第40回  地域に目を向けよう(解説)

第40回  地域に目を向けよう(解説)

2019.8.23 update.

IVR看護研究会

 2000年に発足し、安全安楽かつ効果的に患者がIVRを受けられるようにIVR看護のあり方を検討する場です。放射線科における看護の臨床実践能力を高めるため専門知識や技術の習得、研鑽をめざし、チーム医療における看護師の役割を追究し、また、IVR看護師の専門性を確立するため、継続して学習する場、人的交流の場を提供することを目的としています。

 発足間もなくから開催している研究会(セミナー)は、3月16日に第19回を迎えました。記念すべき第20回は、2020年9月12日に開催予定です!


公式webサイト:http://www.ivr-nurse.jp/
Face book @ivrnurse2016

 

IVRと「生活を支える医療」の関係

 

 2018年診療報酬・介護報酬同時改定は、団塊世代が75歳以上となる2025年とそれ以降の社会・経済の変化や技術革新への対応に向けて実施されました。改定の基本方針として、地域包括ケアシステムの構築など「生活を支える医療」の理念の下、かかりつけ医機能の強化・入退院支援の推進や質の高い在宅医療や訪問看護の確保、介護との連携の推進などが掲げられました。  

 このように、医療に求められるものが病院から地域、そして在宅へと変化している現在、私たちIVRを担当する看護師はIVR室で繰り広げられる看護実践さえできていれば、それでいいのでしょうか? CVポートを挿入する患者さんを例にして考えたいと思います。

 

 

IVR看護師も地域と関わる術はある 

 

 図に示した循環している青の矢印は、患者さんが入院してIVRを受け在宅で生活することをイメージしたものです。

 

★完成 IVR.png

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、患者さんに向かっている矢印は、その場面で関わる看護師を示します。1人の患者さんに対し、何人もの看護師が関わっていることが分かります。また、ピンク色付きの矢印は外来と院外での看護師が関わる部分です。図を見ると、IVRを受ける患者さんへよりよい看護をしていくためには、院内だけの看護では完遂しないことが分かります。よって、CVポートを挿入する患者さんが治療を続けながらいつも通りに日常生活を送っていくためには、院内の継続看護のみならず、院外でも継続看護をしていく必要があるのです。  

 それでは、IVRを担当する看護師にはどのようなことができるのか? 事例をもと基に考えてみたいと思います。  

 

[事例]  

Aさん、75歳女性、膵臓がん・肝転移。  

 近医で糖尿病の定期検診の際に、肝機能の異常が指摘され精査をしたところ、膵臓がんと肝転移が発見された。専門病院を紹介され薬物療法目的で入院。CVポートを挿入しmFFX(modified FOLFIRINOX)療法を受けることとなった。家族構成は、80歳の夫と二人暮らし。夫は最近物忘れが多くなっており、食事や掃除など家事全般をAさんが行っている。子どもは息子が2人、それぞれ結婚し家庭を持っている。息子2人は協力的だが遠方在住であり、支援は難しい状況。  

 初回治療では、食欲不振と倦怠感が出現したが10日ほどで改善した。抗がん薬終了後、ヒューバー針の自己抜針指導は、家族が来院できずAさん一人で受けることになった。抜針手技は、看護師の見守りの下なんとか行うことはできたが、「お父さんのこともあるし、誰も見てくれる人がいないから心配だわ」との発言があった。今後は外来で継続して治療を行うため、高齢の夫と二人暮らしであり、退院後は訪問看護を依頼することになった。そのため、退院前に訪問看護師と退院前カンファレンスを行ったのち退院することになった。  

 

            ***

 

 事例を読むと、病棟看護師と訪問看護師のみで問題ないかのように思えるかもしれません。また、CVポートに関しては在宅でも普及しているため、知らない人はいないのではと感じるかもしれません。  

 しかし、訪問看護師全てがIVRに精通しているわけではありません。CVポートの穿刺や抜針手技については理解できていても、CVポートの構造や挿入経路、合併症などを理解していなければ異常の早期発見ができません。  

 ここでIVR担当看護師の出番です。退院前カンファレンスに病棟看護師と共に参加しCVポートの構造や合併症(フィブリンシース・カテーテルのキンクなど)について説明することにより、訪問した際に確認してもらうポイントをより明確化できます。また、訪問看護師さんを対象に院内で勉強会を開催するのもいいかもしれません。  

 突然、こんなこと言われても無理だと思うかもしれません。でも、地域との連携は今後さらに重要になっていきます。IVR室にいるから関係ないではなく、これを機会にこんなことできるかも……と、自分たちができることはないか、ぜひ考える機会としてみませんか。そうすることで、IVRを受ける患者さんへの看護がつながり、より良い看護の提供となるのではないでしょうか。 

(IVR看護研究会 浅井望美)

屈曲、ねじれ 

 

 

 

[参考文献]

1)中原淳:<聞き手>佐藤直子・小川綾乃:おとなの学びへの招待 Part 1 インタビュー 中原先生、訪問看護師が学ぶにはどうしたらいいですか? 現場の学びの悩みに答えるQ&A.訪問看護と介護,241):8-172019

2)宇都宮宏子:これからの入退院支援・在宅移行支援「ケアプロセスマネジメント」と「意思決定支援」の視点から.看護管理,2811):960-9642018

3) 宇都宮宏子:ケアプロセスマネジメントを「退院支援の3段階プロセス」から考える. 看護管理,28 11):966-9712018

4)坂上祐樹:救急医療と在宅医療の連携の現状と課題.看護管理,27 10 : 796-7992017 

5)土倉万代:急性期病院の看護師が本来の役割を果たすために.看護管理, 27 10 : 815-8192017

6)奥田悦子・加藤恵:地域包括ケアシステムにおける高度急性期病院の役割.看護管理,27 10 : 820-8242017

7)厚生労働省保健局医療課:平成30年度診療報酬改定の概要 医科2018

 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000198532.pdf

2019.05.05アクセス]

 

  

IVR看護ナビゲーション イメージ

IVR看護ナビゲーション

IVRに携わる看護師向けの実践的な書物がほとんどない中で、各施設では独自のマニュアルを作って看護にあたっている。その現状を打破するために編集された本書は、医師のIVR手技、看護師のケアが系統立てて解説されている。2007年には「日本IVR学会認定IVR看護師制度」も発足し、ますますIVR看護が期待される中、時宜にかなった実践書。

詳細はこちら

このページのトップへ