かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2011.6.01 update.
川口美喜子
島根大学医学部附属病院臨床栄養部副部長・管理栄養士。2005年より島根大学医学部附属病院NST(栄養サポートチーム)の構築と稼働に携わる。
病院栄養士になってから、食事に悩む患者さんのために患者さんに寄り添える栄養士が必要だと感じていました。そんなとき、院内で事務職に就いていた青山栄養士に出会い、共に歩んでくれるように説得しました。青山栄養士は辛い思いをしながらも、楽天的で無頓着な私と活動を共にしてくれました。最近は、私よりも強く逞しく大きな心で食の奥深さを語ってくれます。親子ほど年の離れた私たちで、患者と家族の体と心を和ます命を繋ぐ病院食を考えていこうと思います。
青山広美
日清医療食品(株)島根大学医学部附属病院事業所・栄養士。
初めてがん治療に苦しむ患者さんに会った時、「今は食欲がないから何もいらない」「治療が辛くて食べる気分にならない」「食べられないから来なくていいわ」と言われることばかりでした。「食欲はないけど、私は生きるために食べたい」という言葉に驚きとショックだったことを覚えています。毎日が特別な食事ではないけれど、患者さんのその日、その時食べたい希望に合わせた調理は、人を思うやさしい料理になると思います。
☆こんな患者さんに
食欲不振、嚥下困難、いつもの茶碗蒸しに飽きた人
小児にも人気!!
一人当たりエネルギー90kcal、たんぱく質7.8g
<材料>
【卵液(a)】
豆乳 120cc
鶏卵 50g
出汁 30g
薄口しょう油 3
【そぼろあん】
鶏ミンチ 60g
(b)
出汁 60cc
薄口しょう油 6cc
みりん 15cc
塩 1.5g
水溶き片栗粉 適量
<作り方>
(a)をよく混ぜ合わせ、茶漉しで濾す。鶏ミンチはさっと茹でて、アクを取っておく。
茹でた鳥ミンチを(b)とともに鍋に入れて火にかけ、沸騰したところに水溶き片栗粉を入れてトロミを付け、そぼろあんをつくる。
器にを入れ、10分ぐらい蒸す。最後にで作ったそぼろあんをかける。
☆Story
女性の患者さんから「豆乳は身体にいいんだけど、飲みにくいのよねぇ」という声を聞き、豆乳で作る茶碗蒸しを考えてみたところ、たんぱく質が豊富で豆乳の臭みを抑えたメニューとなりました。
また茶碗蒸しは、嚥下困難や食欲不振の患者さんに提供するメニューとして定番ですが、小児にはあまり受けがよくありません。小児がんの患者さんにも喜んでもらおうと、そぼろあんをプラスしてみました。
小児に提供する際には、器にも工夫が必要です。柄付きカップで、自分で持ちながら食べられるように考えました。食が細くなった患者さんには、小さな器で出せば食べきることができ、満足感もあります。