かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2018.10.23 update.
2000年に発足し、安全安楽かつ効果的に患者がIVRを受けられるようにIVR看護のあり方を検討する場です。放射線科における看護の臨床実践能力を高めるため専門知識や技術の習得、研鑽をめざし、チーム医療における看護師の役割を追究し、また、IVR看護師の専門性を確立するため、継続して学習する場、人的交流の場を提供することを目的としています。
発足間もなくから開催している研究会(セミナー)は、3月16日に第19回を迎えました。記念すべき第20回は、2020年9月12日に開催予定です!
公式webサイト:http://www.ivr-nurse.jp/
Face book @ivrnurse2016
今回は、「学習の優位感覚」という考えを使ってオリエンテーションについて振り返って見ましょう。
人には五感(視覚・聴覚・触覚・臭覚・味覚)があり、外界からの物理的刺激を目、鼻、耳といった感覚器官を働かせて認知しています。
ここで、視覚(Visual)、聴覚(Auditory)、触覚(体感覚、Kinesthetic)、嗅覚(Olfactory)、味覚(Gatatory)の頭文字をとった、VAK理論(VAKモデル、表1)1)を紹介します。
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VAK理論とは、五感を脳の用途別に分類する手法です。この手法は、人のコミュニケーションはすべて五感(知覚)を通じてやりとりしていて、取り込んだ情報 → 考えること → 伝える情報はすべて五感に分類できるのではないかという発想からできた理論です。
そして人には、右利き・左利きという利き腕があるように、五感にもそれぞれ得意とする感覚「利き感覚」があるということです。聴覚の優れた人、視覚の優れた人、言語感覚が優れている人、体を動かして理解する感覚が優れている人などです。これは、単に「よく聞こえる」「よく見ている」「難しい言葉が好き」「体を動かすのが好き」ということではなく、耳を使って情報を整理し理解するのが得意であったり、目から入ってきた情報を整理し、理解するのが得意であったり、思考を通して物事や情報を整理する、体験を通して物事や情報を整理するのが得意であるということを示しています。
それとは反対に、不得意とする感覚もあるということを忘れてはいけません。そして、この感覚たちはオーバーラップしているところがあるため、誰もがこのタイプと決めつけるものでもありません。
学習方法も同様で、得意な感覚を生かして学習することを学習の優位感覚と言います。教える側も、教わる側も優位感覚を把握したうえで学習方法を選択することができたら、学習態度に関する誤解を防ぐことができ、学習効果を上げることにつながるかもしれません。
それでは、VAK理論をふまえたうえで学習の優位感覚について説明します。優位感覚はその特徴によって、視覚・聴覚・運動感覚の3つに分類されます。ここに加え、Auditory digital(言葉や概念で考えること)すなわち聴覚言語という概念が加わり4つに分類されます(表2)。
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1人ひとりに合ったオリエンテーションを
では、N看護師の行ったオリエンテーションについて振り返ってみましょう。
メモを取らない〇子さんは何が優位感覚なのでしょうか? この状況下では、聴覚が優位だと思われます。聴覚優位の方は、メモをあまり取らなくても理解ができるため、する必要がない、習慣がないという場合があります。
〇子さんの場合、メモをとってはいませんでしたが、オリエンテーション中の指導者の言葉から、情報を整理し理解するタイプであるといえます。そのため、初めて入退室を任せる時、先輩のN看護師はとても不安でした。しかし、実際に任せてみるとNさんが説明したことはしっかりとできていました。このようなタイプの場合、「メモを何で取らないの? やる気がないんじゃない?」という先輩がよくいますが、こうした叱責は必要ありません。やる気がないこともあるかもしれませんが、頭ごなしに「メモを取らない」=「やる気がない」と決めつけるのは危険です。結論からはっきり、わかりやすく伝えたり、根拠を言葉で説明してあげると理解しやすいかもしれません。
では、〇男くんの場合はどうでしょうか?
〇男くんはこまめにメモをとっていました。このことから、視覚優位のタイプであると考えられます。このタイプでは、文章で読んだり、指導者の言葉から理解しようとしても、頭に入らず、理解が難しい場合があります。
そのため、メモを取るだけではなかなか情報が整理されていませんでした。そして口頭で説明された情報についても整理することは苦手なようです。指導者の手技を見ることで情報が整理されイメージがつくため、見せながらオリエンテーションをするとよいかもしれません。目で見た情報を整理することが得意なので、先輩の動きを見ること、メモをノートにまとめること、イラストや図式化してイメージすることが理解につながるようです。例えば、同じ手技であっても何回か見学をさせたり、失敗をしたらもう一度みてもらう、IVR場面の動画で予習・復習するなどすると学習内容が定着するかもしれません。
いかがでしたか?
今回は優位感覚を用いて考えてみましたが、この理論1つでオリエンテーションが巧くいくわけではありません。プライベートでは視覚優位だけど、仕事では聴覚優位ということもあります。VAK理論は、あくまで一側面においての優位感覚を表すものなので、「その人そのもの」ではないということを忘れてはいけません。看護と同じく、1人ひとりに合ったオリエンテーションを考えることが大切ですね。
あなたの優位感覚は、どれでしたか?
(IVR看護研究会 中谷春美)
IVRに携わる看護師向けの実践的な書物がほとんどない中で、各施設では独自のマニュアルを作って看護にあたっている。その現状を打破するために編集された本書は、医師のIVR手技、看護師のケアが系統立てて解説されている。2007年には「日本IVR学会認定IVR看護師制度」も発足し、ますますIVR看護が期待される中、時宜にかなった実践書。