2011年1月アーカイブ

今村顕史 イメージ今村顕史 Profile

都立駒込病院感染症科医長・感染対策室長
著書に『JJNスペシャル82 感染症に強くなる 17日間菌トレブック』がある。


イラストレーション:櫻井輪子 http://www.wakonosu.net/



 

新型インフルエンザが再流行している中、鳥インフルエンザの国内発生もニュースになってます。
「○○県の養鶏場も高病原性、防疫措置で○万羽を殺処分」
・・・これまで養鶏場で一生懸命育ててきた方々のことを思うと心が痛みます。

 

決められていることとはいえ、どうしてここまでの厳しい対応が必要なのでしょうか。
多くの人の努力を無駄にしないよう、みなさんもこの機会に鳥インフルエンザについて学びましょう。

 

鳥インフルエンザは危険?


実は、鳥インフルエンザのすべてが問題となっているわけではありません。
人と同じように、鳥もいろいろなインフルエンザにかかります。
この鳥インフルエンザの中には、弱いウイルスも強いウイルスもあります。
そして、その中でも病原性が特に強いものを“高病原性鳥インフルエンザ”と呼んでいます。
 

このタイプの鳥インフルエンザは死亡率が極めて高く、感染した多くのニワトリは死んでしまいます。
感染力も強く、あっという間に広がっていきます。
このため早急な対応をしないと、日本全体の養鶏業に大きな打撃を与えることになってしまうのです。

 

どうやって発見されるのか
 

新聞を読み返してみましょう。
まず、次々と大量のニワトリが死んでいくのが発見されます。
そこでまず最初の検査で、インフルエンザであることが報告されます。
そして、さらに詳細な検査がおこなわれ「高病原性」であったということがわかれば診断が確定します。
その後は、感染の可能性があるニワトリがすべて殺処分されることになるのです。

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 鶏肉や卵は大丈夫?
 

高病原性インフルエンザが発生した地域では、念のために鶏肉や卵の出荷制限も行われます。
しかし、鶏肉や卵で感染することは基本的になく、感染したという報告もありません。
過剰な心配はパニックをひきおこすだけなので、みなさんも冷静に対応しましょう。

 

ヒトへの感染はしないのか


通常ヒトには感染しませんが、極めて密接な接触をしている場合に感染することがあります。
ヒトからヒトへの感染も非常にまれで、感染者の看病などで濃厚に接触した家族内での感染が疑われた例がわずかにあるだけです。

 

今のところは、鳥からヒトへの感染、ヒトからヒトへの感染は起こりにくいようです。しかし、ヒトに感染してしまった場合には、重症になりやすいこともわかっています。
高病原性鳥インフルエンザはすでに世界各国に広がっています。WHOから2011年1月20日にだされた報告によると、これまでに518例のヒトへの感染があり、そのうち306例(59.1%)が死亡しているのです。

 imamura_kkin.jpg

新たな新型インフルエンザが発生する危険性
 

メキシコで発生し世界に広がった新型インフルエンザは、本来ブタのインフルエンザであったものでした。そして、そのブタインフルエンザが、人にも感染できるようなタイプに変化(変異といいいます)したものだといわれています。
これと同じように、鳥インフルエンザもブタへの感染を介して、人へも感染しやすくなる可能性があります。また、濃厚接触した人への感染を繰り返していく中で、より感染しやすいようなタイプに変化する危険性もあります。

 

前回の新型インフルエンザも、ある日突然やってきました。
今、世界の養鶏場で大問題となっている鳥インフルエンザも、いつ人に感染する新型インフルエンザになるかわからないのです。
実際に、新たな新型インフルエンザとなった場合、その感染率は不明です。死亡率も、どの程度になるかわかりません。
ひょっとすると、ヒトからヒトへ感染しやすくなった時点で、死亡率は低下するのかもしれません。
それでも人類が過去に経験していない未知の感染症であることから、かなり高い死亡率となってしまう可能性もあるのです。

 

前回の新型インフルエンザで学んだこと
 

今回の新型インフルエンザでは、初期の社会的なパニックはありましたが、その後は冷静な行動をとっていたのではないでしょうか。

全国の一般診療所の協力もあり、医療の混乱も最小限に抑えられたのだと思います。
一方この経験の中で、インフルエンザが全国に広がっていく速さ、そして制圧することの難しさなどを、改めて実感しました。

交通の発達、国際化による国内外へのヒトの行き来など、今の日本で徹底的な隔離というのはできません。
さらに新たな病原性の高い新型インフルエンザが発生した時、わたしたちは今度はどのように対応していけるのか。
それが試される時は、すぐそこまで来ているのかもしれません。
 


JJNスペシャル82 感染症に強くなる 17日間菌トレブック イメージ

JJNスペシャル82 感染症に強くなる 17日間菌トレブック

日常で出会う感染症、医療現場で出会う感染症、感染対策を読みやすい語り口でまとめた一冊。
菌のイラストも盛り沢山で、菌トレしているうちに気がつけば感染症に強くなっています!

幻覚と昔話


六車由実(むぐるま・ゆみ) Profile

1970年、静岡県生まれ。大阪大学大学院文学研究科修了。博士(文学)。民俗学専攻。東北芸術工科大学東北文化研究センター研究員、同大学芸術学部准教授を経て、現在、静岡県東部地区の特別養護老人ホームにて介護職員として勤務。
論文に「人身御供と祭」(『日本民俗学』220号、第20回日本民俗学会研究奨励賞受賞)。『神、人を喰う――人身御供の民俗学』(新曜社、2003年)で2002年度サントリー学芸賞受賞。 

 


幻聴幻視あれこれ

 

認知症の方の周辺症状のひとつに、幻聴や幻視などの幻覚症状がみられる場合があると言われている。実際に、私が施設で接している利用者さんのなかにも、私たちには聞こえない声が聞こえたり、見えないものが見えたりする方が何人もいる。まずは、ここで少し紹介してみたい。

 

楠本サエさんは、認知症が進行して日常会話も成り立たないことが多く、「あーあーあー」と高い声を上げている。また、天井の隅を遠い目で見つめたり、何も乗っていないテーブルの上へ何かをつかむかのように手を伸ばしたりすることがよくある。

ある日、私がサエさんに「こんにちは。サエさん、今日はいいお天気ですねえ」と話しかけていると、急にサエさんが私のちょうど胸のあたりに視線をとどめて、こう叫んだのである。

 

カズヨシ、あんた何やっているの。靴下をちゃんと履きなさい。いつも言ってるじゃない。まったくあんたは。

 

その声はいつもの「あー」と叫んでいるサエさんからは想像がつかないくらい低く、しかも口調はしっかりとしている。

私は多少戸惑いながらも、「サエさん、カズヨシって誰ですか。息子さん?」と尋ねてみた。すると、サエさんは私の胸から視線をそらさずに低い声でゆっくりと「そうよ」と答えた。

どうやら、サエさんには、私の胸のあたりに子どものころの息子さんの姿が見えているらしかった。5分もしないうちに、サエさんはまた天井の隅を見上げて「あー」という声を上げたが、息子さんを叱っていたときのサエさんはまさに母親の顔をしていたのが印象的だった。

 

青島まさ子さんは、認知症でうつ症状の強い方であり、「私なんてなんにもできない。死んでしまえばいいんだ」と自分を責め嘆いていることが多い。

落ち込んでいるまさ子さんに声をかけてみると、少しずつ状況を話してくれる。そこには、いつも小さな子どもたちが登場してくる。

 

家の2階で一人で寝ているでしょ、そうすると子どもたちが来るんです。それで、「お母さんを殺せ、殺せ」って騒ぐでしょ。だから私嫌になっちゃうの。殺せって言うんだから死んだっていいだけど、そう思ってもなかなかそうすることもできないし。もう本当に嫌だし、眠れないの。

 

「殺せ、殺せ」と騒ぐ子どもたちの姿をまさ子さんは見たことがないが(というより嫌なので見ようとしないのだという)、ベッドのまわりでいつも騒ぐので、その物音や声で来たことがわかるのだそうだ。

子どもたちは、ときには針でまさ子さんの足を刺すこともある。だから、歩こうと思っても足が痛くて歩けないのだとまさ子さんは訴える。

子どもたちがなぜまさ子さんに「殺せ」と言ってくるのか、その理由はまさ子さん自身にもわからないという。まさ子さんが嫌だという子どもたちだが、ときにはまさ子さんが心底心配する大切な存在として登場することもある。

 

ショートステイのある利用日、いつものように顔を曇らせてベッドに横になっていたので、どうしましたと尋ねると、「子どもたちが来た」と言う。気分転換に、「天気がいいので少し散歩をしましょう」と庭に誘い、ベンチに二人で腰かけていると、まさ子さんからまた子どもたちの話をしはじめた。

 

昨日も夜眠れずにいると、子どもたちが今度は助けてと叫んで逃げ込んできたというのだ。前に何人かの大人たちがやってきて、「子どもを殺した」というようなことを話していた。それでまさ子さんはもう子どもたちが死んでしまったのではないかと心配していたが、誰かに助けてもらって無事だったことがようやくわかり、心から安心して、嬉しくて仕方がなくて涙が出てきてしまったんだというのだ。

 

そう私に話してくれるまさ子さんは目に涙を浮かべていた。

助けを求めてきた子どもがいつもの「殺せ」という子どもと同じかどうかは確認できなかったが、その日子どもたちは我が子のように大切な存在としてまさ子さんの前に現れたことは確かである。

 

また、子どもたちは、ときにやんちゃな面も見せる。

まさ子さんはすぐにお腹がいっぱいになってしまうが、残しておいたご飯やお菓子をまさ子さんが寝ているあいだに子どもたちが全部食べてしまうのだそうだ。それに、ここ(ショートステイ)にいるとお風呂にも入れてもらえるから嬉しいといって喜んでいるという。

ほかにも、まさ子さんは、困ったときには今でもおばあちゃんが来てくれて助けてくれるんだとよく言う。子どものころにおばあちゃんに育てられたまさ子さんにとって、おばあちゃんは何よりも親しく大切な存在である。もちろん、とうに亡くなっているが。

 

幻聴幻視といった幻覚は認知症の周辺症状として問題化されることが多く、レビー小体型認知症と診断された場合には幻覚症状を抑える薬が処方される場合もあるという。

しかし、こうしてみてみると、サエさんにせよ、まさ子さんにせよ、幻覚はときに本人を苦しませることがあるが、しかしときにはその方を支えたり、優しい気持ちにさせてくれることもあると言えるだろう。

 

幻覚の物語性

 

幻覚症状のある利用者さんに話をうかがっていると、その方の語る幻覚世界の豊かな物語性に驚かされることがたびたびある。

渡邉美智子さんは普段はあまり他の利用者や職員たちと話をすることはなく、一人でいることが多いが、話しかけるとそれには訳があることがわかった。

 

美智子さんには死者の声が聞こえるのだという。

夜になると、部屋の中からどこからともなく声が聞こえてきて、話しかけてくる。姿は全く見えず声だけが聞こえてくる。

怖くて怖くてたまらなく、窓や戸を全部閉めて鍵をかけて、そして電気はつけっぱなしで寝た。それでもどこかの隙間から入ってくるのか、声が聞こえてくるのだという。

 

声の主は一人ではなく何人もいた。彼らによると、この世では死んでいるという。

あまりにもうるさいので、大きな声で「出ていけ!」と叫んだが、彼らは「美智子さんが怒っているから静かにしよう」と言い合ったりしているだけで出て行こうとしない。

あるときには、押し入れのほうから声がする。押し入れに収納した布団の上で寝ているらしい。それで布団を全部取り出して、杖を振り回して、「出ていけ!」と追い払った。

ある晩には、二人の子どもがやってきて、「おばちゃんおなかすいたよ、パンちょうだい」と催促してきたことがある。もちろん姿は見えないが、声の感じで子どもだとわかったという。

子どもには、「そんなにお腹がすいたのなら、勝手にパンを持ってけ」と言ったが、結局持っていかなかったそうだ。

 

家にばかりいるとそういう声が聞こえてくるんだ、とその声が聞こえない息子が、この施設へ通うことを勧めてくれた。

 

でも施設に来ていても、最近はときどき声が聞こえてくることがあるという。他の利用者さんたちと楽しく歌を歌っていると、彼らが一緒に声を合わせて歌ったりすることもある。そんなことについて、ほかにやることがなくて暇なのじゃないかと美智子さんは分析する。

そういうときには鬱陶しくて「もう帰ってくれ!」と言ってしまうことがある。

息子からきつく注意されているから、大きな声は出さないようにしているけれど、それでも口が動いてしまう。

 

そういう自分の姿を見て、他の利用者さんたちや職員たちが変に思ったり怖がったりするのではないかと思うと悲しくて仕方がない。それが心配だから、施設では自分から話をすることはない、そう美智子さんは肩を落とした。

美智子さんは自身の幻覚症状に戸惑っているが、幻覚症状そのものというより、息子さんやまわりの人間がそれを理解してくれないということに苦しんでいるように見える。

 

さて、そうした話を「へー、そうなんですか、それで?」と興味津々に聞いている私を、美智子さんは最初こそ訝しげに見ていたが、話を進めるうちに、さらに詳細に幻覚の内容を教えてくれるようになっていった。

声の主の姿はまったく見えないが、彼らによると、みんな洋服も着ていなくて裸であるそうなのだ。食事もとらなくてもいいという。

でも、それじゃあ寒いだろうとか、お腹がすくだろうと美智子さんが思わず心配してしまうと、寒い、お腹がすいたと言ってくる。それで、「じゃあお金をあげるから、これで洋服でも買ってこい」とお金を渡そうとするが、彼らはそれを受け取ったことは一度もないそうだ。

 

美智子さんの耳に聞こえてくる死者の声は、こうしてリアルな姿で現れる。そしてそれはまるで昔話に登場する妖怪のようにチャーミングだ。語っている美智子さんも、「もうまったく!」とため息をつきつつも、何だか彼らに親しみを感じているように見えた。

そんな死者の声が、美智子さんに頼みごとをしてくることもあった。美智子さんによるとこういうことだ。

 

ある日、むかし地元の福祉センターで一緒にカラオケを楽しんでいた仲間(がんで亡くなったそうだ)がやってきた。よくわからないが、自分が何かの犯罪の疑いをかけられているから、自分をよく知っている美智子さんに証言してほしいと言ってきた。

その人は生前とても義理堅くて、美智子さんにもよくしてくれた。だから放っておけなくて、一緒に警察に行こうと思ったが、施設に行かなければならなかったので、「自分で警察か役場に行って調べてこい!」と言って出てきたそうだ。

すると、彼は「それじゃあ後で施設に行く」と言った。だからずっと待っていたが、とうとう現れなかった。たぶん、自分で警察に行ったんじゃないかと思う、そう美智子さんは語った。

実際、この日、美智子さんは施設の送迎車が自宅に到着する前に、警察方面に一人で歩いて行ってしまっていたし、施設に来てからも、廊下に出てみたりと落ち着かない様子が見られたのである。

 

徘徊の原因がこうした幻覚にあったり、またそうして一人で歩き回って転倒したり事故にあったりするリスクを考えたら、幻覚症状を認知症の問題行動として抑制しようとすることもわからなくはない。しかし、私が注目したいのは、声の主の死者たちが生き生きとこの世を闊歩している様子を、美智子さんが推理小説家かもしくは昔話の語り部のように雄弁に言葉豊かに語ってくれることである。

さらに言えば、ときに翻弄されながらも彼らとともに物語世界を生きることが美智子さんの日常になっている、ということである。そんな美智子さんが生き生きと生きている世界を単に認知症の問題行動とだけ認識してしまっていいのだろうか、という思いを私は強く持つのだ。

 

昔話の語りと幻覚の境目は?

 

こうした利用者さんの幻覚について聞いていると、私はいつも心躍るような、でもちょっと恐ろしいようなそんな不思議な感覚を覚える。それは、大学に勤務していたころに、学生たちとともにある東北のムラでドキュメンタリー映画の撮影をしていた際に、老夫婦に狐の話を聞いたときの感覚に似ている。

 

私たちは、大正二桁生まれの老夫婦のお宅におじゃまし、カメラをまわしながら、村にある荒神さまのお祭りについて取材していた。話は、隣村の祭りの話へと移っていった。

すると、おばあさんがそういえばと言って、唐突にこんな話をしはじめたのである。

 

昔は、この辺にも、騙す狐がいたもんだ。おれの舅さまが隣村の祭に行ったんだ。菰にいっぱいのお土産を包んでもらってきたんだ。餅とかよ。で、それを腰に提げて夜道を帰ってくるだろ。酒いっぺえ飲んでて、いい気分で境内さ寝てしまったんだと。そうするとよ、朝起きるだろ、腰に提げてた土産さそっくりなくなってたんだと。これは、狐に騙された、すっかり狐に持ってかれてしまったって、舅さま、騒いでたっけ。

 

学生たちが狐に反応して、「えっ、狐が騙すんですか」と問うと、さらにおばあさんはこんなことを教えてくれた。

 

狐は形は見えないんだ。夜一人で歩いてるだろ、そうすると後ろでカランコロンカランコロンと音がするんだ。そういうときは狐がついてきてるから、後ろ見たら駄目なんだ。後ろ見ないで、「なに狐、ついてくるな」って脅して追っ払うんだ。

 

おじいさんもうなずいている。

そうして、最後に夫婦そろってこう言って口をつぐんだ。

 

昔はそういう狐がいたもんだ。今はいなくなったな。

 

薄暗い灯りの下で聞いた狐の話は、私たちを不思議な幻想世界へ誘ってくれたように覚えている。

私はそのとき、この老夫婦が最後に口にした「今はそういう狐がいなくなったな」という言葉の意味を考えた。「昔は狐が人を騙すなんてことを言ったが、今は誰も言わなくなったな」ということを比喩的に言っていたのか、それとも言葉どおり、「昔は人を騙す狐がいたが、今はいなくなったな」と「騙す狐」の存在そのものの有無について言っていたのか、ということである。

 

両者の決定的な違いは、「狐が人を騙す」という物語世界に対する語り手の距離のとり方である。すなわち、前者は、物語世界をフィクションとして見ているのであり、後者は、物語世界を生きているのである。

私は、この老夫婦は「狐が人を騙す」という物語の世界を生きてきた人たちだと思う。というより、薄暗い部屋での語りの場の雰囲気は、騙す狐をリアルな存在として私たちの間で共有させるものがあったのだ。

 

民俗学の世界では、昔話の伝承には、語られる内容とともに、語られる場そのものに重みがある、とされている。

基本的に、昔話は、薄暗い部屋のなかで囲炉裏を囲んでいる子どもたちに、その家のおじいさん、おばあさんが語り部となって伝承されてきたものである。人影や物の影が後ろの壁にゆらゆらと映り、囲炉裏の火のぱちぱちという音だけが響く静寂さ、そのなかで、みんなでおじいさん、おばあさんたちの声にひたすら耳を傾ける。

そんな雰囲気のなかで昔話が語られてこそ、狐も河童も鬼たちも、この世の闇を跳梁跋扈できたのである。子どもたちは、登場する妖怪たちの姿や息遣いをリアルに感じ、その物語世界を語り部とともに共有していったのだろう。

 

そして、もうひとつ重要なのは、そこにおいて物語世界を共有するのが、老人と子どもであるということだ。

民俗学では、老人も子どもも神に近い存在として説明される。つまり、生まれて間もない子どもと死を間近に迎えた老人は、世俗にまみれたこの世の両端に生きる存在であり、したがって両者ともあの世に近い、神に近い存在として民俗世界では認識されてきた、というのである。

神に近い存在である老人と子どもであるからこそ、世俗的な説明など必要とせずに、語られる物語世界をそのまま素直に受け入れることができるのである。

 

そう考えたときに、「人を騙す狐」の物語世界を生きる老夫婦と、「殺せ」とやってくる子どもたちの存在を感じるまさ子さんや、死者の声が聞こえる美智子さんとのあいだには、決定的な違いなどあるのだろうかと思えてくる。

一方を昔話の語り部であり民俗学の調査対象になり、一方を認知症の高齢者であり治療の対象になると分ける根拠も曖昧になってはこないだろうか。

 

認知症という病気やその治療を否定しようとしているわけではない。ただ、今、こうして介護の世界で認知症の利用者さんと関わりながら見えてきたことがひとつあるのだ。

それは、年を取るということは、個人差はあるにせよ、いずれみなそれまでは見えなかったものが見えたり、聞こえなかったものが聞こえるようになることであり、そうして跋扈する狐や死者たちを拒絶せず、否定せず、彼らとともに腰を据えて生きていくということなのではないか、ということなのである。

 

認知症の幻覚と昔話との関係について、まだまだ考えるべきことは多いように思う。いずれまたこのテーマについて論じてみたい。

 

(web第3回了)

[次回は2月中旬UP予定です。乞うご期待。] 

認知症とロシア人


信田さよ子 (原宿カウンセリングセンター所長) Profile

1946年岐阜県生まれ。お茶の水女子大学大学院修士課程修了後、駒木野病院勤務などを経て、現在に至る。臨床心理士。アルコールをはじめとする依存症のカウンセリングにかかわってきた経験から、家族関係について提言を行う。著書に『アディクション・アプローチ』『DVと虐待』(ともに医学書院)、『母が重くてたまらない』(春秋社)など多数。最新著に『ふりまわされない』(ダイヤモンド社)、『ザ・ママの研究』(よりみちパン!セ、理論社)がある。


[←第5話]

[前回まで]

木川嘉子は狭心症の検査のため、東京タワーの見える病院に入院した。パジャマの襟を立てた陶芸家、最後の晩餐のキリストよろしく無言で家族を睥睨する女性――病院はワンダーランドだ。二つのベッドが空いた嘉子の病室へ、また新たな病人が入院してきたようだ。またもやカウンセラーの嘉子の好奇心は全開に。

 

土日をはさんでいるので、検査まであと二日もある。

定期的な血圧や体温測定はあるものの、ゆったりとベッドの上で過ごしてさえいれば時は勝手に流れていき、おいしい病院食が運ばれてくる。窓越しに少し曇った薄青い空を見上げながら嘉子は考えた。今の自分は誰からも怠けていると非難されることはないのだ、と。

こうして入院しなければ、そう考えることすらできなかったのだろうか?

あらためて嘉子は、日々のカウンセリング業務が常軌を逸するほどに多忙を極めていたことに気づかされた。

 

カウンセリングの合間を縫って、わずか五分で事務処理の書類に印鑑を押す。一時間にも満たない昼休みは、手製の弁当を食べながら、全国から送られてきた季節の贈答品に対するお礼のハガキを万年筆で書く。事務長からの矢継ぎ早の報告に対しては、別の作業をこなしながら「了解」の合図に人差し指を挙げる。

思わず、還暦過ぎた聖徳太子か! とツッコミたくもなる。

一日のカウンセリングが終わるころには、疲労のために大脳がパンパンにふくらんでいるような感覚にいつも襲われるのだった。狭心症になるのも無理ないか……嘉子は妙に納得した。

 

目を閉じると、それらの日々が遠い世界のように思え、ベッドの上では時間の流れる速度が違うように感じられた。

 

ゆったりモードはむずかしい

 

机の上の時計は午前十時五〇分を指している。

「十一時ごろには新しいパジャマを持って到着するよん、楽しみにね♥」

朝食を食べ終わったころに、真衣から絵文字の入ったメールが届いていた。

真衣はもうバスに乗ってるだろうか。どんなパジャマを買ってきてくれるのだろう。ラウンジで会ったコムデギャルソン風の女性のパジャマとどっちがかっこいいだろう。嘉子は頭の中で、陶芸家らしい女性と、もうパジャマ姿を競っていた。

あと十分もないと思うとじっとしていられなくなったので、嘉子は思わず勢いよくベッドから起き上がろうとし、はっとした。昨晩のできごとを思い出したからだ。

 

初めての夜だったので、就寝前に嘉子は、病室の入口にあるピカピカの洗面台で勢いよく歯を磨き三回うがいをした。それからクレンジングフォームで念入りに洗顔した。タオルで顔を拭いてさっぱりしたとたん、ナースステーションから看護師さんが飛んできた。

「木川さん、どうしましたか?」

「はい? 顔を洗ってただけですけど」

洗顔後こんなにさっぱりしているのに、いったい何が問題なんだろう。嘉子はきょとんとして看護師さんの緊張した顔を見た。

心電図のモニターが大きく乱れたので驚いて飛んできたのだと伝えられ、嘉子はそのとき初めて、心電図が二四時間チェックされていることを自覚した。深くうつむいて胸部を圧迫したり、走ったりすると狭心症の発作が起きる可能性があるらしい。

「木川さん、できるだけ静かに歩いてくださいね」

ほっとした様子の看護師さんは、少しほほえみながら、しかしはっきりとした口調で告げた。

「わかりました、ご心配おかけしました」

殊勝な態度で頭を下げながら、いつもの癖でついつい廊下を走ってしまっていたことを反省し、明日からはすべての動作をゆったりモードに変換しようと昨晩深く決意したばかりだった。

 

憧れのナースシューズ

 

嘉子は努力してゆっくりとベッドから起き上がろうとしたが、かえって不自然な姿勢になったのか左腕をひねってしまった。

「いてて……」

思わずつぶやいたとき、廊下からナースシューズのパタパタという音がした。

病棟にはいろいろな音が満ちている。嘉子はなかでも看護師さんが歩く足音=パタパタが好きだった。

 

彼女たちはいつも早足だ。痩せていようと太っていようと、必ず小走りでパタパタという軽やかな音を立てて移動する。走るのを禁じられたせいか、よけいにその音は憧れに近い感覚を呼び覚ました。おそらく多くの患者さんもベッドの中で耳を澄まして、嘉子のようにそれを聞いているだろう。

それにパタパタは、自分や自分の身体が放置され忘れ去られているわけでなく、看護師さんの関心の対象として存在していることを教えてくれる音でもあった。

嘉子は、パタパタが近づいてくるだけで、なんともいえない安らかな感覚に包まれた。

 

ところが、その足音は嘉子のベッドではなく、左隣の空きスペースに入っていった。どうも、ベッドまわりの椅子や床頭台などを整備しているらしい音がする。新しく入院してくるひとがいるのかもしれない。ほどなくして、ナースステーションのほうからゴロゴロとベッドを押す音が近づいてきた。

「さあ、ノジマさん、着きましたよ」

看護師さんの明るい声とともに、新しいベッドが到着した。突然いなくなった母娘に代わって、新たに入院してきたのはノジマさんというひとらしい。

いったいどんなひとだろう。今すぐにでもカーテンの隙間から覗いてみたい欲望がむくむくと湧いてきたが、じっとがまんした。

 

しっしでマルジュウ行きました

 

ベッドを押してきた二人の看護師さんがノジマさんに呼びかけた。

「ノジマさん、こんにちは」「こんにちは」

カーテン越しだが、二人の声は若々しく明るい。

「担当しますマキです」「シマダと申します」

「よろしくお願いします」「よろしくお願いします」

二人の担当チームのいっぽうであるシマダさんは少し後輩なのだろう、一拍遅れてあいさつしている。

少し間をおいて初めて隣人の声がした。

「よろしく」

しゃがれた弱々しい声で、ノジマさんはゆっくり応答した。おそらくかなりの高齢だろうと嘉子は推測した。

「ノジマさん、ここがどこかわかりますか?」

「はあ?」

「ノジマさん、今どこにいらっしゃるかわかりますか?」

二人の看護師が、ゆっくりと語りかけている。耳元に口を近づけながら語りかけている二人の姿が目に見えるようだ。

それには答えず、ノジマさんは振り絞るような声で言った。

「アキコはどうしたの? アキコ、アキコ、アキコー!」

最初は小さな消え入りそうな声だったが、アキコと呼ぶ声はだんだん大きく甲高くなり、最後は悲鳴に近くなった。

 

嘉子は、真衣に会える楽しみより、隣のノジマさんの異様な声にくぎ付けになってしまった。

「アキコさんってお嬢さんですよね、お嬢さんは午後になってからいらっしゃいますよ」

看護師のマキさんは、ノジマさんの声に同調するわけでもなく、最初から変わらないトーンで話しつづけている。そのせいか、少しノジマさんは落ち着いた様子だ。

「ノジマさん、ここは病院です。これは病院のベッドです。わかりますか?」

「ええっ、病院?……あたし、あたしね、買い物に行ったの。はい、しっしでマルジュウまでね。だってトイレットペーパー切らしちゃったんだもの、急がなくっちゃなんないし……」

マキさんもシマダさんも、うなずいて相槌を打っているに違いない。ノジマさんは段々と饒舌になっている。かすれていた声もだんだん通るようになり、一生懸命説明している。

ベッドの上に腰をかけ神経を集中させて聞いたそれまでの内容から、嘉子はノジマさんの入院までを想像してみた。

 

《高齢者のノジマさんは買い物にでかけた途中で転んでしまった。マルジュウという近所のスーパーにトイレットペーパーを買いに行ったのだ。救急車で搬送されたのだが、出血を伴うような外傷や骨折はなかったので、外科ではなく内科病棟に入院になった。しかしここが病院であることがよくわかっていないようだ。ひょっとすると軽度の認知症かもしれない。入院してどれほどたっているかわからないが、歩けなくなってますます混乱がひどくなったようだ。

ノジマさんの言い回しは、「し」と「ひ」が区別できない下町風である。たぶん隅田川に近い土地に住んでいるのではないだろうか。呼び捨てにしているから午後にやってくるのは実の娘だろう。同居中かもしれない。あの甲高い呼び声を聞くと、入院する前から娘を頼っていたに違いない。アキコさんはノジマさんが入院してくれてほっとしているのかもしれない》

 

それにしても、隣のベッドにこのような老人が入院してくることは、嘉子にとってはまったく想定外の事態だった。

 

きしむベッドの同病者

 

ノジマさんの話が一段落し、嘉子も一息ついたところに、ひとりの女性が友人に付き添われて入院してきた。カーテンでさえぎられて見えなかったが、通路をはさんで向かい側の空きベッドに入ったようだ。

ベッドに横たわるときに、ギシギシっとマットレスのきしむ音が聞こえた。通常よほどのことがなければ病院のベッドはきしまない。たぶん相当太った女性なのだろう。二人は大きな声で外国語を話している。特有の語尾のせいですぐにそれがロシア語だとわかった。

お隣のノジマさんも、さすがに驚いたのか、黙っている。

再び想定外の入院患者の登場である。嘉子のセンサーはさらに研ぎ澄まされ、ノジマさんから向かいのベッドの女性へと焦点が移動した。

 

昨晩は四人部屋に二人っきりだったのに、なんと、わずか一時間足らずで一気に満室になってしまった。それも老人とロシア人である。

最後の晩餐のキリスト、トイレットペーパーを買うために転倒した老人、太ったロシア人――。

なんてバラエティ豊かな病室なのだろう。カウンセリングとはまったく異なる世界だが、入院をしなければおそらく接することもなかった三人の女性との、想像力を介したカーテン越しの遭遇に嘉子はすっかり心を奪われていた。

 

都心にあるこの病院は外国人の受診者が多いので、看護師も英語が堪能だということは人づてに聞いていた。しかしロシア人に対してはどうなのだろう。

担当の看護師がノジマさんのときと同様、向かいのベッドに挨拶に訪れた。流暢な英語で話しかけたのだが、同伴してきた友人がさえぎった。

「このひと、英語できません。わたしも英語、できません。日本語を、私が通訳します。でも、わたし、昼休み、お店、抜けてきた。もうすぐ帰ります。このひと、眠いです。いつも夜働いて、昼間寝てるから」

「そうですか、それではナースステーションで少し話しましょう。それをまとめて患者さんに後で伝えてくださいますか」

「オッケー。できれば、通訳をつけてもらいたいです。病院でロシア語できるひと、いますか」

「残念ですが、この病院では医師も看護師もロシア語ができるものがいません」

「ロシア大使館に頼んでもらえませんか」

「わかりました。主治医に相談して、大使館と連絡をとってみます。とりあえず、心臓カテーテル検査は月曜の午前中ですので、そのことだけご本人にお伝えください」

 

 

簡潔にして要を得た説明は、聞いていて気持ちがいい。嘉子はその応対に感心した。

何よりの収穫は、向かいのロシア人は、私の検査の直後に同じ検査を受けるとわかったことだ。とすると彼女も狭心症なのだろうか。同じ病名の仲間だと思うと、妙に親近感が湧いた。

友人と担当看護師が病室を出るか出ないかのうちに、向かいのベッドからはもう軽いいびきが聞こえはじめた。

狭心症仲間であろうロシア人女性の物語を嘉子は想像した。

 

《ロシア大使館の近くには、ロシア料理のレストランが多い。しかし昼夜逆転した職場ではない。だとすれば、ロシア人女性がホステスとしておおぜい働いているパブやキャバレーかバーで働いていたのではないだろうか。入院したときのあのベッドのきしみ具合からすると、彼女はかなり太っているはずなので、ホステスとして働ける体型だとは思えない。とすれば、ロシアンパブの調理場かレジで働いている可能性が高い。調理や掃除、働くロシア人女性のマネージメントなどを担当しているのだろう。それにしても、なぜ日本にやってきたのだろう。同伴した友人は片言だが日本語を話し理解できる。それだけ長く日本にいるからなのだろう。彼女は友人の誘いで来日したのだろうが、おそらく日本に来て間がないせいで日本語が理解できないのだ》

 

嘉子は想像をふくらませながら、カーテンの向こうでいびきをかきながら眠っている白い巨体と、彼女が経験したであろう同じ胸の痛みに思いを馳せた。

 

(第6回了)

[第7話]

またやってきた、新型インフルエンザ

「新型インフルエンザってどうなったの?」
「もう終わったんじゃないの?」
そう思っていた人も多かったのではないでしょうか。
しかし、今年もまた新型インフルエンザが流行してきました。
各地で注意報がだされ、とうとうテレビや新聞のニュースでも大きくとりあげられるようになっています。

 

昨年末までは、これまでにも流行した季節性のインフルエンザ“香港A型”が中心でした。年明けから新型インフルエンザが急増し、今ではほとんどが新型になっています。
冬休みが終わり、学校、会社、そして通勤通学の交通機関など、狭い場所で多くの人が接する機会が増えたことで急速に広がっているのです。

 

まだまだ続きます 
 

突然あらわれて世界を大混乱させた新型インフルエンザ。日本でもあっという間に広がってしまいました。

前回の流行では、症状がほとんどなかった人なども含めると、すでに約2000万人が感染したとも言われています。2000万人というのは驚くほどの数値です。しかし、まだ8000万人は感染していないということにもなるのです。
 

今までインフルエンザになったことがないから自分は大丈夫?
いえいえ、あなたは「かかりやすい人」なのです。

感染は、これからも続くでしょう。そこで、改めて対応についてまとめておこうと思います。

 

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ワクチンについて 
 

もともと、季節性インフルエンザのワクチンは、A型が2種類(ソ連型、香港型)とB型の計3種類が混合されたものでした。

今期のワクチンは、ソ連型を新型インフルエンザ[ブタインフルエンザA(H1N1)]に変更したものとなっています。
 

ワクチンを打っても、戦う準備(抗体がつくられる)までに2週間は必要です。それを考えると、ワクチンを接種するなら12月までには打っておきたいところ。今からで間に合うかは個々の判断で決めましょう。
また、ワクチンを打っているという人も、インフルエンザに感染する可能性はあるということを再確認。それでも通常の予防はしっかりとやっておきましょう。

 

 

マスクと手洗いについて 
 

ウイルスは非常に小さいため、マスクでの完全な防御は難しいと考えられています。しかし、咳やくしゃみなどは、水分を含んだ飛沫(ひまつ)として飛びますから、マスクをつけていることで在る程度の効果は期待できます。そして、感染している本人がマスクをつければ、さらに効果は高くなります。


感染者が鼻や口を手で触れ、汚染された手で触れた場所にもウイルスがついてしまいます。ウイルスは乾燥にも比較的強いため、汚染されている部分を、別な人が触れ、その手でまた自分の口や鼻をさわり感染してしまうということも考えられます。水の冷たい季節ですが、手洗いも忘れずにやっておきましょう。

 

症状と検査について

感染した場合、発症までの潜伏期間は2日から3日。急激な発熱、咽頭痛、咳、筋肉痛や関節痛などで発症します。

重篤な合併症として、肺炎や脳炎には特に注意が必要です。

一般的には、細い綿棒を鼻の奥に入れてぬぐってとった検体で迅速検査をします。発症してすぐには陽性とならないため、発熱してから最低6時間から12時間以上経過しての検査がおすすめです。

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治療について 
 

もしもインフルエンザに有効な薬とされているタミフルやリレンザを使うのであれば、48時間以内に内服をはじめます(それ以上経過すると効果が期待しにくくなってしまいます)。


治療の期間は5日間。薬を飲み始めたのに、すぐに熱が下がらないと心配する人もいますが、基本的に飲んだらすぐに解熱するという速攻性のある薬ではありません。

 

しっかりと準備しておこう 
 

この原稿を書いているとき、また国内で鳥インフルエンザが発生したというニュースも届きました。世界の感染症科医師が本当に心配している新型インフルエンザは、このような病原性の高い鳥インフルエンザが、人にも簡単に感染するようになったものです。もしも、このようなインフルエンザが流行すれば、今回のインフルエンザよりも遙かに死亡率が高くなることが予想されています。


どんなインフルエンザがやってきても、日常生活で気をつけることは変わりません。今後やってくるかもしれない、さらに恐ろしいインフルエンザにそなえて、今からインフルエンザ対策に強くなっておきましょう。
 

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PC版の方でやったアンケートだよ。

新人さん向けの本をつくるときどんな本がいいのかなーっていうリサーチだったんだ。

みんな協力ありがとーheart04

ほかにもこんなことに困ってるということがあったらtwitterなどからでも「こんな本はでないの?」って話かけてね!

さすがに勃起されないためのHOW TO本は作れないけど…ね!

hokenshi_01_01.jpgちょっと前のお話ですが、全国地域保健師学術研究会の様子を簡単に。

場所は…富山!

6時50分の飛行機に乗るために5時前に家を出た編集者。飛行機に乗ったらいつの間にか富山でした。

 

■地域保健師らしい研究会

hokenshi_01_03.jpgおもに地域の保健師さんたちが実践研究の発表などを通して広く意見交換を行う研究会です。1日目のワークショップは家庭訪問がテーマで、会議室がほぼ満席に。話題提供の後にグループワークを行うという保健師さんらしいワークショップでした。中には保健師をめざす学生さんもいらっしゃいました。

 

 

■いろんな場所で、いろんな発表が

hokenshi_01_04.jpg2日目のメインは、研究発表。2つの会場で9つの分科会に分かれ、研究発表が行われていました。私たちはホールで発表を聞いて、ホワイエで発表を聞いて、会議室に移動…。学術大会とは違って研究者が少なく、現場の保健師さんの多いこの研究会。一味違った面白さがありました。

 

■立見続出!

パネルディスカッションは会議室が満席で入れないほどでした。会議室の様子を中継してモニターで見ることのできる部屋もいっぱい。保健師さんの真剣さが伝わってくるようでした。

 

■次回は…?

大いに盛り上がっていた研究会ですが、実は今回で終了とのこと。今年からは何か代わりとなる研究会や学会ができるのでしょうか…?

山形さくら町病院(山形駅から徒歩3分)の歴史は古い。

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2年前に改築した際にも地域住民から建設反対の声が一切なかったそうです。

 

 

こちらは外来受付ホール。

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ミニコンサートなどもできるように設計されているそうです。

 

入院患者さん向けの、禁煙教育に参加。

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自由参加でしたが、10名ほど男性が参加していて、盛り上がっていました。

7月から全面禁煙になるそうです(精神科ではすごい挑戦!その後が気になるところです)。

 

内装などは改築時に看護師の意見がふんだんに取り入れられ、病室の取っ手ひとつにも工夫がされていました。

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保護室に布団を敷く場合もあるので、床で色の変わっているところはスタッフも土足厳禁。

患者さんへの心遣いも実現されています。

一般個室も差額を取らず、この美しさ。

 

スーパー救急では個室のやりくりがとても大変だそうですが、廊下に扉をつけることで8つある保護室を一般個室としても使えるように工夫。

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これもナースの知恵です。

訪問した次の週には日精看看護部会の研修があり、100人以上が見学に来る予定とのこと。

 

看護部長の庄司祐さん。

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とても丁寧に病院をご案内くださいました。

ありがとうございます。

 

ごみを自ら拾う院長。

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すばらしい人格者!(自然に拾われていました~) 

 

後日、他の病院でも山形さくら町病院の評判を聞く。

取材することができてよかった。  

前回は「血虚」についてざっとお話ししました。あちらこちらに話も飛んだので、少し話を戻して深めてみようと思います。

 

瘀血 をどうするか

 

瘀血では先ほど挙げた下腹部の圧痛点以外に、どんな症状が出るのかをお話ししましょう。瘀血でも顔色が悪い、という症状がありますが、血虚の青白い、「顔色を失う」といった感じとは違い、浅黒く土気(つちけ)色になります。それから、目の下にクマが出来やすくなったり、唇や舌、歯ぐきの色が暗い紫色になるなどの症状も瘀血の現われと考えます。私は診察の時、舌の裏を診せていただくのですが、瘀血体質の人は静脈が隆々と浮き出ている人が多いようです。

 

先述した子宮筋腫などもそうですが、生理の前になると頭痛がする、イライラする、気分がふさぎこむといった症状(月経前症候群)や、閉経前後でひどくのぼせたり、体のあちこちが痛むなどの更年期症状は、むかし「血の道症」といわれ瘀血によるものと考えられてきました。また、アトピー性皮膚炎や喘息、肥満などの慢性疾患で、一通りの治療をしてうまくいかない場合、「裏に瘀血が潜んでいるのではないか?」と考えて駆瘀血薬を使うと一気にうまくいく場合があります。ある漢方医は、「私は慢性疾患の成人女性の患者を診る時、一律に駆瘀血薬を1週間飲ませてから漢方診断をする。そうすると治しやすくなる。」と断言する人までいます。

 

瘀血を改善する薬としては、前回述べた川芎のほか、桃仁(桃の種)、牡丹皮、紅花などがあります。紅花はよく染めもので使われ、紅花染めの肌着や帯を身につけると血行が良くなり、体を暖めるといわれます。これらの薬で良くならないような、非常に頑固な瘀血症状に対しては、虻虫(アブ)・?虫(ゴキブリの一種)・水蛭(ヒル)といった動物性の生薬を使うこともあります。そんな気持ちの悪いものを使うとは…やっぱり漢方は怪しい!とお感じになるかもしれませんが、ヒルから分離されたヒルジンという物質は、欧米ではすでに血栓症の治療などに使われている薬品です。昔の人は、ヒルに血を吸われたときに、ヒルの体中で血がなかなか固まらないのを見て、薬として利用することを思いついたのでしょうね。

 

駆瘀血薬は、妊娠中に使うことは避けるべき、ということになっています。妊娠中での血行促進は分娩促進に働く可能性があるからです。(ただし、当帰芍薬散は例外で、安胎の薬といわれ、流産防止目的で使われます。)私の漢方の師匠である花輪先生は、予定日を過ぎても奥様に出産の兆候が現れなかったため、桂枝茯苓丸という駆瘀血薬の入った処方を用いて無事に出産された経緯を著書に書いておられます。(花輪壽彦著「漢方のレッスン」金原出版)

 

昔の産婆さんの考え方では、出産自体を「悪い血が出る」といって瘀血の改善に結びつく出来事と捉えるようです。西洋医学では、妊娠によって生理が止まることが子宮筋腫や内膜症の進展を防ぐという考え方なので、微妙な隔たりがありますが、現代女性の少子化・晩婚化により瘀血や子宮筋腫が増えると言っている点では共通していて、興味深いところです。

 

便秘とか痔とか…

 

もうひとつ、現代女性に多い悩みである便秘、これも瘀血にとってはよくありません。便秘を慢性的に抱えていると、痔になりやすくなりますが、なかでもいぼ痔(痔核)は肛門での静脈瘤ですから、瘀血そのものです。さらに、不潔になりやすいところですから、細菌感染を起こすと非常に腫れて痛みます。漢方ではこういった場合、駆瘀血薬に大黄という下剤を合わせて処方します。お菓子作りが得意な人は、ルバーブという食材をご存知かもしれませんが、ルバーブは大黄の茎の部分にあたります。

 

大黄は「将軍」というあだ名がある生薬で、腸内に悪玉菌がいると殺菌、及び瀉下作用(下痢を起こさせる)を示し、悪玉菌がいなくなると逆に収斂作用(下痢を止める)を示すという大変「頭のいい」薬です。江戸時代の医師は、感染性胃腸炎で下痢をしているとき、初期のうちならよく大黄を使いました。西洋医学なら下痢に下剤を出す治療など考えられませんが、昔の漢方医はお腹の中に将軍を送り込んで悪者を退治するイメージで大黄を使いこなしていたようです。大黄にはさらに、精神を安定させる作用があると考えられています。今でも「頭に血が上る」というような言い方をしますが、瘀血が絡んでいる精神疾患には好んで大黄が使われました。

 

日本の漢方医には大黄のファンが多く、自分の健康管理にも愛用する人が多いようです。かく言う私も大黄甘草湯という薬を頻繁に飲むのですが、お通じが良くなっただけでなく、風邪をひきにくくなったような気がします。お腹の中に善玉菌が増えていて、免疫に良い影響があるのかもしれません。大黄は多彩な作用があるのですが、これらは水の中でグツグツ煮出した場合の作用で、紅茶のティーバッグのように、熱湯にさっとくぐらせて服用すると、こんどは血止めの作用を発揮します。三黄瀉心湯といって、大黄・黄芩・黄連という、三つの「黄」の字が入る生薬で構成される処方があり、鼻血が止まらないといった場合に使われます。かつて、戦争に行く兵士に「ふりだし」といって、三黄瀉心湯を配り、負傷した時は応急手当てで、熱湯でさっと薬を作って飲んだのだそうです。

 

ここまで「血」についてお話をしました。次回は「水」のお話から始めたいと思います。  

■レシピNo.004 魚のおろし包み  

 

 

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対応

食欲不振、嘔気・嘔吐のある方、魚のにおいが気になる方

 

レシピの背景

食後に嘔気を誘発することが多い患者さんでした。患者さんの希望に沿って食事をつくりましたが、やはりは吐き気があるようでした。食事をされる様子を見せていただくと、噛む回数が少ないことがわかりました。

 

調理のポイント

魚のほぐし具合で仕上がりの口当たりが変わりますので、患者さんの嚥下状態や好みによって変えるのがポイントです。よくほぐすと飲み込みやすく、荒めにほぐすと魚の食感が残り喜ばれます。大根おろしゼリーの皮で包むことで魚の匂いが薄れるため、「食器のフタを開けたときの魚の匂いが嫌で食べられない」という方にも向いた魚料理です。

 

管理栄養士としての患者さんとの関わり

食事にかかる時間が早く、口に入れた食べ物をすぐに飲み込んでしまうことが吐気・嘔吐の原因ではないかと感じ、患者さんには噛む回数に注意してもらいつつ、噛みやすく、またしっかり噛まなくても飲み込める食事メニューを心がけました。
本品のように、噛むことが少なく食べられるメニューを提供することで患者さんの希望に沿うことはできましたが、噛んで食べる練習にはなりませんでした。噛むことに注意しながら食べてほしいと思いましたが、長年の習慣もあり、よく噛んで食べていただくことは難しいようでした。

 

 

レシピ(3人分)
一人当たりエネルギー162kcal、たんぱく質29.6g 塩分2.0g
<材料> 
・煮魚(種類は何でもOK)  80g×3切れ

・だし汁                    150g

・長芋                       30g

・卵白                     卵3個分

・おろし大根             300g

・しょうゆ       15cc (大さじ1杯)

・塩                   1.5g

・ソフティア※     大さじ1杯

<作り方>
(1)煮魚は骨を取り除き、ほぐす。(ほぐし具合は個別に調整する。)
(2)卵白をよく泡立てメレンゲを作っておく。
(3)ほぐした魚に(2)とだし汁を加えてやわらかさを調整する。(患者それぞれの状態に合わせる)
(4)おろし大根をつくり、残りの調味料・ソフティアを加えて混ぜ合わせ火にかける。
(5)深めの小鉢にラップを敷き、(4)を入れて冷やし固める。
(6)魚のほぐし身を団子状にまるめ、(5)の大根ゼリーの皮でつつむ。(茶巾絞りの要領)
(7)器に魚のおろし包みと大葉を添える。大葉の香りで食欲UP!!

 

※ソフティア2(ニュートリー株式会社)
食品のゲル化剤 ソフティア2のゲルは、60℃でも溶解せずセットできます。暑い季節でも室温で溶けず、寒い季節には温めても使用できます。味噌汁などの温かいゼリーを作ることも可能です。

 

 患者さんの反応
「魚の臭いが抑えられていて良かった。見た目もいつもと違う魚料理で珍しかった」と喜んで食べてもらうことができました。嘔吐の回数も減り、付き添いの奥さんと共に食事を喜んで頂きました。
再入院時、奥さんから「退院後は“やっぱり家の食事がいい”と言ってくれるかと思ったら、夫は“病院の食事が懐かしい、食べたい”と言っていました。食事のことでは安心しています」という言葉を掛けていただきました。

 

  

かんかん!で『驚きの介護民俗学』をれんさいちゅうの六車せんせいがこんなところにも!

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クロワッサン1月25日号あーんど2月10日号に連続掲載だよ。

とあるへんしゅうしゃは六車せんせーの記事にたどりつくまえの

ぽっこりお腹たいさくに気をとられすぎたなんてないしょだよ。

 


 『クロワッサン』(マガジンハウス)

1月25日号、2月10日号の「女の新聞」に載ってるよ!

『クロワッサン』(マガジンハウス) イメージ


コスメ天国韓国!!明洞(ミョンドン)界隈はコスメショップが目白押しです!!
買い物に夢中になり過ぎて、街中の写真がありません。ごめんなさい!

 

韓国といえば、BBクリームですよね?

私もBBクリーム愛用者です!
今回は同年代の女性ガイドさんからおススメされた『ミシャ』を購入!!
パールとキャビアが配合されて、スキンケア効果もあるらしいです!


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シートパックも色々あって、めっちゃ楽しい♪♪
コラーゲン配合、ヒアルロン酸配合、パール配合の3種類を購入!!
またまた珍しいパック発見!!
なんと!アイマスクのように目の回りを覆うシートパックが!?

目尻から瞼も覆えるので、乾燥しがちな目元の強い味方になってくれそうです。

私がリピートして使っているのが『エチュードハウス』のピーリング!写真左です!

優しい乳液タイプで、ゴシゴシしなくてもスッキリ角質が取れます。
  

kosume2.JPG新商品も発見しましたよ!
まつ毛の美容液とマスカラの下地がセットになっています。
なんと!伸びたまつ毛を測る定規付き!!おー、自信があるのね??
早速、毎日使ってまつ毛の長さを測っちゃおうっと!
 

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やっぱり、一度は足を運びますよね?免税店!!
私の大好きなロクシタンの基礎化粧品を購入しました。

日本だとなかなか手が出せない、お高いラインも物によっては半額近い!!
買っちゃいますよねぇ〜??はい!買いました!
 

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そして!そして!韓国っておまけ天国!!
今回半日コスメショップを回っただけでこんなに!!

おまけだけで、しばらくスキンケアが出来そうです。(笑)


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以前は韓国のコスメショップって可愛い女の子の店員さんが多かったけど
最近はすらっと背の高い男の子が多かったなぁ〜!!
これも韓流俳優の影響かしらね?


ぴろりん Profile

アメリカ テキサス州ダラス生まれ。大学入学の際に帰国。
大学卒業後、出版社にて文芸書、新書、美容雑誌、漫画編集等に携わる。
2010年3月退職後、映画・映像コラムやファッション誌のディレクションを行う。趣味はジョギング、食べ歩き、自分磨き。
天真爛漫な性格な為に有名人、無名人問わず友達多し。横浜市在住。


8こめ 『精神看護』1月号の表紙にとうじょー!

 

101221MH01.jpg雑誌『精神看護』の1月号が届いたよ。

 

あれ? 表紙にみたことあるようなひとがいるね。

 

そう、ぼくがとうじょーしたんだよ。

 

リサイズし忘れたから、版面からはみだしちゃったけどね!

 

 

 

 

 

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なんか裏表紙がかったいなーと思ったら、CD-ROMがついているんだね!

かんかん! でもおなじみの、岡田慎一郎先生の講習会が収録されているよ。

「看護・介護する人が楽になる身体の使い方」だって!

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中身は↑こんな感じだよ!

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かんかん!PC版には正月太り対策の記事も載ってるよ!

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