かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2015.11.04 update.
みなさん こんにちは。千葉県流山市にある「ひだクリニック」院長の肥田裕久です。
当院ではメンバーが主体になって心理教育のセッションを行っています。そのプログラムを「ティモシー」といいますが、このプログラムでは、薬や病気に関しての教育的な情報伝達セッションのあと、メンバーが楽しみながら行えるワーク−クのセッションがあります。
プログラム名は「ティモシー」というのですが、この名前はディズニー映画の「ダンボ」から来ています。ダンボの友人のネズミの名前なのです。サーカスに売られたダンボを助けるために、スターにすることを提案します。しかし、失敗。そこで今度は大きな耳を使ってダンボを空から飛び立たせようとします。でも、今度も失敗しそう。ダンボはカラス達にもいじめられます。カラス達にティモシーは一生懸命に抗議をします。そのことばに胸打たれたカラス達は改心し「空を飛べるようになれる魔法の羽」をダンボにあげます。そうしてダンボは見事に空を飛ぶことができたのです。このエピソードからメンバーは、勇気をもって新しいことにチャレンジすることの大切さ、自分で病気の事を学ぶ事の必要さ、新しい自分を見つけることの重要さなどと重ね合わせ、自分たちのプログラム名にしました。
心理教育はとてもためになるプログラムです。ですが、情報伝達だけでなく、自分たちでもっと考えたり話しあったりするところがあったらどうでしょう。もっと、豊かなものになるかもしれません。また、イラストで書かれたシートがあったら、どうでしょうか。自分の考えをまとめやすくなるかもしれません。ワークの時間も、もっと楽しくなったりしませんか。自分の考えをまとめたり、理解をしやすくなるかもしれません。他のメンバーの話しを聞くこともたいへんためになることでしょう。このような要素を含んだものが今回ご紹介する「ひだクリニック」のデイケアで行っている心理教育のシートです。
これらはデイケアのメンバーの有志が集い、自分たちで心理教育のプログラムを運営していくと、なにかおもしろいことがやれるのでは、と考えて作ったそうです。シートはメンバー同士でディスカッションし作成しますが、スタッフは極力関わらないようにしています。イラストは得意なメンバーがいるのでこの部分は、彼が一手に担っています。
では具体的な方法を述べます。使い方はとても簡単です。このシートはグループでの心理教育で使用します。グループの人数は特に制限はないのですが、10~15名前後が最も適していると思われます。
1人に1枚のシートを配ります。そこに書き込んでいきます。1回のセッションで1枚使います。そして大切なのは、書き込んだ後にメンバーで発表しあうことです。書き込む時間は大体10分くらいです。その後、発表をし合う時間が人数にもよりますが、40分くらいになりますから、全部で1時間弱になります。
当院では過去6年間くらいこのようなセッションを行ってきたので、全部で100種類以上のシートがあります。
今回は参加者の中でも特に好評だったものを中心にセレクトしました。そしてテーマごとにまとめてみました。
テーマは4つ。各7種類あるので、合計28枚あります。どんなふうに書くのか、記入例も併せてごらんください。
[テーマ1:自分を知ろう!]
自分の調子や自分のいまの状態を知るために使います。自分の良いところ探しもできるかもしれません。記入例はここをクリック
[テーマ2:病気との付き合い方]
自分のストレス対処方法や「こういう自分になりたいなあ」と考えるヒントが見つかるかもしれません。記入例はここをクリック
[テーマ3:わたしのリカバリー]
自分が頑張っているところに気づいていくことができます。ストレングスの視点を大きく取り入れています。記入例はここをクリック
[テーマ4:シーズン・行事]
リラックスできるように息抜きもかねています。四季折々の話題を入れながらわいわいがやがや皆で楽しく行います。記入例はここをクリック
●発表の仕方
例えば、「テーマ2.病気との付き合い方」の中に、「好きな人にこんなこと言われたら頑張れる!」シートがあります。
これは、自分の頑張っているところを自分で書くのですが、これを「好きな人」から言ってもらう設定にします。書いた内容は、他の参加メンバーに読み上げてもらいます。いくつか書いている場合には、何人かに分けて読んでもらうこともできます。自分で書いたものでも、他人から発せられたことばは「元気の素」になるようです。これはSSTのウォーミングアップの「プレゼントシャワー」を連想してもらえればわかりやすいでしょう。
●柔らかい雰囲気のなか、他のメンバーに認められる経験ができる
このようにシートを利用しながら、メンバーは、病気との付き合い方、頑張っている事、自分の夢や希望などに気づくことができます。そして、ツールを使って話すもっともよい点は、ユーモアを交え、笑いが起きたり、その柔らかい雰囲気の中、他のメンバーに認められるという体験をしていく過程にもあります。
peer to peer(ピア)の関係がアドヒアランスを高める工夫として良いといわれていますが、この部分を応用したものです。実際に参加したメンバーの声は、「自分も頑張ろうと思えた」「薬がじつはこんなに役立っているともわかった」「自信がついた」などであり、肯定的な感想が多く寄せられています。
●ぜひフリーに使ってください。
シートの種類は「ストレスー脆弱性―自己対処」モデルのバリエーションであると考えられます。みなさんの施設で、またデイケアなどの心理教育などでも新しいシートをつくっていくことは可能だと思います。
今回紹介する28種類は、すべてメンバーが作成をしていますが、スタッフとメンバーが一緒につくるようなプログラムに展開することも可能です。アイデアはメンバーさんの頭の中に埋まっていますから、その発掘をすることもとても楽しいのではないでしょうか。
そして今回紹介したシートやアイデアが、多くの場所で使われていくことが、これを作成したメンバーの希望でもあります。許諾は必要ありませんので、ぜひフリーで使ってください。
[テーマ1:自分を知ろう!]
[テーマ2:病気との付き合い方]
[テーマ3:わたしのリカバリー]
[テーマ4:シーズン・行事]
ぜひ、あなたもこれらのシートを心理教育に使ってみませんか?