第24回 患者の意思決定を支えるIVR看護―患者主体の治療の提供(解説)

第24回 患者の意思決定を支えるIVR看護―患者主体の治療の提供(解説)

2018.7.24 update.

IVR看護研究会

 2000年に発足し、安全安楽かつ効果的に患者がIVRを受けられるようにIVR看護のあり方を検討する場です。放射線科における看護の臨床実践能力を高めるため専門知識や技術の習得、研鑽をめざし、チーム医療における看護師の役割を追究し、また、IVR看護師の専門性を確立するため、継続して学習する場、人的交流の場を提供することを目的としています。

 発足間もなくから開催している研究会(セミナー)は、今年3月で第18回を迎えました。第19回は、2019年3月16日開催予定です。

公式webサイト:http://www.ivr-nurse.jp/
Face book @ivrnurse2016

 

 

治療か? かわいがっている犬の看取りか?

 

 前回の状況を本連載第20回で使用した宮坂のナラティブ検討シート(1)¹)を用いて整理してみます。本来、宮坂のナラティブ検討シートは、当事者のナラティブの違いを明確にして不調和を解消するための具体的な方法を検討し、当事者に対して行う対話を計画するものですが、今回も状況の整理に留まっています。

 

 

★web用 表.png

※ ↑ 表をクリックしていただくと拡大します。

 

 

 

 選択すべきは、治療か、かわいがっている犬の看取りか。Aさんは予定通りに入院した術前準備の流れの中でも悩み続けていました。

 K看護師の挨拶がきっかけでAさんの心が決まりましたが、これはK看護師が意図して行ったわけではなく偶然のことでした。K看護師は、今までのかかわりから、Aさんにとって飼い犬が大切な存在であることを理解しており、尊重してあげたい思いと治療延期による不利益を心配する気持ちとがあり、Aさんにとってどちらがよいのか悩んでいました。

 そして先輩は、Aさんにとって飼い犬が大切な存在であることに加え、今の病態からこれからAさんが置かれるであろう状況を予想し、その時の援助(スピルチュアルペインの緩和)につなげていく可能性を考えていました。

 主治医は、早く肺転移の精査をして治療方針を決めたいと思いながらも、現時点のAさんの病態から少々の猶予はあると判断しています。また、術者である放射線科医に迷惑をかけたと気にしていましたが、放射線科医から1週間後の枠に予約できる提案を受けて、Aさんと娘さんとの対話に向けた方針を決めました。Aさんの娘さんは、Aさんが選択する結果に起因するリスクを心配しながらも、その選択を尊重しようと思っていました。

 

24回イメージ.png

 

患者の意思決定を支える

 

 川崎²は、患者の意思決定をどのように扱うかという視点について、シェアード・デシジョン・メイキング(Shared Decision Making:SDM)という概念を次のように紹介しています。

 「患者中心の根拠に基づいた決定を保証するための患者(と家族)とヘルスケアチームとの相互作用である」と定義され、患者の要件について、①避けるべきリスクや病気または状態の重大性について理解していること、②予防サービスや含まれるリスク、利益、代替案(選択肢)、不確実性について理解していること、③可能性のある利益や害と考えている自分自身の価値についてよく吟味していることなどを挙げています²

 Aさんの意思決定にあたっては、それらの要件を判断するために、肝細胞がんへの治療と肺転移の精査を延期することのリスク(①)、延期の場合はそのリミット(②)を主治医からAさんと娘さんに説明し、理解状況を把握した上で意向(③)を確認していました。

 今回、Aさんの意向と医学的判断は、治療延期という同じ着地点にたどり着きました。しかし、両者が乖離するような場合、患者によっては医学的根拠に基づいた治療方法の選択ではなく、治療と生活のバランスを検討し、医学的な判断とは異なる決断をする場合もあるという点について、心得ておく必要があります³

 患者の意思決定は、知識や経験、情報や価値観などに影響を受けます。揺れ動く患者の気持ちに寄り添い、患者の意思決定を支援していくことは、治療の場としての一場面であるIVR看護では難しいと考えがちですが、生活の場である病棟では遠慮して言えない本音が聞けることもありますよね。その本音には意思決定を支援する際のキーワードが隠されていることもあるため、侮れません。患者は、発病時から、急性期・慢性期の区別なく死を迎えるまで、絶えず意思決定をしていくことになります。本連載第7回にあるように、看護部全体を大きな「チーム」と考え、患者に寄り添う線の部分(場面)に応じて役割を分担し、それをつなぎながら力強い線として支援していくことが大切なのではないでしょうか。

 

(IVR看護研究会 青鹿由紀)

 [引用・参考文献]

1)宮坂道夫:医療倫理学の方法 原則・ナラティブ・手順 第3.医学書院,p672016. 

2)川崎優子:看護者が行う意思決定支援の技法30-患者のニーズ・価値観を引き出すかかわり.医学書院,p192017.

3)前掲書2),p5.

4)吉武久美子:看護者のための倫理的合意形成の考え方・進め方.医学書院,2017. 

 
 

←第23

回はこちら

第25回はこちら→

 

 <バックナンバー一覧はこちら>

 

 

 

 

 

 

 

トラックバック

http://igs-kankan.com/mt/mt-tb.cgi/1116

コメント

このページのトップへ