がん患者のための食事レシピ No.010

がん患者のための食事レシピ No.010

2011.4.12 update.

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プロフィール

川口美喜子
島根大学医学部附属病院臨床栄養部副部長・管理栄養士。2005年より島根大学医学部附属病院NST(栄養サポートチーム)の構築と稼働に携わる。
病院栄養士になってから、食事に悩む患者さんのために患者さんに寄り添える栄養士が必要だと感じていました。そんなとき、院内で事務職に就いていた青山栄養士に出会い、共に歩んでくれるように説得しました。青山栄養士は辛い思いをしながらも、楽天的で無頓着な私と活動を共にしてくれました。最近は、私よりも強く逞しく大きな心で食の奥深さを語ってくれます。親子ほど年の離れた私たちで、患者と家族の体と心を和ます命を繋ぐ病院食を考えていこうと思います。

青山広美
日清医療食品(株)島根大学医学部附属病院事業所・栄養士。
初めてがん治療に苦しむ患者さんに会った時、「今は食欲がないから何もいらない」「治療が辛くて食べる気分にならない」「食べられないから来なくていいわ」と言われることばかりでした。「食欲はないけど、私は生きるために食べたい」という言葉に驚きとショックだったことを覚えています。毎日が特別な食事ではないけれど、患者さんのその日、その時食べたい希望に合わせた調理は、人を思うやさしい料理になると思います。

居酒屋風 串焼き

 

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対応

食欲不振、気分転換が必要な時、趣向を変えた食事が必要なときなど

 

レシピの背景

化学療法のために、短期入院を繰り返した患者さんでした。治療が始まると、吐き気が強く、食欲が低下しました。「(自分が)何が食べたいのかわからない」と話されていました。

 

若い患者さんで、口から物を食べることに障害はありませんでした。治療のためには病院食を食べて栄養状態を維持していくことが大切であると知っていただくきっかけとしてレシピを検討しました。

 

お話をうかがうと、入院するまでは友達とよく居酒屋さんに行っていたそうです。そこで、見た目や味、盛り付けを居酒屋さん風に工夫しました。

 

調理のポイント

好みの材料をフライパンや魚用グリルで焼き、甘辛いしょうゆダレを絡めるだけで簡単にできるレシピです。

 

レシピ紹介(3人分)

 

一人当たりエネルギー130kcal、たんぱく質43g

<材料> 

アスパラ 90g (3本)

ベーコン 60g (3枚)

しいたけ 30g (3枚)

冷凍フライドポテト 60g

人参   30g 

 

【調味料】

塩  少々

しょう油  6cc (小さじ1杯)

みりん   6cc (小さじ1杯)

酒      6cc (小さじ1杯)

 

<作り方>

(1)アスパラは塩茹でし、ベーコンで巻いて、串を刺す。

(2)しいたけは飾り包丁を入れて、串に刺す。

(3)(1)と(2)の両面をフライパンで焼き、余分な油はペーパーで拭き取って調味料を煮からめる。

(4)人参は花形に型抜きして柔らかく茹でておく。

(5)器にすべてを盛り付けて完成!!

 

提供を終えて

目先を変えてあげることで、気分が変わり、吐き気を誘うことなく食べていただくことができました。

 

患者さんの声

「居酒屋さんみたいで感激でした!!」「何気なく話したこと(居酒屋さん行ったこと)も覚えてくれていてうれしかった」「毎日食事の時間が来るのが苦痛だったけど、今は食事が楽しみです」という、うれしい言葉を聞くことができました。 

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