かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2018.9.18 update.
2000年に発足し、安全安楽かつ効果的に患者がIVRを受けられるようにIVR看護のあり方を検討する場です。放射線科における看護の臨床実践能力を高めるため専門知識や技術の習得、研鑽をめざし、チーム医療における看護師の役割を追究し、また、IVR看護師の専門性を確立するため、継続して学習する場、人的交流の場を提供することを目的としています。
発足間もなくから開催している研究会(セミナー)は、3月16日に第19回を迎えました。記念すべき第20回は、2020年3月7日に開催予定です!
公式webサイト:http://www.ivr-nurse.jp/
Face book @ivrnurse2016
M看護師のもやもや
夕方、緊急IVR実施の連絡を受け、急いでTAE(経カテーテル動脈塞栓術)の準備をしていました。患者Aさんは、交通外傷で運ばれてきた40歳代の女性でした。骨盤動脈からの出血がコントロールできず、急遽TAEを施行することになりました。キーパーソンは救急車に同乗してきた伯母さんとのことでした。
初療室から血管撮影室(アンギオ室)へ移動し、シースが入り出血部位が特定できました。いざ、ゼラチンスポンジで塞栓しようとしたその時です、「その塞栓ちょっと待ってください!」救命センターの医師が駆け込んできました。
「Aさんと伯母さんは宗教上の理由から輸血とゼラチンを使用した塞栓ができません」と言うのです。
***
TAEは一時中断となり、血管撮影室で時間だけが過ぎていきます。Aさんは眉間にしわを寄せ「痛い、痛い」と訴えます。医師たちはなんとかして塞栓できないものかと本人と伯母さんを説得しているようでしたが、2人は拒否したままでした。
M看護師はなすすべもなく、Aラインからガスの値を測ることぐらいしかできません。血圧が少しずつ低下していきます。AさんのHb(ヘモグロビン)の値は初療室に運ばれてきた時の値から比べると徐々に低くなってきていました。出血していることは明らかでした。
M看護師はこの時、「ここで輸血も塞栓もできなかったら命が危うい。命より大事なものはないのに。どうして?」ともやもやしていました。
◎問題提起
今回のケースでは、救命センターの医師が2人の所属する宗教団体の代表者に問い合わせ、「ゼラチンスポンジを使用していい」という許可を得て無事、TAEを施行することができました。しかし、もし許可されていなかったら、Aさんはこのまま命を落としていたかもしれません。
M看護師の「宗教上の理由やその他さまざまな価値観を持った患者の意思決定をどのように援助すればいいのだろうか」というもやもやは解決されずにいます。M看護師はどのような対応をすればよかったのでしょうか?
(IVR看護研究会 増島ゆかり)
IVRに携わる看護師向けの実践的な書物がほとんどない中で、各施設では独自のマニュアルを作って看護にあたっている。その現状を打破するために編集された本書は、医師のIVR手技、看護師のケアが系統立てて解説されている。2007年には「日本IVR学会認定IVR看護師制度」も発足し、ますますIVR看護が期待される中、時宜にかなった実践書。