第1回 ショックとは?

第1回 ショックとは?

2014.3.13 update.

片岡 惇 イメージ

片岡 惇

千葉大学医学部卒業。武蔵野赤十字病院にて初期研修を行い、その後同救命救急科へ。3次救急とICU管理を日々行っています。患者さんの長期予後を見据えた全身管理が出来る集中治療医を目指しています。

 

臨床現場の急変症状で遭遇率の高い「ショック」。

緊急度が高く危険なうえに、見極めが難しいので苦手意識のある方も多いのではないでしょうか。

今回から3回にわたり、イメージしやすく解説していきます。

 

 

「ショック」ってどんなことが起こっているの?

 

 「ショック」というとみなさんはどのような患者さんを想像するでしょうか。

 多くの方が「ショック」=「血圧が下がっている」患者さんを思い浮かべるのではないでしょうか。
 

 次のような患者さんを想像してください。

 

60歳女性。前日からの発熱と腰痛を主訴に来院されました。血圧は100/60mmHg、脈拍は120/分、体温39℃、呼吸数25/分です。意識はやや混乱し自分がどこにいるかわからず、前日よりほとんど排尿がみられないとのことです。尿の混濁が認められ、腎盂腎炎の診断で入院となりました。

 

 この患者さんは「血圧が下がっている」わけではないので、「ショック」ではないのでしょうか?
 いいえ、実はもうすでに「ショック」のサインがあります。

 

それは「意識障害」や「尿量低下」です。

 

 

 ここでもう一度「ショック」について復習しましょう。

 「ショック」は「組織での酸素の需要供給バランスの障害」を示します。つまり、組織において酸素が足りない状態です。
 

 

kankan_tenbinmini.jpg

 それぞれの臓器に酸素が足りなくなると、臓器によってさまざまな症状が出現します。脳に酸素が足りなければ意識障害、腎臓に酸素が足りなければ尿量低下、全身の組織に酸素が足りなくなれば嫌気性代謝となり乳酸値の上昇や代謝性アシドーシスが起こります。

 

 

■「酸素供給量が足りない」とは?

 それではどのように酸素供給量を考えればいいでしょうか。
 組織への酸素供給量は以下の式に示されます。

 

組織への酸素供給量(DO2:デリバリーO2

 =心拍出量(CO)×動脈血酸素含有量(CaO2

 =CO ×(1.34×SaO2×Hb+0.003×PaO2

 

 

 式ではわかりづらいので、川を上流から下流に下って、酸素という荷物を届ける船を想像してください。

kankan_kawamini.jpg

 

まず動脈血液内の酸素量です。血液内ではヘモグロビンという船が、酸素という荷物を運んでいます。酸素を積んでいる船の割合がSaO2(SpO2)です。酸素はほとんど船(ヘモグロビン)で運ばれ、川に直接溶けている酸素の量(0.003×PaO2)は少ないです。

 

hemogrobin3.png

 

 

 川の上流のダム(心臓)から送水する川の水量が心拍出量です。心拍出量を規定するものは、前負荷・心収縮力・後負荷です。ダムにたまっている量(前負荷)が多ければ、それだけ多く酸素を運ぶことが出来ます。送水力(心収縮力)が強ければ、それだけ量も増えます。送水したあとの川幅が狭い(後負荷が高い)と、送水量(心拍出量)が低下します。

 

 そして酸素を運ぶ勢いを示している値が、血圧です。勢いは川の水量(心拍出量)に影響されます。もう一つ、勢いに影響するものとして、下流の支流が広いと主流の勢いは落ちます。これが、末梢血管が拡張すると血圧が下がる仕組みで、血液分布異常性ショックです。代表的なものが、末梢血管が拡張する、敗血症性ショックやアナフィラキシーショックといったものです。


 

 血圧=心拍出量×末梢血管抵抗

 

 

 よって、血圧という勢いに影響が出る前にも、酸素の供給が減る状況である「ショック」が起こりえるのです。

 

今回は、「血圧が低下していなくても“ショック”は起っているかもしれない」ということを覚えてください。

少し長くなってきたので、第1回はここまでにしましょう。

⇒次回は「酸素の需要・供給バランスの指標」と「ショックの分類」についてみていきます。

 

第1回「ショックとは?」了

 

第1回 「ショックとは?」

第2回 「酸素の需要・供給バランスの指標」と「ショックの分類」

第3回 「ショックの治療」

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