第5回 気管吸引のシミュレーショントレーニング

第5回 気管吸引のシミュレーショントレーニング

2012.5.23 update.

 

第5回では、フィジカルアセスメント教育プログラムⅢの内容を具体的に紹介します。

 

◆フィジカルアセスメントⅢ:気管吸引シミュレーショントレーニング

 

フィジカルアセスメントⅢでは、臨床研修制度の中でも経験する機会が少なく、実施手順が統一されていない挿管中の患者の気管吸引を実施できることを目標にした内容にしています。既に標準化されている呼吸管理・吸引技術のマニュアルから新卒看護師が実施できる内容を精選し、日本呼吸療法医学会が作成した気管吸引ガイドラインのエビデンスに基づき作成しています。気管挿管中の患者を想定した気管吸引シミュレーション演習を計画し、目標の到達度を評価するために評価基準を設定しました。

 

目   的

吸引に関連するフィジカルアセスメントと安全な吸引が行える知識と基本的技術を習得する。

 

一般目標

①吸引に必要な情報からフィジカルアセスメントを行うプロセスを理解できる。

②挿管中の患者に対する安全で効果的な吸引技術を身につける。

 

行動目標

①吸引に関連するフィジカルアセスメントの理解

吸引を必要と判断するための情報を説明できる。

情報からのアセスメント方法を説明できる。

吸引後のアセスメントを説明できる。

②吸引技術

安全で効果的な気管吸引の手順の根拠を説明できる。

挿管中のシミュレータに対して安全で効果的な気管吸引を実施できる。

 

対象者

新卒看護師 142名

 

使用シミュレータ

吸引シミュレータ Qちゃん(京都科学)

 

 

プログラムⅠの流れ

講義・演習前 知識・シナリオシミュレーションプレテスト  

講義 *1

シナリオシミュレーション演習 *2 

講義・演習後 知識・シナリオシミュレーションポストテスト *3

 

 

◆トレーニングの内容

1.講義 集合教育で行います。

  気管吸引に関する講義 60分

講師:名古屋大学医学部附属病院 小久保比登美クリティカルケア院内認定看護師SL5prof.png  

2.演習

①1グループ4~5名、32グループに分ける。

1グループ1名のインストラクターが担当する。

②演習内容

吸引に関わる情報収集とアセスメントおよび基本的主義の演習

シミュレータ8体を使用し、アセスメントを含む技術演習(開放式気管吸引)

②演習時間配分

研修生:吸引演習1回5分×2回実施

1名実施後にディブリーフィング

 

kougi1.png jisshu1.png jisshu2.png

 

◆評価方法

知識は正誤問題の筆記試験、技術はシミュレータを用いたシミュレーションテストで評価します。

<知識テスト>

 方法 正誤問題15問、時間各5分、得点範囲0~15点

 内容 気管吸引に関する知識

講義前後に紙媒体で実施しました。

<シナリオシミュレーションテスト>

 方法 シミュレータを用いたシミュレーションテスト、得点範囲0~31点

 講義前後に実施しました。

 総合医学教育センタースキルスラボを利用し、実際の挿管中の患者を想起できるように工夫をし、一人一人が臨床場面に即したテストを受けられるように環境を整えています。

hyouka1.png hyouka2.png hyouka3.png

hyouka4.png hyouka6.png hyouka5.png

 

◆呼吸管理・吸引技術チェックリスト

 

SL5-1.jpg

(画像をクリックすると大きく見えます)

 

◆受講者の反応

「危険を伴う技術なので、知識・技術を身につけることができる。」「改めて一つひとつの動作を振り返ることができ、根拠も理解できた。」「吸引の手技を現場で教わる機会がなかった。」等、講義・演習に対する満足度は高く、ケアの根拠を理解し、安全に実施できるという良い反応でした。しかし、研修に対する希望として、「吸引研修は早い時期にしてほしい。」「口腔・鼻腔吸引の指導もしてほしい。」と開催時期と内容についての意見がありました。

 

◆今後の課題

今回のプログラムを通して、呼吸管理のために必要な吸引技術の根拠を理解し、安全に実施できる技術を学ぶことができたと考えています。しかし、吸引の経験は所属部署により異なり、病棟において挿管中の患者の気管吸引を行う機会は少ない現状があります。そこで、2年目で教育的な意図をもって各新人に1週間のICU研修を実施し、実際の患者に実施できるように教育プログラムを構築しています。 安全な吸引技術の修得のため、ICU研修にむけて修得度の確認と再トレーニングを行っています(このプログラムの内容については、7回目で報告をさせていただきます)。

 今回のプログラムを通して、フィジカルアセスメントⅠで学んだ基本的な知識・技術を実際の患者でどのように活用していくのかを学ぶことができたと考えています。しかし、フィジカルアセスメントⅠ後、早い段階でフィジカルアセスメントⅡを実施することができなかったため、効果的・効率的に学習できるようにしていく必要があると考えています。

また、今後は学習内容の習得度の確認のための追跡評価を行い、未習得者のための再学習支援も必要ではないかと考えています。

 

<高橋恵 名古屋大学医学部附属病院看護実践力支援室  

看護管理 イメージ

看護管理

社会の変化を的確にとらえながら、看護管理者として直面するさまざまな問題について解決策を探る月刊誌。主任から部長まで幅広い読者層に役立つ情報をお届けする。

詳細はこちら

このページのトップへ