登録販売者不正受験?

登録販売者不正受験?

2012.11.07 update.

宇田川廣美 イメージ

宇田川廣美

東京警察病院看護専門学校卒業後、臨床看護、フリーナース、看護系人材紹介所勤務を経て、フリーライターに。医療・看護系雑誌を中心に執筆活動を行う。現在の関心事は、介護職の専門性と看護と介護の連携について。「看護と介護の強い連携で、日本の医療も社会も、きっと、ずっと良くなる!」と思っている。

虚偽証明の背景にある事情

 

これは一般用医薬品を店頭販売する際に必要な「登録販売者」試験でのことです。大手スーパーの西友(東京)が大量の従業員に業務内容や従事時間を偽った実務経験証明書を発行し、過去4年間に200人以上の従業員がそれによって受験した疑いがある、というものです。「各店の医薬品販売責任者が受験に必要な証明書を記載して東京本社に送付し、本社で代表者印を押していた。責任者の認識がずれていて、本社は虚偽記載に気づかずに発行していた」と西友の説明が記事の中に掲載されていました。

 

真偽のほどは厚生労働省の調査の結果を待つとして、こうした背景には薬品を店頭販売する際に決められている販売体制の基準が大きく関係していることがうかがわれます。一般用医薬品は以下のようにリスクの程度に応じて3種類に分類され、販売体制もそれに応じて決まっています。

 

第一類医薬品

【内容】

一般用医薬品として使用経験が少ない等、安全性上、特に注意を要するもの

例:H2ブロッカー含有薬、一部の毛髪用薬、等

●質問がなくても行う情報提供 義務

●相談があった場合の対応 義務

●対応する専門家 薬剤師

 

第二類医薬品

【内容】

まれに入院相当以上の健康被害が生じる可能性がある成分を含むもの

例:風邪薬、解熱鎮痛薬、胃腸鎮痛鎮痙薬、等

●質問がなくても行う情報提供 努力義務

●相談があった場合の対応 義務

●対応する専門家 薬剤師または登録販売員

 

第三類医薬品

【内容】

日常生活に支障をきたす程度ではないが、身体の変調・不調が起こる恐れがある成分を含むもの

例:ビタミンB・C含有保健薬、主な整腸薬、消化薬、等

●質問がなくても行う情報提供 不要

●相談があった場合の対応 義務

●対応する専門家 薬剤師または登録販売員

 

また、

●第一類医薬品の相談を受けて対応する時間中は薬剤師を置く

●第二類医薬品および第三類医薬品の相談を受けて対応する時間中は薬剤師、または登録販売者を常時置く

●これらの専門家の勤務時間の総和が、薬局等の営業時間を上回ること

●一般用医薬品を販売する時間帯が販売しない時間帯を上回ること

といった条件が定められています。

 

一般用医薬品を販売するには、必ず薬剤師もしくは登録販売員を置かなくてはなりません。見方を変えれば、もし薬剤師や登録販売員が不在の時間帯があったとしたならば、医薬品を販売しない時間帯としてその売り場は閉鎖しなくてはならないのです。残業などで遅くなった帰宅途中、薬を買おうと立ち寄ったスーパーで薬品売り場だけが閉まっていた、というのを経験した人もいることとでしょう。他の売り場は遅くまで営業しているなかで医薬品売り場だけ閉じているのは消費者として不便を感じ、経営者としては見過ごせる状況でありません。なんとか登録販売員を配置して売り上げを確保したいと思うのではないでしょうか。今回のニュースでは、そんな事情を感じました。

  

 

セルフメディケーションの考え方から発生した登録販売者制度

 

そもそも「登録販売者制度」とは、2009年施行の改正薬事法によってできた制度です。「登録販売者」としての資格を作り、登録販売者を配置することで風邪薬や整腸剤などの一般用医薬品を店頭でも販売できるように規制緩和しました。

 

これは、高齢化が進み人々の健康への関心が高まるなかで「自分自身の健康に責任をもって軽度な身体の不調は自分で手当てする」という「セルフメディケーション」の考えが広まってきたことが背景にあります。(もちろん、医療費抑制に向けた国の思惑も大きく関係していることでしょう)そして、一般用医薬品の適切な選択と適正な使用のために販売制度の見直しが必要になり、薬事法の一部改正に至ったのです。

 

この改正薬事法は「医薬品のリスクの程度に応じた情報提供と相談体制の整備」、「医薬品の販売に従事する専門家として登録販売者制度の創設と活用」、「適切な情報提供および相談対応のための環境整備」が柱となっています。件のスーパーなどで手軽に風邪薬が買えるようになったり、医薬品販売コーナーで「登録販売員」と明記された名札をつけたスタッフの対応を受けたりするようになったのも、この改正によるものです。

 

ナースの世界でも、薬剤師の世界でもそうであるように、いくら教育を受けて資格を取得したといっても、実際の消費者に対して知識や経験を活かしたアドバイスができようになるにはそれなりの年月が必要です。登録販売員も同じこと。薬に関する身近な相談相手としての確実なポジションを得るには、もうしばらく様子をみる必要を感じます。

 

 そして、何よりもこうした社会の動きに対して、一個人としては「セルフメディケーション」の基本を押さえておきたいと思います。一般用市販薬の使用は、あくまでも自己責任のもとで行う、ということです。登録販売員のアドバイスはあくまでもアドバイスであり、医師の指示でも薬剤師による服薬指導でもありません。あくまでも参考意見として、薬を利用する者自身が考え、判断し、責任をもつことが重要です。体制が整うと、その便利さに寄りかかりがちになりますが、しっかりと自分の考えをもって行動することで、そのメリットをより有効に活用できるのではないでしょうか。

 

表 登録販売者試験の受験資格と試験科目

 

受験資格

 

*旧大学令に基づく大学及び旧専門学校令に基づく専門学校において薬学に関する専門の課程を修了した者

*平成18年3月31日以前に学校教育法に基づく大学(短期大学を除く)に入学し、当該大学において薬学の正規の課程を修めて卒業した者

*平成18年4月1日以降に学校教育法に基づく大学に入学し、当該大学において薬学の正規の課程(同法第87条第2項に規定するものに限る。)を修めて卒業した者

*旧制中学校令に基づく旧制中学若しくは学校教育法に基づく高校又はこれと同等以上の学校を卒業した者であって、1年以上薬局又は店舗販売業若しくは配置販売業において薬剤師又は登録販売者の管理及び指導の下に実務に従事した者

4年以上薬局又は店舗販売業若しくは配置販売業において薬剤師又は登録販売者の管理及び指導の下に実務に従事した者

*1~5に該当する者と同等以上の知識経験を有すると都道府県知事が認めた者

 

試験科目

 

*医薬品に共通する特性と基本的な知識(20問)

*人体の働きと医薬品(20問)

*薬事に関する法規と制度(20問)

*主な医薬品とその作用(20問)

*医薬品の適正使用と安全対策(20問)

 

【参考HP】

●一般用医薬品販売制度の改正について 厚生労働省

●登録販売者ウェブサイト 薬事日報社

●日本OTC医薬品協会

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