医療界初「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」

医療界初「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」

2013.3.26 update.

宇田川廣美 イメージ

宇田川廣美

東京警察病院看護専門学校卒業後、臨床看護、フリーナース、看護系人材紹介所勤務を経て、フリーライターに。医療・看護系雑誌を中心に執筆活動を行う。現在の関心事は、介護職の専門性と看護と介護の連携について。「看護と介護の強い連携で、日本の医療も社会も、きっと、ずっと良くなる!」と思っている。

「○○さんの状態は落ち着いたかな…?」、そんなことを思いながら、夜勤に向かう人も多いことでしょう。サーカディアンリズムに反して、しかも日中よりも少ない人数で当たる夜勤は、心身ともに負担の大きなものです。こうした夜勤・交代制勤務に対して、3月初旬、日本看護協会(以後、協会)からガイドラインが作成されました。


具体的な改善目標を提示した勤務編成の11基準

「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」(以後、ガイドライン)は、夜勤・交代制勤務が抱える課題、負担を軽減するための組織・個人における対策の提案、夜勤・交代制勤務に関連する規定や法令、から成り、組織として取り組むべき負担軽減策や、看護師が個人レベルで心がけるべき生活上の留意点などが具体的に紹介されています。

その中心となるものの一つに、夜勤・交代制勤務の「勤務編成の基準」11項目(表)があり、看護職能団体として具体的な改善目標を提示しています。こうした夜勤・交代勤務に関するガイドラインは医療界初。協会の常任理事である小川忍氏は、マスコミの取材に際して「四病院団体協議会には『一つでも、二つでも、できることから進めてほしい』と説明した。看護職だけに限らず、医師や薬剤師、介護職員など夜勤・交代勤務に従事する他職種も参考にしてもらいたい」と話していました。

 

表 夜勤・交代制勤務の勤務編成の基準

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離職率低下の背後にある夜勤やオンコールの負担

ガイドライン作成の公表と一緒に、協会は「2012 年病院における看護職員需給状況調査」の結果(速報)を公表しました。これは、2012年10月に全国8632施設の看護部長を対象に病院看護職員の労働状況などを調べたものです(有効回収率39.3%)。
これによると2011年の看護職の離職率は10.9%、新卒者では7.5%と顕著に低下しています。これは「7対1入院基本料や看護職員1人当たりの月平均夜勤時間を72時間以内とする入院基本料の算定要件の創設」や、「新人研修の努力義務化」などが要因に考えられています。
一方で、「月72時間を超える夜勤」を行っている看護職が31.9%と前回調査と変わらず、「月80時間を超える夜勤」を行っているのは17.3%と前回(15.7%)より増えていました。そして「月72時間を超える」夜勤者の割合が高い病院ほど離職率は高く、「月72時間超」夜勤者が50%以上を占める病院の離職率は12.9%と2ポイントも高くなっています。
また同じ時期に行った「高齢者ケア施設で働く看護職員の実態調査」では、オンコール業務に身体的・精神的負担を感じる人が約半数いることも明らかになりました。この調査は、全国の介護老人保健施設・特別養護老人ホーム・グループホームに勤務する協会会員に対して「看取りケアの状況」と「オンコール業務の現状」を尋ねたものです。「連絡・呼び出しがあるかと思うと身体的・精神的に休まらない」39%、「連絡・呼び出しがあると、身体的に疲労が残る」11.5%でした。ある訪問看護師さんは「訪問看護をはじめた頃は、オンコールの時には自宅にいてもドキドキして、お風呂に入ることもできませんでした。10年を経た今、さすがにそれはなくなりましたが、やはり落ち着かず、コンビニに買い物に行っても必要なものを買ったらすぐに家に戻ります」と話してくれました。夜勤とオンコールとは内容は少し異なりますが、同じように心身の負担は大きいことがわかります。
 

ガイドラインも参考に、上手にオン・オフの切り替えを

ガイドラインでも触れているように、夜勤や交代制勤務の問題解決や環境整備のためには、組織と個人の両者の努力が必要です。すぐにできることとして、疲れを必要以上に大きくしないための夜勤前の生活の工夫、疲れを後に残さないための夜勤後の休息の取り方やリフレッシュ方法など、自分自身のライフスタイルをより良い方向に整えるためにガイドラインを利用してみてはいかがでしょうか。また、それらは夜勤・交代制勤務者以外の人にも有効で、春本番のこれからの時期、さらに活動的になれると思います。

参考HP

日本看護協会HP 夜勤・交代勤務に関するガイドライン
 

「2012年 病院における看護職員需給状況調査」速報
 

「平成24年度高齢者ケア施設で働く看護職員の実態調査」

 ニュースリリース

 

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