(2)英国のホスピス「ドロシーハウス」の活動の実際-1

(2)英国のホスピス「ドロシーハウス」の活動の実際-1

2015.6.29 update.

名古屋大学大学院医学系研究科看護学専攻 
がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン特任准教授 阿部まゆみ

 

シリーズ第2回は,英国の数あるホスピスの中でもその質の高いケアに対する評価を得ている「ドロシーハウス」の活動の実際を紹介します。

 

■ドロシーハウスにおける地域包括緩和ケアの取り組み

英国のホスピス「ドロシーハウス」はロンドンから西に150km,サマセットにある歴史的にも有名な街バース(温泉の語源になった町)からほど近い,田園風景が広がる丘陵の中にあります。わが国の病院死が在宅死を上回った1976年に産声をあげました。広大な庭園の築かれた建物はずっしりと古い石造りで,周辺の美しい景観ととても調和しています。


ドロシーハウスはPrue Dufour女史が6週間の聖クリストファーホスピス研修後に,終末期を病院ではなく住み慣れた地域で過ごせるよう,自宅を利用して90代の女性を看取ったことが創設のきっかけになっています。英国で女性の名前として親しまれている「ドロシー」という名称には,神様の贈り物という意味も込められています。


その後,基金を設立し,3年後に6床のホスピス病棟から活動をスタートし,現在は10床で運営しています。

 

1990年以降,英国では,増大するケア費用の有効かつ適切な配分を図るため,地域病院とホスピス,NHSに位置づけられている地域保健局が管轄するコミュニティケアとの協力で,地域包括ケアシステムが定着しました。

 

そのような中,ドロシーハウスでは,12病院と地域のつながりを保ち地域包括緩和ケアを展開しています。およそ50万人が住む地域を担当しており,年間1500人以上の新規依頼があります。

 

ホスピス病棟には症状コントロールを中心に年間250人以上が入院しており,平均在院日数は約9日です。入院患者の3分の2が退院され,3分の1が死亡しています。終末期医療としての入院期間は平均約2週間となっています。

 

入院患者の9割以上はがん患者で,残りの1割をALS等の神経難病や呼吸不全,AIDSなど生命を脅かす疾患の終末期患者が占めています。10床のうち1床は,レスパイト用として計画的に運用しています。

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■ドロシーハウスのデイケアプログラムの実際

前回,英国におけるデイホスピスの活動の概略を紹介しました。このデイホスピスとは,「専門的な知識と技術を持つスタッフによる呼吸困難感や倦怠感などの身体面,再発・転移に伴う不安や孤立感など心理面の多様なニーズに対応する医療サービス」のことです。英国においてデイホスピスは “a day out for patients and a day off for the care’s ”(患者は1日出かけ,介護者には休日を)を合言葉に急速に増加しました。


ドロシーハウスにおけるデイケアプログラムにおいては,①社会との交流や関わりを深め互いにサポートすること,②創造的で健康維持に役立つ活動への支援,③身体的なモニタリングと継続ケア,④家族のレスパイトケア(一時入院による休息),という4つの活動目的が明記されています。                

 

デイケア利用にあたっては,スタッフが利用者宅を訪問しニードを評価し,ケアのプランを立て同意を得ることからスタートします。平日の10時30分~14時30分まで毎日,デイケアプログラムが開催されています。スタッフは看護師2名とボランティア約250名。1回の参加は10名前後です。自立した移動が困難な利用者は,ボランティアドライバーが送迎します。

 

毎日のプログラムは,その日のデイケア参加者の体調の変化や困りごとなどを確認し,どのように過ごすかを一緒に考えることから始まります。プログラムは「症状マネジメント」「創作活動などの社会的ケア」「リハビリ」「リンパドレナージ」など多彩です。

 

デイケア利用代はなく,寄付や販売店(Dorothy House Shop)の運営などで賄われています。スタッフは地域で活動を周知してもらうためにイベントの開催,ニュースレターやホームページで活動を紹介するほか,活動の質評価や収支など情報公開に積極的に取り組んでいます1) 。このような活動は地域に開かれた施設としての存在をアピールするほか,地域に緩和ケアを根づかせるためにも,不可欠な要素となっています。

 

■ドロシーハウス における家族ケア

ドロシーハウスでは在宅療養支援の一環として,利用者の家族に寄り添う看護ケアも提供しています。家族の心身疲労に対してレスパイトケアを提供する,家事に対応できるよう支援する,といった活動です。


また,幼い子どもを持つ親が利用者の場合には,子どもが“ひみつ”に押しつぶされないよう,お絵かきや砂遊びなど親子がふれあうプログラムを提供し,親子の絆を深める,感謝の気持ちや安心感を育む時間を提供しています。

次回はドロシーハウスの医療者の活動の実際から,現在わが国で課題となっている在宅療養中のがん患者への緩和ケア提供について考察します。


◎引用・参考文献
1)Dorothy House Hospice Care Annual Review 2013/2014.
http://www.dorothyhouse.co.uk/annual-review(last accessed 2015/06/01)
2)Ann Couldrick:When your mum or dad has cancer. Sobell Publications, 1991. 
 

第153回国治研セミナー「地域包括緩和ケアを成功させるエッセンスを学ぶ」のお知らせ
 
記事で紹介されている「ドロシーハウス」の医師と看護師が東京と大阪にやってきます! 英国バース郊外で “医療・看護・介護をシームレスにつなぐ”地域包括緩和ケアを展開している実践者たちです。
日々の実践の中から抽出された地域包括緩和ケアのエッセンスを聞く、またとないチャンスです。ぜひご参加ください。
 
【東京】2015年9月19日(土)20日(日)日本教育会館 
【大阪】2015年9月22日(火・祝)23日(水・祝)新梅田研修センター
【講師】
Tricia Needham (トリシア ニードハム)先生
(ドロシーハウス ホスピス 医師)
Wayne de Leeuw (ウェイン デュ リュウ)先生
(ドロシーハウス ホスピス 看護師)
コーディネーター:阿部まゆみ 先生
(名古屋大学大学院医学系研究科看護学専攻・がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン特任准教授/看護師)
 
 
お申し込み・プログラム詳細はこちらから。

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