チャイルド・ライフ・スペシャリストのオシゴト。【1】

チャイルド・ライフ・スペシャリストのオシゴト。【1】

2011.5.16 update.

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大曲 睦恵(おおまがり ちかえ)

2001年4月日本女子大学卒。同年9月からカリフォルニア州にあるミルズ大学付属大学院修士課程にてChild Life in Hospitals and Community Health Centers with Children who have Medical Needsを専攻。2003年12月同大学院卒業後、2004年4月から静岡県立静岡がんセンターにてチャイルド・ライフ・スペシャリストとして勤務、2012年5月より現職。趣味はA型らしくお部屋の掃除、でも病院のプレイルームやおもちゃの片付けはいつも時間がかかり、その間に入院している子どもたちやお母様達が手伝って下さり、「本当にA型なの?」と疑惑を持たれています・・・

1回 CLSって?

 

国立がん研究センター中央病院緩和医療科 

大曲睦恵

 

 

CLSになりたい方、留学等に関心がある方は以下のサイトをご参照下さい!

book 北米チャイルド・ライフ協会

book 日本チャイルド・ライフ学会

book チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会

 

 

はじめまして。チャイルド・ライフ・スペシャリスト(Child Life Specialist:以下CLS)の大曲睦恵です。

 

この職業の名前をはじめて目にする方もいらっしゃるのではないでしょうか?CLSとは、北米の大学、大学院でチャイルド・ライフに関わる理論と実習(インターンシップ)を修了し、資格を取得した専門職です。

 

※CLSのなかでも、北米チャイルド・ライフ協会(Child Life Council)により年2回実施されている資格認定試験に合格したCLSはCCLS(Certified Child Life Specialist)と呼ばれていますが、この連載のなかでは双方区別なくCLSと表現します。

 

CLSは多職種(医療)チームの一員として、チャイルド・ライフ・プログラムを遂行する役割を担っています。チャイルド・ライフ・プログラムでは、おもに遊びをとおし、患者・家族をサポートします。この仕事の中心は、病気などストレスの高い状況下に置かれている子どもに、子どもの生活の中心である遊びをとおして心を癒す「治療的遊び=セラピューティック・プレイ」を提供することです。遊びは、子どもの成長や学習を促進するだけでなく、まったく無力な状況にあるこどもに力を呼び戻す働きもあるからです。

 

いま、北米では、子ども病院や大学病院・総合病院などの小児科を中心に、在宅医療・ホスピス・特別支援施設・歯科クリニック・就学前児童教育・青少年更生施設・裁判所などなど、コミュニティのなかで子どもの心のケアに対する需要が高まっています。これによってCLSの活動範囲も大幅に広まりつつあります。一方、日本では現在20数名のCLSがおり、全国の医療機関(おもに小児科)でチャイルド・ライフ・プログラムを実践しています。

 

CLSの理念は、家族中心のケア(Family-centered Care)であり、病気の子どものケアだけでなく、兄弟姉妹も含めた子どもに関わる家族の精神的サポートです。私が勤務している静岡がんセンターでも、CLSの活動の一環として、小児科に入院中の子どもとその家族だけでなく、お父さんやお母さんが入院している子どもたちに対しても多職種の方々と連携し、さまざまな支援を行っています。

 

今回は職種の紹介が中心になりましたが、今後、ほかの場所で活動しているCLSたちと一緒に、具体的な活動をとおしてCLSのオシゴトをわかりやすくお伝えしていきたいと思っています。みんなはりきっていますので、どうぞよろしくお願いします!

 

震災のなかの子ども

 

少し話がそれてしまうのですが、今回の未曾有の大震災により、日本中が大変な衝撃を受けています。被害に遭われた方々、支援する方々、復興に力を注ぐ方々に対し、私自身を含め、祈る思いで過ごしている人も少なくないかと思います。

 

子どもの「日常」を守る

 

そんななかで、私は10年前のことを思い出しました。2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが起こったときのことです。私はCLSになるため、アメリカに留学していました。その朝、高層ビルが炎上する衝撃的な映像が繰り返し放送されるテレビを見て、何かの間違いではないかとチャンネルを何度も変えたことを覚えています。

 

当時、幼稚園実習をしていた私は、その日、果たして幼稚園はいつもどおり動いているのかな?と思いながら実習に行きました。ショックを隠せず集まった私たち実習生に、スーパーバイザー(現場主任)がこう言いました。

 

子どもたちにとってはいつもと変わらない日常が守られなければならないのよ。あなたたちのショックはとてもわかる。私もとてもショックを受けている。けれど、いつもどおり笑顔で子どもたちを迎えて、いつもどおりのルーチン(日課)をこなしましょう。

 

今回の大震災の後も、恐ろしい映像が繰り返される報道番組のなかで子ども向けのテレビ番組の放送が再開しました。このことについては賛否両論あるかと思いますが、少なくとも子どもたちの目線で考えると、緊迫した報道が続くなか、慣れ親しんだ番組を少しでも目にすることができたことは、小さな安心感につながったのではないでしょうか。

 

また、震災に見舞われた子どもたちの心のケアについては早くから声が上がり、ボランティアの方やさまざまな団体による支援によって遊びや遊びの環境が提供されているという報道を目にします。震災の大きな悲しみのなか、遊ぶことに対して罪悪感を持つ子もいるかもしれません。けれど、遊びは子どもたちの生活の一部であり、子どものコントロール感を取り戻す大きなきっかけにつながります。これからも遊びの環境や温かく見守る周囲の目が増えることを願っています。

 

このように小さな子どもが遊びで日常を取り戻している一方で、少し大きな子どもたちが避難先でのお手伝い、最近では復興のためのさまざまな活動に生き生きと参加している姿も報道されています。このような子どもたちの姿から、前に進む力、立ち上がる力、生きる力を感じます。もちろん、遊びたくもなく、活動に参加するような気にもなれない子もいると思いますが、その子のペースの現状に対する適応・消化・表現の方法があってよく、それぞれの子に合わせたケアが提供されてほしいと思います。

 

「子どもは、今を生きる天才です」

 

これは当院の小児科の先生がよく言う言葉なのですが、その力を、今回の震災後の子どもたちの様子、そして普段関わっている子どもたちから強く感じますし、また、その力を忘れてはならないと思います。子どもには1人ひとり、もともとたくさんの力があって、ただ、いろいろな状況や変化、ストレスにより、その力が隠れてしまう。けれど、力が発揮できるような配慮ある環境にあればしっかり発揮されるのです。

 

私たちの仕事は、ストレスの高い状況下にある子どもたちに、遊びをとおして、コントロール感や自尊心を引き出すことです。さらに、もともとの家族も応援することや、現場のいろいろな職種の方々と連携し、協働することで子どもへの応援の力は倍増されると思います。子どもたちがどんなに大変な状況でもその子らしくいまを生きていく、そんなお手伝いを多職種の方々とともにしていけたらと思っています。

 

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