛みに弱いチャイルド・ライフ・スペシャリストです。

 

CLSになりたい方、留学等に関心がある方は以下のサイトをご参照下さい!

book 北米チャイルド・ライフ協会

book 日本チャイルド・ライフ学会

book チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会

 

 

前回は→こちら

 

はじめまして。広島で唯一のCLS藤原彩と申します。CLSの仕事について楽しくお伝えできたらと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

 

さて。広島大学病院でCLSとして働き始めて丸6年、県立広島病院でも丸4年が経ちました。CLSは全国に20数名おりますが、各病院や配属される部署の特徴によって、その活動内容は少しずつ異なっています。そこで、広島にある2つの病院での『わたし』の活動について紹介させていただこうと思います。

 

広島大学病院では

 

まず広島大学病院(以下、大学病院)での仕事です。大学病院の小児科では、わたしが仕事を始めるよりずっと前から、心理士による心理社会的サポートが患者さんとご家族に提供されていました。そのため、就職が決まったとき小児科の教授に「うちでは小学生以上の子どもは心理士が担当してくれているけれど、小さい子たちは誰も専門的にサポートしてくれる人がいないから、そこを重点的に頼みたい」と言われました。この依頼によって、大学病院でのわたしの活動は、乳幼児期の子どもとその家族への介入が中心となりました。このように年齢によってCLSの介入対象が決まることは、日本の他の施設では稀だと思います。

 

6年以上勤める今でこそ、小児科以外の科(脳神経外科や小児外科など)で入院してくる子どもたちへも積極的に介入する機会が増えましたが、最初はもっぱら小児科の幼い子どもたちが介入の対象でした。広島大学病院の小児科は小児がんや原発性免疫不全の患者さんの割合が多いため、入院期間が半年を超えることが多く、1年近く入院している子どもも少なくありません。おとなにとっては「たかが半年」でも、子どもにとっては大きな半年です。子どもの半年前と後では、身長や体重などの身体的発達はもちろんのこと、知的発達や精神発達においても大きく変化します。特に乳幼児期の子どもたちにとって、遊びは生活の中心であり、発達と密接に関係しています。そのため、たとえ入院中であっても、この時期に「発達に適した環境や関わり」を提供し、「通常の成長、発達」を促すことが重要だと考え、治癒的介入の一環としておこなう「発達に適した遊び」を活動の中心に据えました。試行錯誤した時期はありましたが、今でもこの「遊び」を中心に「わたし」の一日は回っています。簡単に申しますと、「午前はグループで、午後は個室」です。

 

午前:グループでのかかわり

 

午前中はグループで、と書きましたが、処置やケアがあって子どもたちが意外と忙しくしているのが午前中です。院内学級に行かない就学前の子どもたちのケアは、学童期の子どもたちが登校している間に少しでも済ませておきたいという「おとなの事情」もあって、午前中は小さな子どもたちがあちこちでスタッフのケアを受けています。それらがひと段落する11時からお昼ご飯が来るまでの間、「わたし」はプレイルームに在室し、さまざまな遊びの体制を整えています。もちろんそれまでもプレイルームは空いているので出入りは自由ですが(プレイルームは24時間オープン!)、11時には、できるだけプレイルームに来ていただくよう就学前の子どもたちの保護者にはお願いしています。ここで「わたし」は、できるだけ集団で遊ぶことを意識しつつも、安全性が保たれて発達に適していれば、プレイルームで誰と何を使ってどのように遊ぶかは子どもたちに任せています。「わたし」はいろいろと提案したり、実際に遊んで見せたりもしますが、他の人が遊ぶのを見ているだけでもOKだし、無理に集団に入る必要もありません。場合によっては人がたくさんいるプレイルームにストレスを感じる子どももいるので、「行かない」という選択をしてもらってもかまいません。子どもたちが選択します。

 

プレイルームでの「わたし」は、そこかしこで子どもたちと遊んだり、付き添いのママたちとおしゃべりをして遊んだりもします。この行為は一見すると、ただの遊び相手にしか見えないと思います。確かに本当に楽しんでいるだけな瞬間もありますし、気がつけば子どもにゲームで完敗し、本気で悔しい思いをすることもあります。しかし、遊びながらも、誰が何を使ってどんな遊びをしているかといった遊び方や遊びの内容、友だちとの関わり方、親御さんに対する態度、親御さんの子どもへの接し方、プレイルームで医療者が声をかけてきたときの反応、子どもの発言内容(特に治療に関わる発言)等を注意深く観察し、データを頭に貯めています。このデータは「いつもとの違い」が出てきたときにすぐに気づくのに必要不可欠であり、また子どもひとりひとりに合った有効な介入方法を考える際の重要な手掛かりとなります。

 

午後:個別のかかわり

 

子どもたちがお昼ご飯を食べ始めるころ、「わたし」はプレイルームをざっと片付けます。そして、もう一仕事。「プレイルームに来ることを許可されてはいるけれど、何かしらの事情で来なかった子どもたち」に会いに行きます。プレイルームに来なかった事情は様々です。「治療のため、午前中はずっと体を横にしていないといけなかった」、「検査に行っていた」、「しんどいからお母さんが『行ったらダメ』って言った」、「親戚がお見舞いに来てくれていた」、「早起きしすぎて、11時から昼寝をしてしまった」等々。お見舞い客やお昼寝といった平和な理由であれば、「それじゃまた明日ね」で済みますが、医療行為が理由であればその子がその行為をどのように受け止めているか、どのように乗り越えているかをチェックするようにしています。もし、この時点で混乱や動揺が見えるようであれば介入を考えなければなりませんし、子どもたちが自分の力で乗り越えている場合でも「今日は忙しかったみたいだね。明日、何もなければまた一緒に遊ぼうね」と声をかけて、日常に戻るきっかけ作りをする必要があります。

 

それからスタッフとのカンファレンスがある日はカンファをして、昼休憩に入りますし、なければそのまま昼休憩。しっかりデザートも食べながら言うのもなんですが、一応頭では午後のプランを練っています。

 

そして、おなかがいっぱいになった後は、個室にいる子どもたちとの時間に突入します。大学病院では、化学療法だけでなく、造血幹細胞移植もよくおこなわれます。移植前の子どもたちや、化学療法によって感染症のリスクが高い子どもたちは「小児病棟」から「先進治療病棟」へと引っ越します。移植のための無菌室も先進治療病棟にあります。この病棟では、子どもたちは全員個室に入り、子ども同士の直接的関わりは持てなくなります。そのため「わたし」は個室にいる小さな子どもたちの部屋に毎日行き、体調やストレスレベルを考慮しながら子どもと一緒に遊びます。残念ながらすべての乳幼児期の子どもたちに同じだけの時間かかわることは難しいため、ストレスレベルが非常に高い、家族のサポートが得られにくい状況にあるなど、ニーズのある子どもとその家族には長めに、そうでない子どもとご家族には短めの介入をさせていただいています。「わたし」が訪室している間、付き添いの保護者には「自由に過ごしてください」とお伝えしています。一緒に遊ぶことを選ばれる方もいらっしゃれば、用事のため10分~20分ほど外出される方もいます。CLSにとって個室での関わりのメリットは、子どもと1対1で向き合えることだけではなく、付き添いの方と周囲の目を気にせずお話できることにもあります。特に母親とは、日頃のストレス、治療に対する不安や思い、病院内での対人関係など「大きな声では言えない話」をすることが頻繁にあります。就職してから1-2年の頃は、CLSが保護者の方と込み入った話をすることに驚くスタッフもいましたが、今では「お母さんは何ておっしゃっていましたか?」とスタッフに尋ねられることもありますし、「お母さんの話を聞いてきてもらってもいいですか?」と依頼されることもしばしばです。

 

夜:ひと段落して…

 

午後は夕食前後(午後7時くらい)までこんな介入が続いていきます。その後は、つきあいの長い「大きい子」たちのところに顔を出します。冒頭で「乳幼児期の子どもたちが介入の中心」と書きましたが、直接的な介入をしていなくとも、長期入院であればたいていの子どもとその保護者とは顔見知りになります。再入院ともなれば、子どもが楽しく過ごせる時間を少しでも増やしたいと願う「大きい子」の親御さんから、「時間のあるときでいいから」と直接依頼されることもあるので、「小さい子」への介入がひと段落する夕食後にお会いしています。大きい子と遊ぶ際には、心理士の介入の邪魔をして子どもたちが混乱してはいけないので、余計なことは考えず、とにかく楽しく遊ぶことを心がけています。

 

 

さて。一日の大きな流れは上記の通りですが、CLSのその他の業務はこの1日の大きな流れの「隙間」に押し込んでいきます。CLSの業務をしているのは「わたし」ひとりなので、前日の夜に、頭の中で自由に明日の動きを決めます。つまり「いつもの流れ」のどこに「単発の出来事」を押し込むか、です。その結果、プリパレイション(注)を朝の9時からおこなう日もあれば、すべての予定が終わった消灯前になってしまうこともあります。手術後のフォローアップや保護者の方からの急な相談、退院前の話し合い、新しい患者さんへのご挨拶などはもちろん、スタッフとのコミュニケーションやミーティングさえも「隙間」に何とか押し込んでいます。

 

「いつか他のCLSと一緒に働きたい♪」そんな夢を持ちながらも、この身勝手な1日を「わたし」はとても楽しんでいます。

 

次回は、週に1度行く病院でCLSが何をしているかについて、お伝えできたらと思います。

 

(注)プリパレイション:これから起こる治療、検査や処置といった出来事に対して、子どもたちの気持ちに寄り添いながら、子どもたちが主体的に取り組めるよう心の準備を手伝うこと。 

 

次回は→こちら

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