第3回 ショックの治療

第3回 ショックの治療

2014.4.28 update.

片岡 惇 イメージ

片岡 惇

千葉大学医学部卒業。武蔵野赤十字病院にて初期研修を行い、その後同救命救急科へ。3次救急とICU管理を日々行っています。患者さんの長期予後を見据えた全身管理が出来る集中治療医を目指しています。

 

まずは原因疾患に対する治療

 ショックの治療の大原則は、まず原因疾患に対する治療です。急性心筋梗塞であればカテーテル治療、敗血症であれば抗菌薬と感染源ドレナージ、アナフィラキシーであればアドレナリンの投与、緊張性気胸であれば胸腔ドレナージ、心タンポナーデであれば心嚢ドレナージ、などです。

 

 その中で忘れてはならないことは、「ショックは酸素の需要供給バランスの障害である」ということです。原疾患の治療とともに、いかに「DO2」と「血圧」を保つかを考えます。

 

■敗血性ショックの治療アルゴリズム

 敗血症性ショックにおけるEarly goal-directed therapy(EGDT)をみてみましょう。この治療アルゴリズムに沿って管理を行うことで、敗血症性ショックにおける死亡率を改善させるといわれています。

 

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Rivers E, et al. Early goal-directed therapy in the treatment of severe sepsis and septic shock. N Engl J Med. 2001; 345: 1371. より改変して引用

 

 まずは中心静脈圧(CVP)を8〜12mmHgに維持できるように輸液を行います。CVPは心臓の前負荷の指標になるといわれており、CVPが上がるよう輸液をすることで心拍出量を増やし、DO2および血圧を上昇させることを期待しています。血圧については、平均動脈圧65mmHg以上を目指します。ある程度輸液しても、目標血圧に達しない場合は、末梢血管を収縮させるノルアドレナリンなどの昇圧剤投与を開始します。現在では、最初に選択すべき昇圧剤としてノルアドレナリンが推奨されています。


 輸液、昇圧剤投与を行うことで平均動脈圧を65mmHg以上に維持しても、ScvO2>70%以上や乳酸値の改善が認められない場合は、それ以外の要素の改善を考えます。Ht値30%以上を目標に輸血を、心収縮力の低下が認められれば強心剤(ドブタミン、ミルリノン)の投与を行います。

 

■酸素の供給を増加させるよう全身管理

 このように酸素の供給を増加させるよう全身管理を行うことで、ショック患者の予後を改善させることが出来るといわれています。繰り返しになりますが、まずは原疾患の治療です。しかしその管理の中で、酸素の需要供給バランスの天秤を忘れてはならないのです。


 ここまで「ショック」の概略を述べてきましたが、大事なことは血圧が低下する前に「ショック」を認知すること、そして酸素の需要供給バランスを考慮しながら「ショック」の管理を行っていくということです。早め早めの対応で早期に「ショック」から離脱できるようにしましょう。今回の記事がみなさんの日常業務の中で少しでもお役に立てば幸いです。

 

第1回 「ショックとは?」

第2回 「酸素の需要・供給バランスの指標」と「ショックの分類」

第3回 「ショックの治療」

 

 

第3回「ショックの治療」了

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