がん患者のための食事レシピ No.005

がん患者のための食事レシピ No.005

2011.1.25 update.

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プロフィール

川口美喜子
島根大学医学部附属病院臨床栄養部副部長・管理栄養士。2005年より島根大学医学部附属病院NST(栄養サポートチーム)の構築と稼働に携わる。
病院栄養士になってから、食事に悩む患者さんのために患者さんに寄り添える栄養士が必要だと感じていました。そんなとき、院内で事務職に就いていた青山栄養士に出会い、共に歩んでくれるように説得しました。青山栄養士は辛い思いをしながらも、楽天的で無頓着な私と活動を共にしてくれました。最近は、私よりも強く逞しく大きな心で食の奥深さを語ってくれます。親子ほど年の離れた私たちで、患者と家族の体と心を和ます命を繋ぐ病院食を考えていこうと思います。

青山広美
日清医療食品(株)島根大学医学部附属病院事業所・栄養士。
初めてがん治療に苦しむ患者さんに会った時、「今は食欲がないから何もいらない」「治療が辛くて食べる気分にならない」「食べられないから来なくていいわ」と言われることばかりでした。「食欲はないけど、私は生きるために食べたい」という言葉に驚きとショックだったことを覚えています。毎日が特別な食事ではないけれど、患者さんのその日、その時食べたい希望に合わせた調理は、人を思うやさしい料理になると思います。

■レシピNo.005 むせないパン粥

 

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対応

食欲低下、食道の狭窄のため食事の通過が難しい方や、嚥下障害の方など。口が開きにくい、開口障害の患者さんにも食べやすいメニューです。

 

レシピの背景
パンを味わいたいが飲み込みに問題がある方に、パンを楽しんでいただくよう工夫しました。

 

調理のポイント
はちみつをかけなくても優しい甘さで食べやすい。

 

管理栄養士との関わり
パンが大好きな方でしたが、飲み込みに障害が起きると「パンはムセるから食べられないですよね」と諦めがちでした。また、ご飯でもパンでも力になる主食をできるだけたくさん食べたいという思いのある患者さんに「パンでもご飯のお粥のように調理したらどうだろうか」と考えました。

 

レシピ紹介(3人分) 
一人当たりエネルギー285kcal、たんぱく質13g、塩分0.6g
<材料> 
・食パン       90g (6枚切り食パン1.5枚)
・卵          50g
・砂糖       大さじ3杯
・牛乳        450cc
・はちみつ            15g

 

<作り方>
(1)パンの耳は切り落として、サイコロ状に切る。
(2)卵、砂糖、牛乳を混ぜ合わせて濾す。(茶漉しを利用して濾せます)
(3)パンを(2)の卵液に浸し、浸み込んだら鍋に入れて弱火でコトコト煮る。または、器に入れて蒸す。

 

患者さんの反応
柔らかくてふわふわして美味しいと多くの方が言われました。
開口障害の患者さんには、パン粥を更にミキサーにかけて提供しました。ふわふわのムース状になりとても喜ばれました。ほんのり甘いので、間食としても喜ばれるメニューでした。

 

アレンジのアイデア
ミキサーにかけると少し水分が出るため、嚥下障害のある患者さまにはソフティア※で固めて提供します。
 
※ソフティア2(ニュートリー株式会社)
食品のゲル化剤 ソフティア2のゲルは、60℃でも溶解せずセットできます。暑い季節でも室温で溶けず、寒い季節には温めても使用できます。味噌汁などの温かいゼリーを作ることも可能です。
 

 

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