ニジノカナタニ 第1話

ニジノカナタニ 第1話

2012.4.09 update.

ドーンスティック菩薩峠 イメージ

ドーンスティック菩薩峠

どうして毎日こんなに忙しいの?! 中規模病院で働くカエルの看護師ナンシーのもとに知恵の神の遣いを名乗るニシキゴイのマンジーが現れた。忙しすぎる仕事の中で遭遇する多くの難題を乗り越えて、ナンシーは大切なものを見つけることができるのか? お仕事密着ファンタジー「ニジノカナタニ」のはじまりです。

マンジーとの出会い

 

私の名前はナンシー、ニホンアマガエルのメス。
300床の中規模病院で看護師をして7年目。
病院は都会から移動してくると少し緑が増えてきたなっていう郊外にある。

 

カエルってお肌の水分量は人間と比較にならないくらい多い。
だから、寒さと乾燥、そして何より多忙によるストレスが
心とお肌に大きなダメージを与えるの。

 

それなのに、今年の私は看護研究のリーダーと
プリセプターのフォローを担当するシスターナースという悲惨な運命。
しかも、部長からは「じっくりと取り組んで欲しいから2年間は頑張ってね」と言われてしまってダブルパンチ。
看護師人生でMAXの忙しさにはまりこんでいる(><)

 

そんななか、私の私生活にも驚くべき変化が起こったのだ。

 

そう、最初にマンジ―と出会ったのは、9月に計画していた夏休みが潰れた頃。
確か、7月末だったと思う。
毎年ピークをずらして9月にハワイに行くのを楽しみに働いていたんだけど、
今年は退職者も相次いで、雲行きが怪しくなってきていた。
しかも、あろうことかうちの病院、電子カルテの導入とか考え始めちゃったので、
とんでもなく忙しくなってきていた。

 

そんな時、師長さんから「ごめんね~、どうしても勤務が組めないから
この休みを調整してもらえない?」って泣きつかれた。
今年はいろんな意味でみんなやれることをがんばっていた。
そんなのもあって、たまには協力してあげてもいいかな・・・と
私的には珍しく、休暇を返上することにした。

 

それでも、ホントに夏休みのハワイなしっていうのが確定したら、
それはそれでがっくりって感じだった。
そこで「代わりにハワイの水でも買うか!」と、
前々から悩んで手を出せないでいたウォーターサーバーのハワイのお水を、
思い切ってネットでポチっと購入したのだった。

そこからは怒涛の6連続勤務。
忙しさもあって、休日に水が届いても、あまりの疲れでずっと寝たきり状態。
今日も目が覚めた時には、もう夕方で暗くなっていた。
「ハワイの水でも飲んでシャキッとするか!」と、ウォーターサーバーに目をやると、
どうも、何かが入ってる!?

 
「え~っ!ありえない!」
じっくり見たら、煮干しみたいなのが、タンクの底にくっついてた。
タンクをはずして取り出してみたら、なんと、煮干しはみるみる巨大化!
そこに、ニシキゴイ(鯉のカラフルなやつね)のおばちゃんが現れた。
ありえないでしょ(笑)。


「あんたなぁ~!看護師やのに、うちにこない長いこと気づかんで、
 どないな観察力しとんねん!?」

 

いきなり叱り飛ばされた。
私の観察力の前に、他人のところに不法侵入してる、あんたの常識のなさの方が
どえらい問題だと言おうかとも思った。
しかし、あまりに疲れているからこんな変な夢を見てるんだし、
無視だな~って思って知らんぷりしていた。
 
そしたら、このニシキゴイったら、
「ちょっとそこに座りなさい」ってえらく威張る。

 

「あの・・・お言葉を返すようですが、これは夢ですから、私の貴重な休暇を少しでも確保するために、とっとと覚めてもらえませんかね?」と、とりあえず反論してみるが、
「あんたはほんまに現状の分析力があらへんね。どないな根拠でこれが夢やっちゅーとんねん」
ニシキゴイは自信たっぷりでいう。

 

しかも、気のせいか最初にタンクから出てきた時よりも、
丸々した体のボリューム感がアップしている。ますます、自信たっぷりだ。
 

「こんなとんでもない展開、夢でしかありえないでしょう?」
 
 

そう言う私に、ニシキゴイは
「あんたはそうやっていーっつも、自分で考えんと、これまでの流れのままに物事に対処してきたわけやね? それで、今、いよいよ実際の仕事がどないにもならん状態になってしもてる。それが問題やっちゅうことは自分でもわかってますやろ?」
そう言い放った。

 
「そんな・・・」
私は昔から口げんかは強くない。言いたいことがありすぎると、逆に何も言えなくなる。
しかも、このニシキゴイから言われたことは、最近のあまりの忙しさとその理由が理不尽であることから、私がずっと悩んできたことでもあった。
 
「そやからうちが呼ばれたんやんか」
 
・・・呼ばれた!?
 
そういうとニシキゴイは、トイレにおいてある置物のところに跳ねていって、置物を取り出してきた。
それは、もう忘れかけていたものだったが、あこがれていた先生が途上国医療支援でブータンに行ったときに、チベット密教の知恵の神様なんだとお土産にくれたものだった。
なんでも、たまたますれ違ったおばさんから「あなたの大事な人に贈るといい」と言われたそうな・・・って、いろんな思い出もあって、大切にしていた(最近忘れてたけれど・・・)。

 

でも、このニシキゴイなぜこの置物を知っている!?

 

「これをなんで知っているんかと、びっくりしてはるんちゃう?」
 
驚いてるけど・・・大丈夫。だってこれは夢だもの、とまあまあ余裕の私。

 

「うちは、この知恵の神さんマンジュシュリーから遣わされて、あんたのところにきたんよ。まあマンジ―とでも呼んで」

 
すごーい!マンジュシュリーだからマンジーなんだね。
今日の夢は、ネーミングとか細部の作り込みとか凝ってるわあ。
やっぱり私、すっごい疲れてるんだ。
そう思って、これはもう寝るしかないと、もう一回目を閉じた。
すると、洗面所からすごい音がした。
 
「ねえ?グロスあらへんの?リップグロス? クリームでもええわ。
 水から上がると唇がカサカサになってまうんよ。」
 
ひえーっ!巨大ニシキゴイがやっぱりいる!
ほっぺたつねったら痛いよ!これって現実!?
 
そう動揺していたら思い出した!
明日、看護研究の打ち合わせを勤務後にやることになってたんだ。
いろいろあって全然進んでないから、せめてリーダーの私が提案をしないと。
こんなニシキゴイの化け物につきってる暇はない!

 

とにかく明日の準備だ!変な夢は無視してPCの電源を入れた。

 

 

次回につづく

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