第20回 IVR看護師の意思決定 ―チームの中での看護倫理(解説②)

第20回 IVR看護師の意思決定 ―チームの中での看護倫理(解説②)

2018.5.22 update.

IVR看護研究会

 2000年に発足し、安全安楽かつ効果的に患者がIVRを受けられるようにIVR看護のあり方を検討する場です。放射線科における看護の臨床実践能力を高めるため専門知識や技術の習得、研鑽をめざし、チーム医療における看護師の役割を追究し、また、IVR看護師の専門性を確立するため、継続して学習する場、人的交流の場を提供することを目的としています。

 発足間もなくから開催している研究会(セミナー)は、今年3月で第18回を迎えました。第19回は、2019年3月16日開催予定です。


公式webサイト:http://www.ivr-nurse.jp/
Face book @ivrnurse2016

 

 

チームの中での看護倫理

 

次に、チームの中での看護倫理を考えてみましょう。今回I看護師が意思決定したことが遂行されるカギは、IVRのチーム員の1人である医師が握っていました。この施設に研修に来て間もない医師であったため、I看護師とのコミュニケーションが良好とはいえない状況でした。このため、I看護師は「この病院の看護師は満足にガウンも着せられないのかよって思われたらいやだなあ……」と思い、医師も「僕のサイズはあんまり在庫がなくて。前のところだと嫌な顔されたけど」と、どちらも相手の本心や背景を知らないまま憶測だけで状況に対応することになってしまいました。

この状況を、宮坂のナラティブ検討シート()5を用いて整理してみましょう。

 本来、宮坂のナラティブ検討シートは、当事者のナラティブの違いを明確にして不調和を解消するための具体的な方法を検討し、当事者に対して行う対話を計画するものですが、ここでは状況の整理に留まっています。

 

★IVR表.png

表 ナラティブ検討シート(宮坂).pdf

  ※ ↑ こちらをクリックしていただくと拡大します。

 

 

患者さんにとってどうなのか

 

 I看護師と医師とでは「現状の問題」についてのとらえ方、「望んでいること」が異なっています。I看護師にとっては、手袋を交換しないまま医師がIVRに入ってしまうことは「受け入れがたいこと」であり、理由を説明して交換を依頼するという回避方法になっています。医師にとっては、手袋の交換は不要という認識であり、交換してはならないと思っているわけではないので、この状況が「受け入れがたいこと」には至っておらず「回避方法」もありません。「背景にある事情や価値観」からは、I看護師の倫理観がうかがえ、医師にとって、過去に不快な経験をしたことがこの状況に影響を及ぼしていたことがわかります。また、I看護師が医師に話しにくいと感じていました。

今回の状況の不調和は、指導医が登場して解消されています。この指導医の「感染のリスクとなる可能性があるなら、手袋を交換するべきだ」「手袋を交換しないまま医師がIVRに入ってしまわないように、看護師の意見を尊重した発言をし、医師に手袋を交換させる」「患者の安全を第一に考える。お互いに気付かないことはあるので、気付いたことを気軽に指摘し合うことは大切だ」というナラティブからは、その倫理観と医師同士のパワーバランスがうかがえます。

 

IVRはチームで行われます。チームの成員の職種や経験によって、その役割や能力は異なっており、それぞれの「意思決定」や「実践」の結果では、葛藤や混乱が生じる場合もあります。

「看護業務基準」の「13看護実践の方法」6には、「134 チーム医療において自らとメンバーの役割や能力を理解し、協働する」とあります。チームのほかの成員の「意思決定」や「実践」にただ機械的に追従するのではなく、その背景に目を向けながら、患者さんにとってどうなのかという軸から逸脱しないことが、チームの中での看護倫理としてIVR看護師に求められることなのではないでしょうか

また、チームの成員間のよいコミュニケーションが、推測や憶測の必要性をなくし、チームにおける透明性と安定感を生み、それがお互いの安心感と信頼感に寄与する7ことから、語り合い、理解し合う風土を構築していくことが、チームの中での看護倫理をチームとしての倫理へつなげ、効果的な協働を生み出す土壌となることでしょう。

今回、神対応ともいえる指導医のおかげでスムーズに事が進みましたが、チーム成員全員が神であるように目指したいですね。

 

IVR看護研究会 青鹿由紀)

<おわり>

 

 

[引用・参考文献]

1)吉武久美子:看護者のための倫理的合意形成の考え方・進め方,医学書院,2017

2鶴若麻理、麻原きよみ編集:ナラティブでみる看護倫理、南江堂、p32013. 

3)松村明編者:大辞林第三版.三省堂,p1282006

4)手島恵監修:看護者の基本的責務2018年版 定義・概念/基本法/倫理. 日本看護協会出版会, 242018

5)宮坂道夫:医療倫理学の方法 原則・ナラティブ・手順 第3版.医学書院,p672016

6)前掲書4),p91

7鷹野和美編著:チーム医療論.医歯薬出版株式会社,p282004

8)看護にかかわる主要な用語の解説概念的定義・歴史的変遷・社会的文脈日本看護協会 ,2007.

www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/2007/yougokaisetu.pdf   [2018.5.11アクセス]

 

 

 

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