ファッションに関するお悩みを伺っていると、
よく出てくるのが靴の話です。
特に、リンパ浮腫の方とお話ししていると、
サイズが合うものがいい、歩きやすいのがいい、
弾性ストッキングをうまく隠せるのがいい、など、
気になるポイントは多くあります。
そう、お洒落は足元から。
今回は、靴の選び方や足のケアについて書きます。
靴選びの基本
足にはさまざまな役割があります。
立つ、歩く、衝撃を吸収する、
さらには、歩く時の筋肉の収縮弛緩により、
ポンプ効果で血液を心臓側へ押し上げるのも大事な役割です。
足がその役割をしっかり果たせるようにするには、靴選びが重要になります。
基本は、大きすぎず、小さすぎないこと。
いくつかチェックすると良いポイントがあります。
1. 甲の周り
靴の一番幅の広いところが足の幅と一致しているか。
甲周りがきつくないか、逆に余裕がありすぎないか。
甲の周りに余裕がありすぎると、靴の中で足が前にすべって
つま先が圧迫されたり、歩きにくくなったりします。
ぴったりしていると靴と足の一体感が生まれ、歩きやすくなります。
2. つま先
指が自由に動くか。先端に余裕(5‾10mm程度)があるか。
つま先がきついと、痛くなったり傷になったりするので、指が動くくらいの余裕が欲しいところです。
つま先の形にも個人差があるので、意識してみると良さそうです。
3. 土踏まず
自分の足の土踏まずが、靴の形に合っているか。
触れるか触れていないかという状態が
望ましいと言われています。
これがぴったり合っていると、
衝撃を吸収する効果が高く、
歩きやすさにもつながります。
4. かかと
かかとの形が靴の形に合っているか。
隙間が無く、靴で軽く押さえられて安定しているくらいがいいですが、食い込むものは避けましょう。
5.靴底の硬さ
柔らかすぎないか。足は指の付け根で曲がるか。
柔らかすぎる靴は、身体を支える力が弱いことがあります。
また、歩くとき、足は指の付け根で曲がります。靴も足に合わせて曲がる方が、歩きやすいです。
さらに、足の形は左右で違うので、
試し履きをするときは、両方の足で履くことが望ましいです。
立ったり、歩いたり、その場で座ったり、
いろいろな動作をしてみましょう。
体重のかかり方で足の形も変わるので、椅子に座るなど、
体重をかけない状態でもサイズを検討する方がよさそうです。
靴を履くときの注意点
靴を履くときにも、ポイントがあります。
足に靴をぴったりと合わせることが重要で、かかとが基準になります。
また、レースアップシューズ(紐で調節できる靴)であれば、
甲のサイズにぴったり合わせることもポイントです。
つま先にゆとりがあるかどうかも確認しましょう。
やっぱり見た目は大事
ここまで、基本的な靴の選び方と履き方をご紹介しましたが、
やはり大事なのは見た目です。
浮腫みやしびれ、下半身の筋肉の衰えがあっても、
いかにもな見た目の介護シューズや運動靴は履きたくない、
というお声はよく耳にします。
お洒落は足元から、というだけあって、
どんなにサイズがぴったりで、歩きやすくても、
好みに合わなかったり、コーディネートに合わなかったりする靴は、
履く気にならないものです。
機能性と見た目、妥協点を見つけながら、
納得のいくスタイルを見つけることが大切ですが、
楽しく靴を履くアイデアを持っているのは、
やはり経験豊富な患者さんたちです。
私が今まで出会ったお洒落さんのアイデアをいくつかご紹介します。
リンパ浮腫の患者さんとお話していてよく出てくるのは、夏の靴についての悩みやアイデア。
サンダルを履きたい!でも弾性ストッキングは隠したい!
窮屈なのは履けない!でも野暮ったいのは避けたい!
いろんなお声を聞いて辿り着いたアイデアは、
ブーツサンダルとセパレートサンダル。
隠したいところは隠す、緩めたいところは緩める、がポイントのよう。
浮腫みで男性ものの靴しか履けなくなったという患者さんもいらっしゃいます。
だからといって諦めてしまうのではなく、
そこに新たな可能性を見つけられるのも、お洒落の面白いところ。
とある方が教えてくださったのが、着物をリメイクしたセットアップに
メンズスニーカーを合わせるコーディネートです。
ちょっぴり上級者向けのコーディネートでもありますが、
いろんなお洒落があっていいよね、と思わせてもらえるアイデアです。
履きたいものを履いてほしい
患者さんのQOLを考えると、
やはり、患者さんの履きたいものを履くことがいちばんです。
お気に入りの靴が履けない、TPOに合わせた靴が履けない、
といったバリアが生じてしまっては、
生活に制限が出てしまいます。
たとえば、足の浮腫の方がハイヒールを履きたいという場合。
ハレの日や改まった場面のハイヒールでも、短時間の使用にとどめる、脱
いだ後は足を動かしてほぐす、足を清潔にして保湿する、など、少し気を付けるだけで、
足への負担(ひいては心への負担)を軽減できます。
また、ハイヒールでも、つま先の形に合わせたものを
選べば多少はましでしょうし、
ヒールが低くてもドレッシーなデザインのものなら、コーディネートに合わせられます。
まずは、履きたいものを履いてほしい。
それが叶わないなら、別のものでも、
納得できるものがあってほしいと思います。
身に着けるものである以上、可愛いな、履きたいな、
という気持ちの優先順位を下げないよう、
さまざまな可能性を提示したいです。
医療者は、あくまでも情報提供をする立場
あれはだめ、これはだめ、という制限は、
どんなに身体に配慮したものだとしても、
患者さんの気持ちの面で少なからずマイナスの影響があると思います。
これならいいですよ、という前向きな方向の提案をしてほしいです。
何より、大切にしたいのが、あくまでも
決めるのは患者さん自身だということ。
医療者の役割は、患者さんの決断をサポートするための、
正しい情報を提供することだと思っています。
先述のように、機能面(安全面)と見た目(お洒落)の間の妥協点の見つけ方、
ちょっとでも楽しみを見つけるアイデアは、患者さん自身が産み出していけます。
医療者の考えを押し付けることなく、正確な情報を、できるだけ幅広く、
患者さんにお伝えできるよう努めていきたいと思います。
参考資料