maggie's tokyo リアルストーリー (5)

maggie's tokyo リアルストーリー (5)

2015.8.23 update.

マギーズキャンサーケアリングセンターを東京につくろう!ーーマギーズキャンサーケアリングセンターとは

“がん患者と支える人々が自分の力を取り戻すための居場所”が英国のマギーズキャンサーケアリングセンターです。造園家であったマギー・ケズウィック・ジェンクス氏らが、がんと向き合い、対話ができて、医療の専門家もいる場所をつくろうと、入院していたエディンバラの病院敷地内につくった素敵な空間が始まりです。
建築とランドスケープが一体化したやすらげる空間が患者の不安を軽減するという考え方に基づき、フランク・ゲーリー氏や黒川紀章氏など著名な建築家がボランティアで設計した個性的かつ居心地のよいセンターが現在、英国内に15か所設立されています。
現在、このマギーズセンターを東京につくろう!という活動が進行中です。ものすごい勢いで進んでいるこの活動にまつわるリアルストーリーを、本シリーズではすこしゆっくりご紹介していきます。
いくつもの出会いが重なって、マギーズ東京へと進んできた、その長かったとも思える準備期間。今回は、鈴木美穂さんとマギーズセンターの出会い、そして美穂さんと秋山正子さんの最初の出会いの場面をお伝えします。

【文・写真】神保康子(医療ライター)

 

 

(前回はこちら)

 

前回は,マギーズセンターをモデルにした「暮らしの保健室」の誕生とその後についてご紹介しました。

「あのとき思い切って『場所』をつくってよかった」と秋山正子さんは言います。

 

その理由は2つ。

1つ目は,空間の持つ力は体験してみないと分からないこと。いくら説明してもピンと来なかった人が,暮らしの保健室の雰囲気に包まれて初めて,その空間の持つ力を感じとる様子を,秋山さんは何度も目にしていました。

そして何より,「誰でも来られる場所があったからこそ,美穂さんが訪ねてきてくれたのよ」と振り返ります。

 

今回は,鈴木美穂さんと秋山正子さんの出会いまでのストーリーです。

 

■鈴木美穂さん,マギーズセンターを知る

 

1)おめでとう!とハグされた

 

テレビ局の仕事に復帰後,鈴木さんは,「がんに関係することで社会の役に立つことが,自分の使命」と感じ,取材活動や,若年性がん患者団体「STAND UP!!」の活動に,忙しい毎日を送っていました。

 

そんな彼女のもとに,思いがけない話が。がん患者を支援する人たちが集まる国際会議IEEPO(International Experience Exchange for Patient Organization)に,「STAND UP!!」の創設者として参加をしてみないかというものでした。

 

2013年3月,鈴木さんは,スイスのチューリヒで開催されたIEEPOの会場で,忘れられない体験をしました。

「会場で出会った人たちに,私ががんの経験をしたことを話すと,“Congratulations”(おめでとう)と言ってくれたんです」。

 

次々に「おめでとう」とハグをされたことで,「がんの経験と,私自身を大切にしてくれているような気がして,とても温かい気持ちになりました」と,鈴木さんは言います。

 

2)「Cue!」を立ち上げる

 

日本では,がんになってもそのことを言えない人が多いのが現状です。「がんになったことを後ろめたいことではないと思える文化を」と,鈴木さんは帰国後まもなく,新たな活動を始めます。

 

がん患者向けに,ヨガなどのワークショップを行う団体を立ち上げ,その名前を「Cue!」としました。

“Congratulations on your Unique Experience(あなたの特別な体験に,おめでとう!)”の頭文字をとったものです。

 

映像の撮影現場では「動き出す合図」の意味で,「キュー出し」と言います。鈴木さんにぴったりのこの名称は,後に「マギーズ東京」の仲間にもなる友人が考えてくれました。

他にも多くの人の応援で,ヨガや書道,料理教室など,Cue!の活動は広がっていきます。

 

その一方で鈴木さんは,ワークショップ以外にサロンとしても使えるような活動場所を探していました。

「もうこれは一軒家をローンで買って,2階に住んで1階を開放するしかないと思って,休みのたびに,母と不動産屋さんをまわって物件探しをしていたんです」。

 

そんな中,2度目に参加した2014年のIEEPOでのこと。「Cue!の活動のための場所を探している」という話を聞いた複数の参加者から,こう言われます。「『マギーズセンター』を見に行ったら?」

 

3)秋山正子さんとの出会い

 

「マギーズセンターって?」さっそく情報収集を開始した鈴木さん。

 

インターネットで検索をし,英国に15か所展開されているマギーズセンターの建築写真と説明を目にし,「まさに自分が苦しかったときに欲しかったものだ」と直感したと言います。

 

そして帰国後,日本語で「マギーズセンター」と検索すると,必ず出てくる名前がありました。秋山正子さんです。

 

「出てくる文献のほぼすべてが,秋山さんによるもので,日本でマギーズセンターをつくるなら,キーパーソンは秋山さんという人に違いないと思って」,また,素早く行動をおこしました。

 

IEEPOの会議に2度目の参加をしたのが2014年3月,そして「暮らしの保健室」に,秋山さんに会いに行ったのが翌月,4月のことでした。

まずアポイント。電話をかけ「秋山さんいらっしゃいますか?」というと,電話に出た女性が「私です」と答えました。

 

この時,実は「取材をしたい」とのアプローチでした。電話を受けた秋山さんは,はっきりと取材の意図がつかめないままに,でも,いつもそうしているように,まずは暮らしの保健室に来てもらうことにしたのでした。

 

(つづく)

 

(写真)
がん患者を支援する人たちが集まる国際会議IEEPOにて。左が鈴木美穂さん(写真提供:鈴木美穂さん)。

写真1.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(写真)

「Cue!」のヨガクラスYoga as a “cancer gift”の様子(写真提供:鈴木美穂さん)。

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http://maggiestokyo.org

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