かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2011.1.24 update.
都立駒込病院感染症科医長・感染対策室長
著書に『JJNスペシャル82 感染症に強くなる 17日間菌トレブック』がある。
イラストレーション:櫻井輪子 http://www.wakonosu.net/
「新型インフルエンザってどうなったの?」
「もう終わったんじゃないの?」
そう思っていた人も多かったのではないでしょうか。
しかし、今年もまた新型インフルエンザが流行してきました。
各地で注意報がだされ、とうとうテレビや新聞のニュースでも大きくとりあげられるようになっています。
昨年末までは、これまでにも流行した季節性のインフルエンザ“香港A型”が中心でした。年明けから新型インフルエンザが急増し、今ではほとんどが新型になっています。
冬休みが終わり、学校、会社、そして通勤通学の交通機関など、狭い場所で多くの人が接する機会が増えたことで急速に広がっているのです。
突然あらわれて世界を大混乱させた新型インフルエンザ。日本でもあっという間に広がってしまいました。
前回の流行では、症状がほとんどなかった人なども含めると、すでに約2000万人が感染したとも言われています。2000万人というのは驚くほどの数値です。しかし、まだ8000万人は感染していないということにもなるのです。
今までインフルエンザになったことがないから自分は大丈夫?
いえいえ、あなたは「かかりやすい人」なのです。
感染は、これからも続くでしょう。そこで、改めて対応についてまとめておこうと思います。
もともと、季節性インフルエンザのワクチンは、A型が2種類(ソ連型、香港型)とB型の計3種類が混合されたものでした。
今期のワクチンは、ソ連型を新型インフルエンザ[ブタインフルエンザA(H1N1)]に変更したものとなっています。
ワクチンを打っても、戦う準備(抗体がつくられる)までに2週間は必要です。それを考えると、ワクチンを接種するなら12月までには打っておきたいところ。今からで間に合うかは個々の判断で決めましょう。
また、ワクチンを打っているという人も、インフルエンザに感染する可能性はあるということを再確認。それでも通常の予防はしっかりとやっておきましょう。
ウイルスは非常に小さいため、マスクでの完全な防御は難しいと考えられています。しかし、咳やくしゃみなどは、水分を含んだ飛沫(ひまつ)として飛びますから、マスクをつけていることで在る程度の効果は期待できます。そして、感染している本人がマスクをつければ、さらに効果は高くなります。
感染者が鼻や口を手で触れ、汚染された手で触れた場所にもウイルスがついてしまいます。ウイルスは乾燥にも比較的強いため、汚染されている部分を、別な人が触れ、その手でまた自分の口や鼻をさわり感染してしまうということも考えられます。水の冷たい季節ですが、手洗いも忘れずにやっておきましょう。
感染した場合、発症までの潜伏期間は2日から3日。急激な発熱、咽頭痛、咳、筋肉痛や関節痛などで発症します。
重篤な合併症として、肺炎や脳炎には特に注意が必要です。
一般的には、細い綿棒を鼻の奥に入れてぬぐってとった検体で迅速検査をします。発症してすぐには陽性とならないため、発熱してから最低6時間から12時間以上経過しての検査がおすすめです。
もしもインフルエンザに有効な薬とされているタミフルやリレンザを使うのであれば、48時間以内に内服をはじめます(それ以上経過すると効果が期待しにくくなってしまいます)。
治療の期間は5日間。薬を飲み始めたのに、すぐに熱が下がらないと心配する人もいますが、基本的に飲んだらすぐに解熱するという速攻性のある薬ではありません。
この原稿を書いているとき、また国内で鳥インフルエンザが発生したというニュースも届きました。世界の感染症科医師が本当に心配している新型インフルエンザは、このような病原性の高い鳥インフルエンザが、人にも簡単に感染するようになったものです。もしも、このようなインフルエンザが流行すれば、今回のインフルエンザよりも遙かに死亡率が高くなることが予想されています。
どんなインフルエンザがやってきても、日常生活で気をつけることは変わりません。今後やってくるかもしれない、さらに恐ろしいインフルエンザにそなえて、今からインフルエンザ対策に強くなっておきましょう。
日常で出会う感染症、医療現場で出会う感染症、感染対策を読みやすい語り口でまとめた一冊。
菌のイラストも盛り沢山で、菌トレしているうちに気がつけば感染症に強くなっています!