かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2017.9.20 update.
2000年に発足し、安全安楽かつ効果的に患者がIVRを受けられるようにIVR看護のあり方を検討する場です。放射線科における看護の臨床実践能力を高めるため専門知識や技術の習得、研鑽をめざし、チーム医療における看護師の役割を追究し、また、IVR看護師の専門性を確立するため、継続して学習する場、人的交流の場を提供することを目的としています。
発足間もなくから開催している研究会(セミナー)は、3月16日に第19回を迎えました。記念すべき第20回は、2020年3月7日に開催予定です!
公式webサイト:http://www.ivr-nurse.jp/
Face book @ivrnurse2016
効果的な蘇生を実施するには、今のACLS(二次救命処置)コース(ICLSコースでも同じ)では、チームダイナミクスが重要視されています。「dynamics」の意味は「力強く、生き生きとしているさま。躍動的。力動的」です。
AHA(アメリカ心臓協会)ガイドライン2015では、チームダイナミクスの要素を3つのカテゴリに分けています。
①役割、②伝える内容、③伝える方法、です。以下に、それぞれ解説していきます。
①役割
蘇生処置中チームメンバーが各自担当と責任を理解しているとチームは円滑に機能します。チームリーダーは各チームメンバーの能力に応じて作業を定義し任せます。
チームメンバーもチームリーダーも自分の限界の認識が重要です。チームメンバーは状況が悪化する前に早めに支援、または助言を求めましょう。
チームメンバーもチームリーダーも間違いや不適切は修正しなければなりません。特に同僚が間違える前に指摘する時は、それが薬物、用量、治療介入のいずれだとしても機転が必要です。
②伝える内容
知識の共有は効果的なチーム行動のための重要な要素です。チームリーダーは管理に関してよい案がないか、見落としの可能性がないかを、チームメンバーにこまめに聞きましょう。声に出すことは治療の進行記録を管理する優れた方法です。
患者の状態、行われた治療介入、治療アルゴリズム内におけるチームの現在位置を再確認するする方法にもなります。これにより、チームメンバーは変化する患者の状態に対応できるようになります。
③伝える方法
クローズドループコミュニケーションはリーダーとメンバーの双方にとって重要です。次の3つをくり返します。
1)指示の確認
2)メンバーに名前で呼びかける(できれば別の作業を割り当てる前に指示を理解しているか顔を見て確認します)
3)治療介入の完了を伝える
簡潔で明確な言葉を使用して誤解を防ぎましょう。冷静で自身に満ちた話し方をすると、すべてのチームメンバーの作業に集中させるのに役立ちます。
全員が個々の専門知識やトレーニングに関係なく、お互いに敬意を表しプロとしての態度で接します。蘇生処置中は感情が高まることがあるため、チームリーダーが親しみやすく抑制のきいた声で話し、大声を出したり攻撃的になったりしないようにしましょう。
以上のことを踏まえて考えてみますと、まず自分の発言を聞き入れてもらえなかったことについては、B看護師は、わかりやすく大きな声でなおかつ冷静で自身に満ちた話し方をする必要があり、蘇生の試みでは何をすべきかだけでなく、チームとして効果的に機能するよう建設的介入をし、どのようにコミュニケーションを図り、働くかを理解すべきと言えます(建設的介入とは、「現状をよりよくしてこうと積極的な態度で臨むさま」ともいえます。もし間違いがあったり間違いを認識したりしたら見過ごさず、言葉の抑揚を抑え冷静に間違いを正したり指示することです)。
また、チームスタッフと看護師は、リーダー医師に対し、薬剤名をただ思い付いたような言い方ではなく、リーダーが処置中でモニターを認識できなかったと思われる波形について「トルサデポアン波形様が出てます」と、気づいた観察用語を声に出してから「○○薬剤」の提示をしていたら、効果的な意見として聞き入れてもらい、意思の疎通が図れていたのかもしれません。
B看護師は今ももやもやが残っているようですが、このままだと次のパフォーマンスにも影響が出てきてしまいそうですね。そこで、このようなもやもやが起きた時には、処置後にデブリーフィングを開くことを提案したらいかがでしょうか?
チームとしては、心停止中に何をするべきか把握していることが重要ですが、その間チームとしてどう協力するかを理解しておくことも、同じくらい重要です。チームとしてのデブリ―フィングは、すべての蘇生処置において重要で、処置中・処置後のデブリーフィングは個々のチームメンバーのパフォーマンスの向上に役立ちシステムの強化、問題の緩和がなされます。そしてそれは、心停止後の患者の生存率さえ改善することがあるとも言われています。
「何もできなかった」「あの時もっとこうしていれば」という思いについて、デブリーフィングを開くことで、チーム全体で内省し、次に起こりうる急変に備えることができます。また、後悔することなく自信を持って対応できるように、いつでも急変に即応できる心構えと実践力を習得することも大切です。看護師1人ひとりが役割意識を持つことと、このような急変時の心情を理解してうえで関わることが、重要になっていくと思います。
最後にもう1つ、日頃からの医師とのコミュニケーションを活性化しておく必要があると思います。挨拶や声かけを行い、いざという時のために急変時についてコンセンサスがあり、医師と看護師の間に互いの尊重があったのなら、「コミュニケーションリスク」の少ない関係性を築けるかもしれません。
(IVR看護研究会 本間美智子)
<おわり>