かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2016.7.15 update.
1962年東大阪市生まれ。1986年奈良県立医科大学卒業,産婦人科医局入局,1989年京都大学ウイルス研究所で発癌遺伝子の分子生物学的研究に携わる傍ら,週刊ヤングジャンプ増刊号にSF短編「遠い手紙」を発表しプロデビュー,以後数多くの新人賞に入賞。医師として臨床医学に携わりながら漫画家・イラストレーターとして医学書・看護学書を中心に活躍。1995年医学博士,1999年大和成和病院婦人科部長,2006年いばらきレディースクリニック開設。週刊『日本医事新報』に「がんばれ!猫山先生」 連載中。テレビドラマ化された人気コミック『Dr.コトー診療所』などの医学監修者としても知られる。著書に『まんが医学の歴史』,『ナイチンゲール伝 図説看護覚え書とともに』,『学研まんが 医学のひみつ』,『研修医山田(じゃまだ)君トリロジー』,『発見!しごと偉人伝 医師という生き方』,『患者さんゴメンナサイ』等多数
開業医 兼 漫画家 茨木 保さんを招き、学生が食いつく保健医療論をプロデュースされる看護教員さんあらわる!
そんな耳よりな話が編集部に届いた6月、板橋中央看護専門学校でのその授業を取材させていただきました。午後イチの睡魔に堪え、歴史上で時にかがやき、時に失意にくれた人びとのものがたりに熱心に耳を傾けた学生さんたちの真摯な姿勢が、とても印象的でした。その感想は本記事の後半で紹介します。*講義の実際はここでは触れません。 『まんが 医学の歴史』ご参照&ご想像を…
打合せのようす。左がしかけ人の上坂千代美副校長(教務課長兼任)。右が茨木氏
" 本校の科目である「保健医療論」では、例年、学生に近年の保健医療に関することで学生が疑問に思っているテーマを各グループで調査し、全体で発表するというものでした。それを何年か実施するなかで、現在の保健医療(制度)は、過去からの歴史があって今に至っているということを学生は学習していないことに気がつきました。
過去のカリキュラムでは、「医学概論」という科目があったのですが、現行の(新)カリキュラムでは存在しなくなってしまいました。そこで、「看護概論」で看護の歴史を学ぶときに医学の歴史も少し学習するようにしていますが、なかなかこの歴史をわかりやすく講義してもらえる講師がいないと思っていました。
そのようななか色々な資料を探していたときに、月刊『看護教育』で茨木先生の描かれた 『まんが 医学の歴史』についての記事をみつけました。その内容を読んでみると、今まで歴史嫌いできた私にも面白く、なるほど、このような過去があったのかと引き込まれていきました。なんと本校のサブテキストとして採用している『ナイチンゲール伝 図説看護覚え書とともに』の著者であることもつながって、看護のことも理解のある先生ですから、なおのことぜひお願いしたいということで・・・(といってご多忙でしょうから半ばあきらめつつ)・・・直接依頼をしたのです。” (上坂先生)
そんな上坂先生の熱意に、茨木医師はあっさり快諾。「ボクの休診日にスケジュールを合わせていただけましたし。(今後他の学校さんからもリクエストがあった際は?)都合が合いましたら、よろしくお願いします」と、いつもの笑顔でした。あちらこちらの出版社の締切は・・・
授業後の感想をうかがったところ、
「 ボクが『医学史』に興味を持ったのも、学生時代に聴いたポリクリ(病院実習) 講義がきっかけでした。今回も、看護学生さんに少しでも同じようにちょっとしたきっかけになったら、うれしいです。・・・・・・ところどころ、ギャグがスベったのが心残りですが(苦笑)。
歴史を知ることは、過去を学ぶことだけではなく、未来を考えることでもあります。医療の分野には日々新しい技術、知識が導入されていますが、『新しいものにどう対処すればいいのか』、『何を変え、何を変えずにおくのがよいのか』を、先人たちの苦労から、皆さんそれぞれで考えてほしい。それがボクからの(講義ではあえて触れなかった)、宿題でした」
さて、かんじんの学生さんたちの感想は・・・
・定説だけではない見方の重要性を感じ、あらゆる側面から医療をとらえて考えていくことが大事だと思った。
・茨木先生の言葉「科学が進んでも、倫理観を持つ」。とても印象深かった。
・(不遇の死を遂げる先人がいたこと)そこに関しては、現在の人たちとあまり変化のないことだなと感じました。
・医療保険制度があることは知っていたが、ドイツの疾病保険法をモデルとしてつくられたことを学んだ。
・現代の医療は、多くの人の人生をかけた研究と実験、そして多くの患者の犠牲の上に成り立ってきたものなのだと改めて実感した。
・マンガを使った授業はわかりやすかった。
・ゼンメルワイスの歴史が授業の中で一番印象に残った。
・どの時代も「誰かを助けたい」という思いから、多くの人たちが動いているのだと思い、私もそんな1人になりたいと感じた。
・現代医療は命を創れる時代にまでなってしまったことに驚きましたし、少し怖いと思いました。
・高校の生物の授業でも教えてもらったことはあったが、こんなにエピソードとしてすんなり入ってきたことに、自分で驚きました。
・人間くさい話も多く、ノーベル賞受賞の時の写真の話には納得した。
・いちばん驚いたのは世界各国の医療制度(の違い)である。
・命の重みや命に向き合う姿勢が医療の発展につながるための本質であり、いつの時代もそれは変わりないと感じた。
・・・・
90分2コマ通しで3時間続いた濃密なライブ講義がどんなものだったか、すこし伝わるでしょうか。
なお授業設計者・プロデューサーの上坂先生が、茨木ワールドの作中でもっとも心に残った人物は、「ガレノス」だったそうです。
まんがでみるわかりやすい医学の通史、堂々の刊行――医学の歴史は、人類の誕生とともにはじまり、いつの世もらせん状に続いてきた泣き笑いの人間ドラマがあった。世界初! 臨床医であり漫画家である著者による、まんがでみるわかりやすい医学の通史、堂々の刊行。古代の神々からクローン羊のドリー、山中伸弥教授のiPS細胞作成まで、『看護学雑誌』2003?2005年の連載に大幅描き下ろしを加えた。各界の支持を得た不動のロングセラーに。
* 茨木保公式サイト・医学を描く http://www007.upp.so-net.ne.jp/tibaraki/
* 即日完売記念!『まんが 医学の歴史』誕生秘話 http://honz.jp/articles/-/40480