かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2016.7.22 update.
“NURSE”というコミュニケーションスキルをご存知でしょうか?
患者さんやその家族と密なコミュニケーションが必要となるがん看護の領域で、広まりつつあるコミュニケーションスキルです。
Q:NURSEってどんなコミュニケーションスキルなの?
→ NURSEは患者さんの感情表出を促進するコミュニケーションスキルです。
このスキルを使うことで、患者さんやその家族の意思や感情を「意図的に聴く」ことができるようになります。
NURSEは以下の5つの言葉の頭文字になります。
Q:他のコミュニケーションスキルとどこが違うの?何が特徴?
→ 一言でいうと看護師の臨床でのコミュニケーションに適したスキルです。
特徴①看護師のために開発されたスキル
よく知られているSPIKESやSHAREといったコミュニケーションスキルは、もともとは医師が「患者さんに悪い知らせを伝える」ために開発されたスキルです。NURSEは、看護師の「患者や家族に寄り添いたい」というニーズから開発されており、より看護師の実践で使いやすいものになっています。
特徴②患者の感情表出を促す
入院期間の短縮化、通院治療の増加など、患者さんやご家族と医療職とが接する時間が短くなっています。そんななかで、真のニーズを把握するのに適したNURSEはそんな現代の医療現場でこそ力を発揮するスキルといえます。
Q:がんの場面でしか使えないスキルなの?
→いいえ、がん看護以外のさまざまな場面でも活用できるスキルです。
患者さんとの密なコミュニケーションが課題となっていたがん領域で広がっていますが、コミュニケーションが重要になるのは一般病棟や急性期、在宅などでも同様です。
患者さんと接する時間が短い状況のなかで、患者さんの悩みやニーズを的確に把握するのに適しています。
Q:どんな場面で使えるの?
→治療方法や治療の場の選択の場面など、いわゆる「意思決定支援」の場面で有効です。
他にも、思うように自分の考えをまとめられない患者さんであったり、治療に納得していない家族とのやりとりなど、さまざまな場面で活用できます。
Q:このスキルを身に付けるにはどうしたらいいの?
→ロールプレイングをおすすめしています。
書籍などで基本を学んだ後は、やはり実践の経験を積むことが一番です。
日頃の臨床で、無意識に行っていることもあるでしょう。
ロールプレイングでは、意識的にスキルを使うこともできますし、患者役を経験することでこのように言われたら患者さんはどう思うか、不安に思うか、安心できるのか、普段の現場では体験できないようなこともロールプレイの場では体験することができます。
より詳しい内容やNURSEの活用については、下記の書籍をご参照ください。
NURSEを用いたコミュニケーションの事例や、ロールプレイングでのトレーニングの方法などが具体的に書かれています。
患者・家族の感情に寄り添い、意思決定を支援する
がん患者はさまざまな状況で苦悩を抱えながら、幾度にもわたって意思決定が迫られる場面に向き合わなければならない。本書は、そのような患者を支えていくために、患者の感情表出を促すコミュニケーションスキル“NURSE”を実践場面で活用できるよう詳しく解説する。患者の意向や価値観を反映しながら、患者自身が納得できる選択を支えていくうえで必読の1冊。
監修:一般社団法人 日本がん看護学会
編集:国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院看護部