第5回 ひとりでできるもん!〜お洒落と機能性〜

第5回 ひとりでできるもん!〜お洒落と機能性〜

2019.12.24 update.

吉備悠理(きびゆうり) イメージ

吉備悠理(きびゆうり)

健康科学に興味を持ち2016年に東京大学医学部健康科学科に進学。看護学を専攻。服飾サークルに所属するなどファッションへの関心も高く、看護分野におけるファッションの意義を考え始め、医学看護学の枠にとらわれない形でファッション×看護に取り組むために、免許取得後、アパレルメーカーへ就職。

がん看護の授業で出会ったリンパ浮腫の写真に「むくんだらお洋服どうすれば良いの?」という素朴な疑問を抱き、リンパ浮腫患者のファッションの研究に着手。卒業研究では「リンパ浮腫とうまくつきあうスタイルブック」(http://www.adng.m.u-tokyo.ac.jp/s_201806.html)を開発した。

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yuuri.kibi.contact@gmail.com

身の回りのことを「ひとりでできる」ことは大切です。
ファッションにおいてもそれは言えると思います。
 
ファッションに関して「ひとりでできない」
バリアが生じる場面の1つに、衣類の着脱があります。
障がいや病気、加齢に伴う身体の状態のために、
衣類を身につけたり脱いだりするときに人の助けが必要としたり、
その衣類を身につけることを諦めたりすることがありえます。
 
もしもお気に入りの衣類を自分一人で着脱できれば、
生活の自由度も上がるはず。
おしゃれを諦めずに済むはず。
「ひとりでできるもん!」が大切です。
ひとりでできるもん!.png
※「ひとりでできるもん!」…1991年4月1日から2006年3月31日まで
NHK教育テレビで放送された幼児から小学校中学年向けの料理をメインとした教育番組。
(出典:Wikipedia)
 
私のベースには、ファッションは社会生活のためのツールという考えがあります。
社会生活の質向上のために、ファッションにおけるバリアは解消したいところ。
毎日のファッションも「ひとりでできるもん!」になれば
QOL向上にもつながるのではないでしょうか。
 
障がいや病気になったとしても、人の手を借りなくても、
自助具(生活上の動作を、可能な限り自分自身で容易に行えるように補助するよう特別に工夫された道具)
などの機能性に優れたアイテムを活用すれば
ファッションを自分の力で楽しめるようになります。
 
今回は、ファッションにおける「ひとりでできるもん!」を叶えるような、
機能性のあるファッションアイテムや自助具に注目してみます。
 
 

ひとりでできるもん!@玄関

 
着脱のバリアがあるといえば、靴。
レースアップシューズ(紐靴)は、
おしゃれですし、紐の締め具合でサイズ調整ができるので
甲高の方やむくみの方にもおすすめですが、
紐をほどいたり結んだりする動作がバリアになることがあります。
 
レースアップシューズコーデ.png
 
しかし、これを解消するアイテムが市場に登場しています。
 
例えば、ゴムの靴紐。
結ぶ必要が無いものもあり、一度通せば伸び縮みするので、
靴をスポッと履くことができます。
ゴム靴紐.png
 
また、既存の靴紐にも使えるのが、
Zubits」というマグネットで履き口を調整するアイテム。
靴紐に取り付けることで、紐をほどかずともワンタッチで
履き口を広げたり閉じたりできます。
カラーバリエーションが豊富で
ネイビーやブラウンなどシックなお色もあるので、
スニーカーに限らず、お洒落靴にも使えそうです。
 
実際使ってみたところ、マグネットの磁力の強さに一瞬ひるみますが、
ひねるようにすれば簡単に外れますし、
履き口をパカッと大きく開けられるので足入れが楽でした。
紐を結ばないので見た目もすっきりスマート、
Zubitsそのものをアクセサリー感覚で見せても良いと感じました。
 
 

ひとりでできるもん!@トイレ

 
着脱の場面といえば、トイレも重要です。
ボトムの上げ下げが楽にできることは、生活の自由度に直結すると思います。
学生時代からリンパ浮腫の方向けのファッションについて調べていますが、
下肢の浮腫に関連してよく話題に上がるのが、ワイドパンツです。
 
ワイドパンツ.png
 
 
むくんだ脚でも穿けて、シルエットもカバーできるということで
患者さんからも着用しているというお声を聞きますが、
同時に聞こえてくるのが、トイレでずり落ちてしまうのが不便というお声です。
 
裾が広いため足にひっかからず、
下まで落ちて裾が床についてしまうのが悩みで、
特に浮腫の方は弾性ストッキングの脱ぎ着もあるので、
ワイドパンツにまで構っていられないということでした。
 
ワイドパンツ床につく.png
今回はワイドパンツそのものではなく、一緒に着用して使える下着を紹介します。
 
 
見つけたのが、裾を守れるペチパンツ。
裾ゴムタイプと、ストラップタイプの2種類を試してみました。
 
まずは、裾ゴムタイプ。
ワイドパンツの裾を巻き込んで留める仕様です。
履いている間、裾のゴムが脚に当たってやや気になりますが、
裾のホールド力は高いです。
たいてい膝で止まるので、手間が掛からずとても楽でした。
 
191219_ゴム入りペチパン.png
 
次に、ストラップタイプ。
ペチパンツのウエストのフックに裾に付いたストラップを引っかけて留める仕様です。
引っかける動作はやや面倒ですが、ホールド力は高いですし、着用中も快適です。
 
191219_ストラップ付きペチパン.png
通販サイトや、東急ハンズなどで売っています。
私はフェリシモで買いました。
2,000〜3,000円程度で買えるので試しやすいのではないでしょうか。
 
 

手作りひとりでできるもん!

 
ファッション関係の自助具の代表例は、
ボタンエイドやソックスエイドではないでしょうか。
これらは販売もされていますが、作り方もネットで様々なものが紹介されています。
YouTubeだと動画で見られるので分かりやすいですし、
クリップやクリアファイルなど、
材料も簡単に手に入るものが多いので、見ていると作ってみたくなります。
ソックスエイドボタンエイド.png
 
 

お洒落と機能性の両立の難しさ

 
ファッションは時に我慢を必要とすることがあります。
自分好みで素敵だけれども着にくい服、
着やすいけれども好みに合わない服など、
お洒落と機能性の両立は難しいと感じます。
 
お洒落で機能性も優れた服というのは難しい。
ならば、一つのアイテムで両方を叶えようとするのではなく、
お洒落な服を着るために、機能性に優れたアイテムを
プラスしてあげられたらいいのではないでしょうか。
 
今回はそういう視点で、機能性重視のアイテムを紹介してみました。
アイテム単体はお洒落ではないけれど、
機能性の高さで、お洒落を助けてくれると期待できます。
 
 

「これさえできれば社会に出られる」

 
私は自助具が好きです。
魅力を感じるようになったきっかけは、
以前、「ケアとものづくりを結ぶ」ことにずっと取り組んでいる、
慶應義塾大学のFab Nurse Project 吉岡純希さんの
講演で登場したキーワード
「これさえできれば社会に出られる」に出会ってからです。
その時に伺った例は、PCからUSBを引き抜きやすくする自助具でした。
 
「これさえできれば社会に出られるが、できないから出られない」
という状況は些細なことでも生じており、
適切な自助具があれば、そのバリアを一人で乗り越えられることもあります。
 
ずっと誰かの助けを得ながら生活するのではなく、
自分の力で自分の生活をコントロールできるようになれば、
生活の質は上がるのではないでしょうか。
自立を助けるのも看護の大切な役割であり、
自助具はそのツールとなると思います。
 
「これさえできれば」の「これ」を助ける自助具という存在に、
自分の理想とする看護の鍵を見た気がしました。
 
ファッションにおいても、自分で着たいものを着られることが、
社会生活の質を上げることにつながると考えています。
 
「これさえできればこの服が着られるのに」
「この服を着られたら、あそこに行けるのに」
 
そんなバリアを解消できるような自助具や
ファッションアイテムを研究していきたいと思っています。
お薦めアイテムがあればぜひ教えてください。
 
 
 

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