かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2011.5.18 update.
川口美喜子
島根大学医学部附属病院臨床栄養部副部長・管理栄養士。2005年より島根大学医学部附属病院NST(栄養サポートチーム)の構築と稼働に携わる。
病院栄養士になってから、食事に悩む患者さんのために患者さんに寄り添える栄養士が必要だと感じていました。そんなとき、院内で事務職に就いていた青山栄養士に出会い、共に歩んでくれるように説得しました。青山栄養士は辛い思いをしながらも、楽天的で無頓着な私と活動を共にしてくれました。最近は、私よりも強く逞しく大きな心で食の奥深さを語ってくれます。親子ほど年の離れた私たちで、患者と家族の体と心を和ます命を繋ぐ病院食を考えていこうと思います。
青山広美
日清医療食品(株)島根大学医学部附属病院事業所・栄養士。
初めてがん治療に苦しむ患者さんに会った時、「今は食欲がないから何もいらない」「治療が辛くて食べる気分にならない」「食べられないから来なくていいわ」と言われることばかりでした。「食欲はないけど、私は生きるために食べたい」という言葉に驚きとショックだったことを覚えています。毎日が特別な食事ではないけれど、患者さんのその日、その時食べたい希望に合わせた調理は、人を思うやさしい料理になると思います。
☆こんな患者さんに
食欲不振 口腔乾燥
一人当たりエネルギー123kcal、たんぱく質2.2g
<材料>
カップケーキ 30g
りんごジュース 90cc
ゼラチン 1.5g
<作り方>
(1)市販のカップケーキを用意する
(2)りんごジュースにゼラチンを溶かし入れ火にかけて80℃位で溶かす。
(3)(2)の荒熱がとれたらカップケーキにしみ込ませ、冷蔵庫で冷やし固める
☆アレンジ
カステラにも応用可能です。作り方は、カップケーキと同じ。
一人当たりエネルギー140kcal、たんぱく質3.2g
<材料>
カステラ 120g
りんごジュース 90cc
ゼラチン 1.5g
☆ポイント
市販のカップケーキやカステラに、ゼリーを染み込ませて冷やし固めるとしっとり仕上がります。
☆Story
食事の量が少ないため、間食を出していた患者さん。「スポンジケーキは、パサパサして食べにくい」とおっしゃっていました。
通常の食事が食べられない患者さんにとっては、間食も大切な食事です。この患者さんは「3食だけでなく、間食も食べられなくなった」ことに不安を感じておられました。「食べられる」ことは、病状に対する不安軽減にもつながります。
「パサパサして食べにくい」理由には、口腔内の乾燥があることも考えられましたので、ぱさぱしないスポンジケーキを工夫したところ、いつもより食べやすかったと喜んでいただきました。ただ、いつものカステラの食感を期待しておられた患者さんには、期待はずれのメニューとなってしまうので注意が必要です。
☆もう一工夫
嚥下障害が重い患者さんにはカステラやケーキをミキサーにかけてからゼリー状に固めると良いです。クラッカーやビスケットを粗く崩して、牛乳ゼリーに浸して冷やし固めるレシピについても研究中ですが、まだ改良が必要です。