かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2013.5.15 update.
『訪問看護と介護』2013年2月号から、作家の田口ランディさんの連載「地域のなかの看取り図」が始まりました。父母・義父母の死に、それぞれ「病院」「ホスピス」「在宅」で立ち合い看取ってきた田口さんは今、「老い」について、「死」について、そして「看取り」について何を感じているのか? 本誌掲載に1か月遅れて、かんかん!にも特別分載します。毎月第1-3水曜日にUP予定。いちはやく全部読みたい方はゼヒに本誌で!
→田口ランディさんについてはコチラ
→イラストレーターは安藤みちこさん、ブログも
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『毎日がアルツハイマー』の関口監督はTwitterもやっていて、日々の生活をつぶやいたりして外の世界に表現し続けています。これはもう表現者の性のようなものでしょう。何かおもしろいことを発見したら「誰かに伝えたい」のです。なぜそう思うのか、自分でもよくわかりません。表現したい……という欲求、これもまた人間がもっている独自の欲求。動物にはありません。
作家や映画監督、漫画家という人たちは、それがふつうの人よりもかなり強い。でも、この表現したい欲求は誰でももっています。子どもでも、お年寄りでも、お父さんでも、お母さんでも、人は自分を表現することがこのうえなく幸せなのです。そして、表現したものを誰かが見て「いいね!」と共感してもらえれば、さらに至福なのです。
子どもは、自由に自己表現します。でも、大人になるにつれ、だんだん「こんなことを言っても、わかってもらえないんじゃないか」「自分が創ったもの、考えたものなんて、とるに足らないんじゃないか」「くだらないんじゃないか」「つまらないんじゃないか」「受け入れてもらえなかったらどうしよう」「恥ずかしい」……、そういう気持ちがわいてきて、自由に自己表現ができなくなってしまいます。それはとても淋しいことなのです。
自己表現をうまくできない人は、他者の表現を受け入れられなかったりもします。まず自分が自由であることが、他者をも自由にしていくんですね。
子どもというのは、時として大人の素晴らしい教師です。たとえば、子どもの受け答えというのは実にいい。
わが家の義父は、趣味の俳句をつくっては短冊に書いて私たちに見せていました。その俳句は、お世辞にも上手とは言えないのです。私はいちおう文章のプロですから、見せられると絶句してしまいます。職業意識が出てしまうんです。それに対して、娘の受け答えはすばらしかった。
「へー! わー! おー!」
彼女は感嘆詞しか使いません。
「すごい!」「うわー!」「ぎゃー!」
これだけです。関口監督の映画を観ていたら、関口監督も感嘆詞しか言いません。
「おー! うおー! ぎゃー! すごっ!」
を、繰り返している。うちの娘と一緒だなあ、と感心しました。監督は子ども心を失っていないんですね。
あまり理屈っぽいことを言っても、お年寄りの機嫌を損ねてしまうことのほうが多いので、私はなるべく短い言葉で感動を伝えるだけにしています。そのほうがうまくコミュニケーションできるような気がしています。
義父は娘が「おー! すごっ!」と言うと、「えへへ……」と顔を崩してうれしそうにしていました。私もうなずき名人を目指してはいたのですが、修行が足りないものですから、気持ちがこもっていないのがときどき相手に伝わってしまいます。
「へー、はあ、ほー、ふーん」
これを、どう組み合わせて相づちを打つか、なかなか熟練が必要です。関口監督はこの相づちが名人の域に達しており、たいへん参考になりました。
いよいよ高まる在宅医療・地域ケアのニーズに応える、訪問看護・介護の質・量ともの向上を目指す月刊誌です。「特集」は現場のニーズが高いテーマを、日々の実践に役立つモノから経営的な視点まで。「巻頭インタビュー」「特別記事」では、広い視野・新たな視点を提供。「研究・調査/実践・事例報告」の他、現場発の声を多く掲載。職種の壁を越えた執筆陣で、“他職種連携”を育みます。楽しく役立つ「連載」も充実。