かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2019.5.28 update.
2000年に発足し、安全安楽かつ効果的に患者がIVRを受けられるようにIVR看護のあり方を検討する場です。放射線科における看護の臨床実践能力を高めるため専門知識や技術の習得、研鑽をめざし、チーム医療における看護師の役割を追究し、また、IVR看護師の専門性を確立するため、継続して学習する場、人的交流の場を提供することを目的としています。
発足間もなくから開催している研究会(セミナー)は、3月16日に第19回を迎えました。記念すべき第20回は、2020年9月12日に開催予定です!
公式webサイト:http://www.ivr-nurse.jp/
Face book @ivrnurse2016
相手を理解し、相手が受け止めやすい形で伝えていく
後輩看護師とのかかわりでもやもやしたQ看護師は、この出来事を主任看護師に相談しました。
主任看護師は「(Qさんは)言葉が届いていない感じがしたのね」と、Q看護師の言葉を繰り返しながら聞いてくれ、「今までの彼女を見ていて、彼女は具体的に褒められたほうが褒められた実感を持てるのかも」と言いました。
主任看護師は、研修で学習したコーチングを教育や対人関係の場面で参考にしているということでした。「専門家じゃないからハズすこともあるけど、うまくいくことも多いのよ」と、学習したことの一部を話してくれました。
一つ目は、相手の言った、「同じ言葉を繰り返す」でした。これは、相手の意見に賛成するというのではなく、相手が今そういう状態にあると認めるということになります1)。 主任看護師は、Q看護師の「言葉が届いていない感じがした」という言葉を繰り返すことで、Q看護師がもやもやしている状態にあることを認めたというシグナルを出したことになります。
二つ目は、コーチング流「タイプ分けTM」*でした。効果的なコミュニケーション、特にチームをまとめていったり、部下や後輩を指導していったりするためのコミュニケーションにおいては、相手を理解し、相手に受け止めやすい形で伝えたい内容を伝えていくことが求められることから開発されたものです(表)。
「もちろん、この4つのタイプにはっきり分けられるものではなくて、このタイプの要素が強い……的なものだけど、参考になるのよ」と、主任看護師は言いました。
* 「タイプ分けTM」は株式会社コーチ・エィの登録商標です。
新卒で入職した当初の後輩看護師は、あれこれ気遣ってもらい、チェックリストに沿ったOJT(On the Job Training) でその技術ができるようになったことを視覚的に認識することができました。また、先輩からもできたことを認めてくれる関わりがありました。基本的なIVRは一人で担当できるようになった今は、追われるようにOJTを受けたあの頃よりも自分の成長具合を客観的に認識出来る機会は減っています。
このため、新人看護師は、マズローの欲求段階説でいうところの「承認の欲求」が満たされずにいたのですね。
後輩看護師のツボは?
主任看護師の見立てでは、後輩看護師はアナライザータイプとして本人が得意とする部分に焦点を当てた褒め方が効果的であるということでした。また、今回の事象を受けて、できるようになったことを後輩看護師本人が自覚できるような評価ツールを通して、他者評価に依存しない看護師となるように支援していきたいので、「IVR看護におけるクリニカルラダー実践例」3)を参考にした1~3か月単位の評価ツールを検討するという主任看護師自身の考えも話してくれました。
主任看護師の話を聞きながら、プロモータータイプであることを自覚したQ看護師は、自分との違いに難しさを感じましたが、主任看護師と共に考えた言葉を後輩看護師に伝えることにしました。 「あなたは、IVR中の患者さんの足が冷えてないか聞くだけじゃなくて、必ず触って確かめているでしょう。そういう細かい点に配慮できるのってあなたらしいよね」。これを聞いて恥ずかしそうにはにかむ後輩看護師。
主任看護師から「ヒット!」と褒められ、「私もコーチングの勉強しようかな。こんなにすぐポジティブになってもらえるなんて、私って、コーチング、向いてるかも!」と、ワクワクしてきたQ看護師でした。
イマドキの若いコが働く意欲を持ち続けられるような職場作り
現代の若者は「食うため」ではなく「承認欲求」のために働く傾向にあるといいます。超高齢化・少子化の社会において、若い看護師は貴重な人財です。彼らが働く意欲を持ち続けられるような職場環境の1つとして、「承認欲求」が満たされる場であるように調整していく必要があるようです。まずは、「同じ言葉を繰り返す」ことから始めてみませんか?
それから「4つのタイプ分け」ですが、主任看護師が言っているように、人をこれら4つのタイプに分けて対応方法をステレオタイプ化するためのものではありません。まずは自分のタイプを知り、その特徴や付き合い方などを教育や人間関係に活用していくことで、すれ違ったり煮詰まった現状においても接点が生まれ、新たな展開につながったり、誰かがハッピーになれば嬉しいですね。
(IVR看護研究会 青鹿由紀)
[引用・参考文]
1)鈴木義幸:コーチングが人を活かす.ディスカヴァー・トゥエンティワン,2005.
2)鈴木義幸:コーチングから生まれた熱いビジネスチームをつくる4つのタイプ.ディスカヴァー・トゥエンティワン,2002.
3) IVR看護研究会ホームージ
https://www.ivr-nurse.jp [2019.04.10.アクセス]
4)斎藤環:承認をめぐる病.筑摩書房,2017.
IVRに携わる看護師向けの実践的な書物がほとんどない中で、各施設では独自のマニュアルを作って看護にあたっている。その現状を打破するために編集された本書は、医師のIVR手技、看護師のケアが系統立てて解説されている。2007年には「日本IVR学会認定IVR看護師制度」も発足し、ますますIVR看護が期待される中、時宜にかなった実践書。