かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2010.12.06 update.
川口美喜子
島根大学医学部附属病院臨床栄養部副部長・管理栄養士。2005年より島根大学医学部附属病院NST(栄養サポートチーム)の構築と稼働に携わる。
病院栄養士になってから、食事に悩む患者さんのために患者さんに寄り添える栄養士が必要だと感じていました。そんなとき、院内で事務職に就いていた青山栄養士に出会い、共に歩んでくれるように説得しました。青山栄養士は辛い思いをしながらも、楽天的で無頓着な私と活動を共にしてくれました。最近は、私よりも強く逞しく大きな心で食の奥深さを語ってくれます。親子ほど年の離れた私たちで、患者と家族の体と心を和ます命を繋ぐ病院食を考えていこうと思います。
青山広美
日清医療食品(株)島根大学医学部附属病院事業所・栄養士。
初めてがん治療に苦しむ患者さんに会った時、「今は食欲がないから何もいらない」「治療が辛くて食べる気分にならない」「食べられないから来なくていいわ」と言われることばかりでした。「食欲はないけど、私は生きるために食べたい」という言葉に驚きとショックだったことを覚えています。毎日が特別な食事ではないけれど、患者さんのその日、その時食べたい希望に合わせた調理は、人を思うやさしい料理になると思います。
対応
摂食障害、食欲不振、味覚障害など。お腹の調子が良くないと思われる方、トマト味を好む方にお勧め。
レシピの背景
このレシピは、54歳の白血病女性のAさん、甲状腺癌で食道切除、胃管再建術を行った76歳女性のBさんに提供したレシピです。Aさんは口腔乾燥、味覚障害、低栄養、食欲不振、下痢がありました。Bさんは、食欲不振、嘔気、嘔吐、うつ症状がみられた方です。
当院の病院メニューにはオムライスがあり、多くの患者さんにとても喜んでもらっています。しかし、治療上、軟飯や粥食となっている患者さんには他のおかずが用意されることが多く、このレシピは、そうした方にもオムライスを楽しんでもらうためにくふうしたものです。
調理のポイント
生クリームとバターを使用し、エネルギー量をアップしながらも食べやすいようくふうしました。口当たりは良好で、ふわふわのたまごが体に優しく、見た目にもおいしそうで食欲がわきます。
レシピ
一人当たりエネルギー 264kcal、たんぱく質12.0g、塩分1.3g
<材料>
・おかゆ 300g
・卵 1個半
・鶏肉 90g (包丁でよくたたいて、ミンチ状にする。普通のミンチだと脂の筋が口に残るので、口あたりをよくするため)
・玉葱 60g
・バター 10g
・人参 30g
・生クリーム 30g
・片栗粉 3g(小さじ1杯)
・塩・こしょう 適宜
・トマトケチャップ 30g
・コンソメ 適宜
<作り方>
(1)ごはんに水を加えてご飯が柔らかくなるまで煮る。このときお粥を使えば、時間短縮になる。
(2)たまねぎ、人参はみじん切りにする。
(3)フライパンにバターを熱し、たまねぎ・人参・ミンチを炒め、しお・こしょう・ケチャップで味をつける。(1)に加えて煮込む。
(4)卵に水溶き片栗粉と生クリームを加えて、よく混ぜフライパンにバターを熱し弱火で焼き、(3)を包み仕上げる。上にケチャップをかけて完成。
One point!
卵をもっと柔らかく仕上げたいなら、沸騰したお湯に塩を一つまみ入れ、そのなかに(4)の卵液を流しいれる。浮いてきた卵をすくってお粥の上に盛れば、できあがる。
患者さんの反応
「お粥は食べやすくていいけど、いつもだと飽きてしまう」「たまには、違うものも食べたい」そういう、患者様の声に応えたくて思いついたメニューです。
お粥でもみんなと同じ味付きのご飯がたべられるのは、患者様にとってうれしいことのようで、とても好評のメニューでした。味つきのお粥ではその他、炊き込み風お粥、ラーメン雑炊も好評でした。
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