(4)ナースが見たドロシーハウス・1――最期を住み慣れた地域で迎えるための地域の医療者が連携した支援体制

(4)ナースが見たドロシーハウス・1――最期を住み慣れた地域で迎えるための地域の医療者が連携した支援体制

2015.8.05 update.

 愛知県がんセンター愛知病院

看護部長/認定看護管理者 青山良枝

 

 

ロシーハウスの取り組みも参考に開設した「地域緩和ケアセンター」

 

 当院は,病床数276床で緩和ケア病床20床を持つ中規模の病院ですが,2014年7月に地域の緩和ケアの拠点をめざし木造平屋の「地域緩和ケアセンター」を開設しました(写真)。このセンターは,「緩和ケア病棟」「緩和ケア外来」「緩和デイケア」「地域がんサポートチーム」の4部門を統括し,「専門的緩和ケアの提供」「緩和デイケアの運営」「住民への情報発信」「専門職の教育研修」「地域連携・在宅支援」の5つの役割を担っています。

 

春愛知がんセンター.jpgのサムネール画像

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地域緩和ケアセンターの開設にあたっては,私を含む職員が事前にホスピスの先進地域である英国での研修に参加し,特に本シリーズで紹介しているドロシーハウスの取り組みを参考にさせていただき,温もりと優しさを感じさせる,明るく温かい雰囲気の建物となるよう検討して完成させることができました。

 

筆者が参加した英国での視察研修

 

 私は,2011年11月30日~12月8日まで,「包括的緩和ケアシステムを学ぶ」をテーマとする9日間の英国緩和ケア研修に参加しました。私にとっては生まれて初めての海外旅行でしたので,パスポートの準備から始まりました。

当院は2008年11月から,地域緩和ケアセンターの前身とも言える「緩和デイケア」を試行していますが,この開始時から現在もご指導をいただいている阿部まゆみ先生(名古屋大学大学院特任准教授)が同行してくださいました。

 参加者は,北は北海道から南は広島県まで総勢23名。職業も看護師17名,医師3名,薬剤師1名,管理栄養士1名,医療ソーシャルワーカー1名と,多職種が参加しました。包括的な緩和ケアを推進する上でチーム医療は必須と感じていたので,研修参加者の皆さんの熱意に感心するとともに刺激を受けました。

 私は,英国研修の中でもドロシーハウスにおいて,当院の将来構想として提示されていた緩和ケアセンター(現・地域緩和ケアセンター)設立に向けて,利用していただく患者さんとご家族,働く職員にとって機能的で使いやすい施設について,学びを深めたいと考えていました。また,すでに本格的に稼働していた「緩和デイケア・乳腺サロン」の運営においても,看護管理者としてすべきことは何かをあらためて考えてみたいと思っていました。

 

ドロシーハウスの緩和ケア――終末期の患者には「コミュニティでのケア」が必要

 

 英国研修の3日目,ロンドンから西に150㎞ほどの場所にあるドロシーハウスに向かいました(写真)。バスの車中から見る風景は,なだらかな丘陵地と穏やかな田園風景で心が癒されました。ドロシーハウスに到着すると,ちょうどクリスマスチャリティーのシーズンで,病院や緩和デイケアのラウンジはクリスマス用に素敵に飾られ,建物の外観や間取りも随所に優しさや温もりを感じるものでした。

 

車窓風景.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ドロシーハウスでは,終末期の患者に対しては病院内だけでなく生活するコミュニティでのケアが必要との理念のもと,1976年に基金を設立し,訪問看護による在宅支援から始められたと伺い,30年近く前から,在宅での医療が推進されていたことに驚きました。また,がん患者は9割で,他に一般疾患患者(神経難病・呼吸不全・心不全等)への終末期サービスも提供され,地域に根ざした包括的緩和ケアの役割の重要性と多様性に感心しました。

 

地域で最期を迎えるためのドロシーハウスを基盤とした医療チーム体制

 

 ドロシーハウスは50万人の医療圏を担当し,ホスピス病棟は10床ですが,症状コントロールを中心として平均滞在日数は7日間と短く,その後在宅に戻り専門看護師が中心となり,GP(家庭医),理学療法士,牧師などと連携をとり通常に近い生活をボランティアの支援を受けながら在宅で療養します。特に,感心したことは施設の運営はNHS(国民保険サービス)と寄付・募金などで賄われ,終末期患者は無料で利用ができることでした。

 

ドロシーデイルーム.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 在宅では,がん看護の経験が豊富で判断力とアセスメント能力を兼ね備えたマクミランナース(がん専門の訪問看護師)が,調整役として週1度程度訪問し,必要な専門職などと連絡・相談を行います。マクミランナースは在宅医療を支えるキーマンと感じました。

 

 ドロシーハウスでは開設当時から,GPや地域訪問看護師らと連携や指導を進め関係を築き,現在の状況ができたともお聞きしました。また,遺族ケアとして死亡後の家族ケアも亡くなってから1~2週間と速やかに必要な支援が実施されており,多職種がチームで患者を支援し,情報を共有することで患者と家族は安心して在宅での生活ができる環境づくりがされていると感銘を受けました。 

 

今後の展望

 

 現在,当院が,地域緩緩和ケアセンターで実施している,緩和デイケアや乳腺サロン・地域がんサポートチームによる在宅への訪問診療は,患者・家族支援として重要なことであり,在宅で過ごされている患者さんとご家族の方々が,安心して過ごしていただくための環境づくりを推進していきたいと考えています。

 

 しかし,まだまだ緩和という言葉を聞きなれない患者さんやご家族の方々も多いのが実情です。さらに活用していただくために地域へ拡大し,入院から緩和デイケア,在宅訪問診療へと切れ目のない支援を,診療所・病院・訪問看護ステーションなどの専門職と連携を強化し,住み慣れた町で暮らすことができる地域包括ケアの実現を目指し,看護管理者として日々の積み重ねを大切に行動していきたいと思います。

 

《関連情報》
第153回国治研セミナー「地域包括緩和ケアを成功させるエッセンスを学ぶ」のお知らせ
 
記事で紹介されている「ドロシーハウス」の医師と看護師が東京にやってきます! 
英国バース郊外で “医療・看護・介護をシームレスにつなぐ”地域包括緩和ケアを展開している実践者たちです。
日々の実践の中から抽出された地域包括緩和ケアのエッセンスを聞く、またとないチャンスです。ぜひご参加ください。
 
【東京】2015年9月19日(土)20日(日)日本教育会館 
【講師】
Tricia Needham (トリシア ニードハム)先生
MD,BS,FRCP。ドロシーハウス ホスピス 医師。St. George’s Hospital Medical School を卒業。ロンドンSt. Joseph’s hospice で勤務後、1995年からドロシーハウスに医師として勤務。2011年にはドロシーハウスの医長となる。現在はホスピスやデイケアに関わり、急性期病院や在宅からの相談依頼にも出向いている。「痛みのケアは患者さんと共に」との言葉を大切にしている。
 
Wayne de Leeuw (ウェイン デュ リュウ)先生
緩和ケアCNS,MSc。ドロシーハウス ホスピス 看護師。ロンドンのChelsea & Westminster病院において外科系、がん領域で看護師として勤務、Oxford Brookes Universityでがん看護を学び、2003年に緩和ケアCNSとなる。2003年からドロシーハウスのコミュニティCNS、病棟CNSチームリーダー、2011年よりコミュニティ&アウトリーチチームリーダーとして活躍中。
 
コーディネーター:阿部まゆみ 先生
(名古屋大学大学院医学系研究科看護学専攻・がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン特任准教授/看護師)
 
お申し込み・プログラム詳細はこちらから。

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