第6回

第6回 "短期ローテーション"による「卒後臨床研修制度」

2012.6.12 update.

 

名古屋大学医学部附属病院看護部では新人教育として、技術育成研修をベースに専門職としての姿勢や態度、基本となる臨床実践能力を確実に修得し、さらに職場適応を図れるよう“短期ローテーション”による「卒後臨床研修制度」を2009年4月から導入しています。

高度化が進む医療の現場で「看護職」として将来にわたり職業としていくために、ゆっくりと確実に基本的な臨床実践能力を身につけ、自分にあった働き場所を見つけられるローテーション制は、少子・高学歴化を迎えた時代背景にも合致しています。

 

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卒後臨床研修制度の目的

新人看護師に必要な社会人および専門職としての姿勢や態度、並びに安心で安全な看護ケアを提供するための基本的な看護実践能力を獲得し、早期離職防止と職場適応を促進する。

 

対象者

平成23年度新人看護師・助産師142名(助産師等一部は2ヶ月間一般病棟ローテーション)

 

期間(ローテーション)

4月~翌1月までの10ヶ月間(3,4カ月間ごと3つの病棟)

  

内容

・看護職業人としての姿勢や態度を身につける

・内科系、外科系など複数領域の臨床経験を通し、看護基本技術(87項目)を習得実践する(卒後2年目にICUや手術室研修を行う)

・外来~入院、退院までのプロセスを経験し、各療養段階の患者を理解する

 

評価

ローテーションごとに形成的評価を行い、個々の成長を継続的に支援する

 

教育体制

臨床経験5年以上で新人にとって役割モデルになり話しやすい先輩ナースを実地指導者“サポーターズ”と名付け、各部署ごとに推薦されます。新人教育担当として各クール(ローテーション)における部署教育計画の立案、実施、評価など中心的役割を担います。日々の業務調整や技術習得状況のチェック、新人の相談相手にもなりながら新人の成長を支援します。さらに教育担当副看護師長や看護師長が指導や支援をし、チーム及び職場全体で新人教育を進められるようにしています。

 

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メンタルヘルスサポート体制

新人が臨床現場に順応し臨床実践能力を獲得していけるように、職場全体でのサポートや根気強い見守り、また不安を緩和するためのメンタルサポート体制として、「なんでも話せる相談室」やメンタルヘルス研修、定期的なストレス調査などを実施し、新人の体調不調や悩みなどに速やかな対応をしています。

 

新人1年目の教育パス

新人1年間の教育計画です。

様々な研修を受け、複数領域のOJTで看護実践しながら、基本的な臨床実践能力を習得します。

 

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◆ローテーションによる研修を受けた平成23年度新人の反応

 

 

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新人の声

・「色々な科を回ることができ、各科の看護を学び技術経験する機会が増えた」

・「クールが変わるたびに基礎を振り返れた」

・「それぞれの部署で繰り返し技術チェックをしてもらえ不安がなくなった」

 

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新人の声

・「1年で3部署回れたのは、適切でありよかった」

・「広く学ぶことができるが技術や知識が不十分なまま次の部署へ移る」

・「それぞれの科によって、特徴が違うので幅広く看護技術や知識を経験することができた」

・「慣れると異動で精神的に辛い」

 

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新人の声

・「自分がどんな領域に興味が持て向いているのか考えることができた」

・「科により特徴が違い幅広い経験ができた」

・「希望する科が不明確だった場合、色々回った方が分かりやすい」

・「慣れた頃に異動となるが、勉強できたことが多かった」

 

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◆成果と課題

1.短期ローテーション卒後臨床研修制度を導入後、新人の早期離職率の低下(2~4.2%)

2.新人の職務満足度の向上

3.基本看護技術87項目の確実な習得

4.臨床実践能力の獲得

5.集合教育とOJTの有機的な連携

6.新人教育に対する先輩の業務負担増加

 

<鈴木三栄子、高橋恵 名古屋大学医学部附属病院看護実践力支援室>

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