maggie's tokyo リアルストーリー (1)

maggie's tokyo リアルストーリー (1)

2014.12.15 update.

マギーズキャンサーケアリングセンターとは

“がん患者と支える人々が自分の力を取り戻すための居場所”が英国のマギーズキャンサーケアリングセンターです。造園家であったマギー・ケズウィック・ジェンクス氏らが、がんと向き合い、対話ができて、医療の専門家もいる場所をつくろうと、入院していたエディンバラの病院敷地内につくった素敵な空間が始まりです。
建築とランドスケープが一体化したやすらげる空間が患者の不安を軽減するという考え方に基づき、フランク・ゲーリー氏や黒川紀章氏など著名な建築家がボランティアで設計した個性的かつ居心地のよいセンターが現在、英国内に15か所設立されています。
現在、このマギーズセンターを東京につくろう!というmaggie’s tokyo projectが進行中です。現在ものすごい勢いで進んでいるprojectのリアルストーリーを、すこしゆっくりご紹介していきます。

【文と写真】神保康子(医療ライター)

 

2014年春、桜の花びらが緑の葉っぱと交代した頃、すてきな出会いがありました。

 

1人の女性が「暮らしの保健室」室長の秋山正子さんのもとを訪れ、こう言ったのです。「マギーズセンターを日本につくりたいんです」。

 

お互いにその存在を知らず、別々に走っていた2つの線がクロスした瞬間でした。ずっとあとになって振り返ったとき、もしかしたらとても重要な出来事に位置づけられているかもしれません。

 

いまからこの場をお借りしてご紹介していくのは、そこから加速して走り始めたmaggie’s tokyo projectのリアルストーリーです。現在ものすごい勢いで進んでいるprojectですが、すこしゆっくりご紹介していけたらと思います。

 

■秋山正子さんのこれまで
1)訪問看護へ導いてくれた身近な人たち

 

maggie’s って? という前に、“登場人物その1”の、秋山正子さんについて少しご紹介しましょう。

 

なぜか、がんに関わりの深い人生を歩んで来た彼女でした。

 

秋田県に生まれ育ち、高校時代に末期がんの父親を自宅で看取る経験をします。その後、看護の道を志し上京。看護大学を出て助産師として働いたのち、看護教員をしていた頃、今度は当時41歳だったお姉さんの在宅ホスピスケアに携わることになります。家で最期の日々を過ごした実の姉の姿に、在宅ケアの力を感じ取ったと言います。

 

「自宅で療養したいという患者さんが、もっと生活の場で過ごすことができたら」と、1991年から淀川キリスト教病院で訪問看護研修を受け、非常勤保健師として訪問看護の活動を始めました。

 

まだまだ日本では、看護師が地域に出始めたばかりの頃、「“看護婦さん”が家に来てくれるの!? ほんと?」という時代でした。

 

2)もっと気軽に相談ができたら

1992年、東京に戻った彼女は、新宿区市ケ谷で訪問看護を開始します。

 

それからの、およそ20年にわたる実践のなかで、さまざまな声を聴いてきました。

 

「がんを患いながらの在宅での過ごし方について知りたかったけれど、どこに聴けばいいのか分からなかった」
「今まで誰にも相談したことがなかった。こんなことまで聴いてもらっていいの?」
「介護保険の申請をするように言われたけれど、寝たきりになりたくないと思って、申請に行かなかった」
「病気について家族それぞれが違う捉え方をしていたから、きちんと話し合いたかったんだよね」
「在宅療養のことを気軽に相談できる場所があったらいいのに」

 

そうです。日本の医療が飛躍的に進歩したぶん、がんや病気の治療を続けながら“生活”をしていく期間がのびていたのです。

 

それに対し、日本のがん相談支援も「がん対策基本法」のもと、がん拠点病院には相談支援の窓口が開かれることが義務づけられたり、都道府県では「在宅がん緩和ケア支援センター」の設置を義務づけられたりと、急ピッチで整備が進められてきました。

 

でも、訪問看護の現場で聞こえてくる声は、まだそれが十分というわけではないことを物語っています。

 

「がんや病気の人たちがもっと気軽に、生活の中でのちょっとした困りごとを相談できる場があれば」
そんな想いを胸に、訪問看護に回る日々が続きました。

 

3)ひとつめの出会い

 

2008年11月、秋山さんは東京で開かれた国際がん看護セミナーにスピーカーとして呼ばれます。そこでは、イギリス、カナダ、スペインからのゲストスピーカーによる各国での地域緩和ケアの報告がありました。
イギリスからの報告を務めたのが、Maggie’s Edinburgh (マギーズ・エジンバラ)センター長のアンドリュー・アンダーソン看護師でした。

 

Maggie’s Cancer Caring Centersは、当時すでに英国で複数か所展開されていた、がん専門の相談支援センターです。がん専門病院のそばにありながら独立した場所として、がんに詳しい専門看護師によって運営されています。

 

がん患者や家族・友人、医療者など、がんに関わる人たちが気軽に立寄り必要に応じた支援が受けられ、ふたたび自分の力を取り戻して、治療に向かっていける“居場所”のようなところであり、その建物は、自然光が差し込む、そこにいるだけでくつろいだ気分になれる空間である点が、際立った特徴でもあります。
しかも予約なしに無料で利用でき、運営費用は全て寄付によってまかなわれているのです。

 

アンドリューさんの話の中で、秋山さんが特に関心を持ったことは、「相談者自身が自分自身でものを考えられる」ようにサポートすることがマギーズセンターの方針であり、「その力を取り戻せるような支援」をしていると強調されていた点でした。

 

驚きとともに共感を覚え、「これは日本にもすぐにでも欲しい相談支援のあり方だ」と、聞き入りました。

 

そして、3か月後の2009年2月。秋山さんとその仲間たちは、イギリスへと向かったのでした。

 

(つづく)

 

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◉最初につくられた、マギーズ・エジンバラ。1996年ウェスタン総合病院の敷地内に開設。撮影:藤井浩司(ナカサ&パートナーズ)

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◉マギーズ・エジンバラの内部。自然光が差し込むゆったりとした空間。撮影:藤井浩司(ナカサ&パートナーズ) 

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◉マギーズ・エジンバラ センター長のアンドリュー・アンダーソンさん(左)と秋山正子さん(2014年11月17日筆者撮影)

 

【maggie's tokyo関連情報】

◉ maggie's tokyo project Facebookページ

https://ja-jp.facebook.com/maggiestokyo

◉クラウドファンディングREADEFOR?を通じて寄附を呼びかけ、11月22日に目標額の2倍にあたる2200万円が集まった。

https://readyfor.jp/projects/maggiestokyo

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コメント

記事を拝見しました。

毎日退院支援調整でがん患者の退院支援で悩みます。

在宅ホスピス・ホスピス転院に関して
がん治療が進歩したぶん、がんや病気の治療を続けながら“生活”をしていく期間がのびて、患者さんはがんと闘い続けています。
いざホスピス転院しても転院先でホスピスケアを受けて本人にとって良い時間を持つことも無く看取りのケースが多い。
また治療の限界で在宅緩和ケアに紹介される時期も遅くて、在宅主治医・在宅を支える関係者と信頼関係すら持てない状況で看取りとなることも多い。
ギアチェンジの時期が問題と感じる。

入院中から医療者から、患者・家族で治療の選択や残された時間をどのように過ごしたいか、どこでどのように生活したいか等考えられるようにサポートする支援が必要。

がん相談支援センターで病院の相談支援の窓口になっています。さらに個別性に合った支援の充実が必要と考えています。

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