第7回 上手に隠して「普通」のお洒落  〜身体の変化はイメチェンのチャンス〜

第7回 上手に隠して「普通」のお洒落  〜身体の変化はイメチェンのチャンス〜

2020.3.09 update.

吉備悠理(きびゆうり) イメージ

吉備悠理(きびゆうり)

健康科学に興味を持ち2016年に東京大学医学部健康科学科に進学。看護学を専攻。服飾サークルに所属するなどファッションへの関心も高く、看護分野におけるファッションの意義を考え始め、医学看護学の枠にとらわれない形でファッション×看護に取り組むために、免許取得後、アパレルメーカーへ就職。

がん看護の授業で出会ったリンパ浮腫の写真に「むくんだらお洋服どうすれば良いの?」という素朴な疑問を抱き、リンパ浮腫患者のファッションの研究に着手。卒業研究では「リンパ浮腫とうまくつきあうスタイルブック」(http://www.adng.m.u-tokyo.ac.jp/s_201806.html)を開発した。

↓連絡先↓
yuuri.kibi.contact@gmail.com

前回のストールアレンジに続き、
今回も「普通」のお洒落のためのアイデアを集めてみました。
 
ぜひ、患者さんとシェアしてみてください。
 
ポイントは、隠すこと。
加齢や病気による身体の見た目の変化は、ときとして隠したくもなります。
わざとらしくなく、かつお洒落に隠せれば、
自信がついたり、お出かけも楽しくなったりするかもしれません。
 
ハンディキャップを包んで隠すアイデアを紹介しましたが、
今回は「隠したい部分」に応じて、さらに掘り下げていきます。
 
 

お腹はゆったりした前見頃で隠す

 
200223_いろんな腹.png
 
お腹は多くの人にとって気になるポイント。
筋肉量の減少によってお腹が出てくることもあります。
 
ストーマのある方はパウチをつけているので、
ふくらみも気になるし、守りたい気持ちもあるでしょう。
 

200216_Aライン.png

 

お腹を隠すのにおすすめなのが、Aラインのトップスやワンピース。
特に、横から見てもAラインのものがおすすめです。
 
丈が長くても、前見頃(服の前側の部分)にゆとりが無いと、
お腹のシルエットが見えてしまいます。
フロントタックなど、横から見ても広がりがある服なら、
お腹を隠してくれます。
 

200216_ニットシャツレイヤード.png

 

 

身体にぴたっとフィットしてしまうものとして、
要注意なのがニットです。シルエットがわかりやすく出てしまいます。
 
着こなしとしては、少し大きめのサイズを選んで、下にシャツを重ねるのがおすすめ。
シャツが壁になるので、ニットがお腹に添うのを防いでくれます。
 
もっと大きめサイズのニットを選んで、オーバーサイズでだぼっと着るのも可愛いですが、
カジュアルな印象になるので、普段着向きです。(個人的には好き。)
 

200216_前結び_ドルマン.png

 

 

他には、前で結ぶデザインのワンピースや、
ドルマンスリーブ(袖の付け根が広くゆったりしたもの)のワンピースやチュニックも
お腹を隠してくれます。
 
お腹を隠すには、前見頃にゆとりがあることが大切です。
 
 

腰はまっすぐ長めのトップスで隠す

200223_いろんな腰.png
 
腰やおしりも隠したいですよね。
 
腰がはっていたり、おしりが大きめだったり、
ボリュームが目立つことがあります。
 
また、腰のボリュームは、体型によるものだけではありません。
 
排尿障害がある場合、尿漏れ対策として専用のパットやパンツを使うため、
通常のショーツを穿く場合よりもボリュームが出がちです。
排尿障害は加齢によるもの、女性がんの外科的治療の後遺症など、
原因はさまざまです。
病気や障がいを隠すためにも、腰のボリュームは上手に隠したいところです。
 

200216_後ろ長トップス.png

 

 
腰やおしりを隠すのにおすすめなのは、
後ろが長くなったトップス。
前後の丈が異なる(アシンメトリーな)もので、
後ろがおしりにかかる丈のものが特に良いです。
 
前後が同じ丈のトップスだと、丈が長くても、
身体にぴたっとくっついて
シルエットが出てしまうことがあります。
後ろだけが長いものなら、身体に添いにくいのです。
 
さらに後ろにプリーツやギャザー、
タックでゆとりがあると、なお良しです。
 
ボトムの選び方としては、パンツよりもスカートの方が
ゆとりがあるので隠しやすいですが、ギャザースカートは要注意。
ぶわっと広がるので、腰が大きめの場合、
かえってボリュームが目立ちます。
スカートを穿く場合も、上からトップスを
かぶせるようにしてあげる方が良いでしょう。
 

200216_ロングジャケット.png

 

パンツスタイルも、ストレートパンツの上にロングジャケットをかぶせるなど、

腰の曲線が出ないように、まっすぐなラインを作ると良いです。
 
隠すときの基本は、身体に添わせないこと。しっかりと服の形が保たれることです。
 
 

脚はまるごと包んで隠す

200223_いろんな脚.png
脚のお悩みもまた、さまざま。
年月を経るごとにシルエットが変化したり、サポーターをつけるようになったり。
リンパ浮腫の方のお悩みを聞く機会が多いのですが、リンパ浮腫の場合は、
浮腫そのものに加え、弾性ストッキングも隠したい要素の1つになります。
 
脚を隠すには、ゆったりしたボトムスがお役立ちです。
 
定番はロングスカート。
200216_ロンスカロンカーデ.png
 
まるごと隠すには、
足首まで丈のあるスカートが安心ですが、
スカートの面積が広いので、べた塗りのような、
やぼったい雰囲気になることもあります。
ベルトをアクセントにしたり、大ぶりの柄の入ったものにしたりと、
変化をつけるのがおすすめです。
 

 

200223_ワイドパンツプリーツ&アシメ.png

 

 

ワイドパンツは、張りのある素材や、プリーツなど、
脚にぴたっと添わないものを選ぶと
シルエットカバーに役立ちます。
 
浮腫などで脚に左右差がある場合は、
巻きスカート風など、アシンメトリーなものが良さそうです。
 

200223_ふっくらパンツ.png

 

 
膝サポーターを使い始めたという、
アパレルショップの店員さんが絶賛していたのが、こちら。
 
コクーンシルエットのパンツです。
膝周りはふわっと広がっている一方で裾はすっきりなので、
膝はカバーしつつも、裾がもたつかず、かつお洒落。
 
その店員さん、今までは膝丈のスカートや細身のパンツが多かったそうですが、
膝サポーターをつけるのにあわせて、デビューしたとのことです。
 
お洒落の幅が広がり、イメージチェンジにもなったそうです。
周りの人にも褒められて、「こういうのも良いかも」と思い
新しいスタイルのファッションにどんどんチャレンジしているとのことでした。
(膝サポーターユーザーのお客様にもおすすめしているのだとか。)
 
 

身体の変化はイメージチェンジのチャンス

 
加齢や病気で身体が変化すると、今まで着ていた服が
着られなくなることがあります。
 
お気に入りが着られなくなることは悲しいことでもありますが、
一方で、新しいスタイルに挑戦するチャンスでもあります。
 
自分に似合う服というのは、だんだん変わっていきます。
自らの人生を振り返ってみると、年齢によって
着る服のタイプが違っていることに気づきます。
数年前に買った服が、今の自分にはしっくりこない、ということもあります。
 
ミセスアパレルのショップの店員さんにお話を聞いていると、
お客様は、ある時急に、持っている服が自分に似合わないと感じて、
お店に駆け込んでいらっしゃるのだそうです。
そうして今の自分に似合う新しい服を見つけて、満足して帰られるのだとか。
 
そんなお客様に、お洒落の幅広い可能性を提示して、
新しいスタイルへのチャレンジを手助けするのが
店員さんのお仕事の大事なポイントであり、
楽しみでもあるようです。
 
私自身、アパレルショップの店頭で、
「年も重ねてきたから、今までと違って、モードなお洋服を着てみたくて」
というお客様に会ったことがあります。
「身体も隠せるし、お洒落よね」ということで、
モードなサルエルパンツをお買い上げいただきました。
 
 
お洒落のスタイルは変化するもの。
身体の変化を、新しい自分を見つけるチャンスととらえて、
今の自分に似合うお洒落を見つけてほしいです。
 
今の自分に似合うお洒落は、今の自分に自信をくれます。
昔の服を着られない自分よりも、今似合う服を着ている自分の方に意識が向けば、
自分に起こるさまざまな変化にも、より前向きに向き合えると思います。
 
 
患者さんが、身体の変化に悩むとき、その変化への適応として、
お洒落のことも視野に入れていただけると嬉しいです。
「今のあなたを素敵に見せるお洒落がありますよ」といったお声掛けだけでも、
気持ちを前向きにする手助けができるのではないでしょうか。
 
 

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