かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2019.10.22 update.
2000年に発足し、安全安楽かつ効果的に患者がIVRを受けられるようにIVR看護のあり方を検討する場です。放射線科における看護の臨床実践能力を高めるため専門知識や技術の習得、研鑽をめざし、チーム医療における看護師の役割を追究し、また、IVR看護師の専門性を確立するため、継続して学習する場、人的交流の場を提供することを目的としています。
発足間もなくから開催している研究会(セミナー)は、3月16日に第19回を迎えました。記念すべき第20回は、2020年9月12日に開催予定です!
公式webサイト:http://www.ivr-nurse.jp/
Face book @ivrnurse2016
S看護師はチームのこれからのために、まずはA看護師の話を聞いてみることにしました。
S看護師:カテの指導係という役割を引き受けてくれてありがとう。今日は3カ月くらい経ったということで、指導者としての率直な思いを聞きたいんだよね。
A看護師:まずは私たちのやり方をきちんと覚えてもらうことが大事だと思ってるんですよね。私が指導している内容で仕事を覚えてくれれば、心カテのレベルは落ちないと思うんですけど。
S看護師:ほかの領域のIVRを経験していることは、指導をする上でどのくらい加味しているの?
A看護師:心カテは特殊だから、みなさんは経験があっても新人だと思って指導してます。
S看護師:特殊っていうのは?
A看護師:心臓だから、一歩間違えれば死ぬことだってあるし、心電図も読まないといけないし、画像もきちんと読めなきゃいけない。先々を読んでやらなきゃいけないでしょ。そういうことをきちんとマニュアル化してあるんだから、それをちゃんと覚えて動けるようになってもらうのが第一でしょ。それに心カテは件数が多いから、次、次ってやっていかないと患者を待たせることになるし。
S看護師:そうね……。そういう気持ちで指導をしているのは分かった。指導をされている看護師の様子はどういう風に感じている?
A看護師:みんなの態度を見ていると、ちゃんと覚えてくれているように思えないんです。マニュアルに書いてあることだけを覚えればいいのに、それがなぜできないのか理解できなくて、私、やる気がなくなってきてるんです。
A看護師との話を通してメンバーはお互いに不満を抱え、対立している状況であることを認識したS看護師は、このままではチームとしていい仕事ができないと思いました。どのように介入したらいいか悩み、主任看護師に相談をしました。すると主任看護師から「今のIVRチームは信念対立の状態ね。信念対立解明アプローチという方法があるから勉強してみたら?」と助言され、S看護師はさっそくそれを調べてみました。
信念対立とは
信念対立とは、チームメンバー(メディカルスタッフ、患者、家族など)間にトラブルが生じ、チーム医療の機能不全を引き起こす可能性がある問題の総称です。信念対立は、人間がいればいつでもどこでも生じる問題であり、メディカルスタッフに課せられた職務遂行に弊害をもたらす恐れがあります1)。
信念対立が存在したまま仕事を続けていると、日常生活に支障をきたし、仕事をするのがつらい状態を作り出し、スタッフのバーンアウトや離職につながる可能性を含んでいます。従がって、信念対立解明アプローチを習得しトラブルを解消することは、医療過誤・医療事故の減少、スタッフの健康リスクの軽減することにもつながります。
S看護師は主任が言っていたように、IVRチームの現状を信念対立の状態だと認識しました。そこでチームリーダーとして、上記の弊害を最小限にするために信念対立の低減に取り組むことを決意しました。
信念対立解明アプローチの方法について
第1段階として、「状況」と「目的(意図)」を確認することが重要です。
状況を確認するためには、現場での様子を思い出す、そしてそのときどきの様子に意識を向けることを意識し、問いかけていくことがコツです。また、本来の目的を思い出す、それからチームの共通目標に意識を向けることに注意し、問いかけながら「目的」を確認していきます。ここでは、「問う」ということが大切で、問いかけのバリエーションを増やして、相手との関係性に合った方法で問いかけていくことが大切です。
第2段階として、第1段階で確認した「状況」「目的」に応じた「方法」を考えます。
方法を考えるときは過去のやり方にこだわらず、今の状況と組織の目的に沿ったやり方を意識することがコツです。また、複数の方法が見つかったら、どの方法が目的達成に貢献しそうか、という視点で整理していくと良いでしょう。メンバーで話し合って、目的に沿った方法が決まったら、それを一定期間やり続けることが大切です。
S看護師は、信念対立解明アプローチを実践するには、対話や傾聴のスキルも必要だと思いました。しかしここはS看護師もベテランナースです、これまでの経験を活かしてみんなの話にしっかりと耳を傾けようと決めました。チームカンファレンスは3日後です。S看護師にとっても、リーダーとしての最初の課題です。多様性によって個々の能力を超えることがチームの効果です。この問題を乗り超えて、いいチーム、頼れるリーダーに成長していくことを期待しましょう。
(IVR看護研究会 高田沙織)
[参考文献]
1)京極真:チーム医療・多職種連携の可能性をひらく―信念対立解決アプローチ入門.6, 中央法規,2012.
IVRに携わる看護師向けの実践的な書物がほとんどない中で、各施設では独自のマニュアルを作って看護にあたっている。その現状を打破するために編集された本書は、医師のIVR手技、看護師のケアが系統立てて解説されている。2007年には「日本IVR学会認定IVR看護師制度」も発足し、ますますIVR看護が期待される中、時宜にかなった実践書。