がん患者のための食事レシピ No.008

がん患者のための食事レシピ No.008

2011.3.08 update.

プロフィール イメージ

プロフィール

川口美喜子
島根大学医学部附属病院臨床栄養部副部長・管理栄養士。2005年より島根大学医学部附属病院NST(栄養サポートチーム)の構築と稼働に携わる。
病院栄養士になってから、食事に悩む患者さんのために患者さんに寄り添える栄養士が必要だと感じていました。そんなとき、院内で事務職に就いていた青山栄養士に出会い、共に歩んでくれるように説得しました。青山栄養士は辛い思いをしながらも、楽天的で無頓着な私と活動を共にしてくれました。最近は、私よりも強く逞しく大きな心で食の奥深さを語ってくれます。親子ほど年の離れた私たちで、患者と家族の体と心を和ます命を繋ぐ病院食を考えていこうと思います。

青山広美
日清医療食品(株)島根大学医学部附属病院事業所・栄養士。
初めてがん治療に苦しむ患者さんに会った時、「今は食欲がないから何もいらない」「治療が辛くて食べる気分にならない」「食べられないから来なくていいわ」と言われることばかりでした。「食欲はないけど、私は生きるために食べたい」という言葉に驚きとショックだったことを覚えています。毎日が特別な食事ではないけれど、患者さんのその日、その時食べたい希望に合わせた調理は、人を思うやさしい料理になると思います。

ふわトロチヂミ(嚥下食用お好み焼き)

 

ganrecip_08_550.jpg

 

対応

食欲不振、嚥下障害 

 

レシピの背景

お好み焼きを食べたいけど、固くて無理だと思われている患者さんでも、もんじゃ焼きのような食感なら、食べやすいのではないかと考えたメニューです。嚥下食用お好み焼きです。

 

管理栄養士としての患者さんとの関わり

治療が進むにつれて、食欲低下となり気持ちも落ち込んできます。長い入院生活では、病院給食に飽きてしまう方がいます。「寝ているだけではおなかも空かないから、ますます食欲はでない」といわれます。 いつもと違うメニューで蓋を開けたときに喜んでいただけるように心がけました。

 

調理のポイント

食べやすくするために長芋の量をたっぷり使うことが大切です。食べたときにトロトロとした食感も楽しめます。卵はつなぎ程度に使います。

 

レシピ紹介(3人分)

 

一人当たりエネルギー80kcal、たんぱく質3.8g、塩分0.7g

 

<材料> 

長芋        100〜 150g

たまねぎ      30g

ねぎ         10g

人参         15g

卵          50g(1個)

お好みソース      25cc

だし汁        50cc

 

<作り方>

(1)長芋はすりおろし、ねぎはみじん切り。玉ねぎと人参は茹でてからみじん切りにする。

(2)卵を割りほぐし、(1)の材料を混ぜ、お好みソースとだし汁を加え、アルミカップに流し入れる。

(3)数が少ない場合は、フライパンに水を入れ(2)を置き、蓋をして15分蒸し焼きにする。大量調理の場合はコンベクションオーブンで蒸焼。(170℃15分)

(4)アルミカップから取り出し、器に盛る。

 

提供を終えて

食欲のない患者さんに味のはっきりしたソース味のものを食べたいと言われることがよくあります。しかし、嚥下食を食べている患者さんに焼きそばやお好み焼きを出すことは難しく、なかなか要望に応えることができませんでした。そんな折、このふわトロチヂミを出したところ非常に喜ばれました。

 

患者さんの声

蓋を開けたときのソースの香りが良かったようです。「食欲が少し出た」と言って食べていただきました。 

このページのトップへ