第5回 東洋人、東方人の国へ。――そしてウルグアイ その1

第5回 東洋人、東方人の国へ。――そしてウルグアイ その1

2015.3.27 update.

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えぼり

日常の看護のこと、学生時代の思い出、中南米のめずらしい食べ物、そして看護をめぐる世界の出来事まで、柔らかな感受性で縦横無尽に書き尽くしたブログ《漂流生活的看護記録》は圧倒的な人気を誇っていました(現在閉鎖中)。その人気ブログを、なんと我が「かんかん!」で再開してくださるとのことッ! これはこれは大変な漂流物がやってまいりました。どうぞ皆様もお楽しみに!

 

今までも何度か訪れたことはあった、しかしいつも何かのついでで、1日や2日の滞在でしかなかった。この国の人たちもそれは旅行者によくあることだと知っていて、会う人会う人皆「次はどこに行くんだ?」と聞く。「いや、今回はここがdestino(目的地)なんだ、paseo(通過)じゃないよ」と言うとちょっと意外そうな、それでも本当にうれしそうな顔になる。

 

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sun奥様も元テロリスタ

 

 

最近は「世界一貧しい大統領」エルペペことホセ・ムヒカ大統領ですっかり有名になった南米の小国ウルグアイ(正式名は「ウルグアイ東方共和国)。そのおかげで「世界中の人たちが我が国の大統領を知っている、しかしウルグアイがどこにあるかまでは知らない」という新たな自虐ネタまで誕生してしまった。⇒(2012年リオ会議におけるムヒカ大統領の演説)

 

そのムヒカ大統領も任期満了をむかえてこの2月いっぱいで退陣し、前大統領だったタバレ・バスケスが再び大統領になった。そのことに関しては話を聞く限りでは不満がある人はおらず(そもそもバスケスの政策路線をムヒカがそのまま受け継いだだけなので何が変わるわけでもないのだ、と)、とはいえそのギャグもう使えなくなる。

 

元テロリスタだよね? と言うと、ウルグアージョ(ウルグアイ人)たちはみんな大笑いして

 

「そうだよ、テロリスタだ、妻(上院議員のルシア・トポランスキー)もテロリスタだったし、財務や諜報や、政府のいろんなところに元ツパマロスの人間がいる。でもそれは政権が完全に入れ変わったっていう証拠じゃないか?」

 

と、こともなげに言う。よく考えたら、軍事政権から民政に移管して、この国はまだ30年しか経っていない。

 

 

sun南米らしくない南米

 

 

ウルグアイは他の南米諸国の人たちからもちょっと「南米らしくない」と評されている。印象としてはヨーロッパの地方都市のような雰囲気の国である。アルゼンチンとブラジルという、いわば「キャラの立った」大国の間に挟まれ、かといってどちらにつくわけでもなく牛を追いマテ茶を飲みマイペースでそこにいる。

 

ウルグアイ人の気質もまた、あまり目立つことを好まず、合理性を重視し名より実を取る。かなりの頑固者、そして時間と金勘定には正確で細かい。ムヒカ前大統領がああいうライフスタイルを頑なに通したため有名になったが、あれは彼が特殊だったというよりは、基本的にウルグアイ人のベースにある気質なのかもしれないと思う。

 

ウルグアイにはスペインでも北部のバスク地方やガリシア地方出身の移民がとりわけ多いという特徴によるのかもしれない。イタリア系移民の多いアルゼンチンや、アンダルシア地方やエストゥレマドゥーラ地方の出身者の多いペルーやボリビアなどの、わたしがこれまで馴染んできた他の南米の国々のような、いかにもな「ラテン系」のノリとは明らかに異なる。

 

 

sunサムライの血と同じ?

 

 

南米では、名(nombre)が二つ、姓(apellido)が二つ、というスペインと同じ形式の名前を持つ。その姓も、通常名乗る二つ(父親の第一姓と母親の第一姓)の次に父母の第二姓、要は両方の祖母の第一姓が出生届などのオフィシャルの書類には記載されているため、姓が四つあるという、ちょっとした寿限無状態である。だから祖父母それぞれの四つの姓がなんだったのかまで手繰れば、だいたいのルーツは明らかになるのである。

 

今回はモンテビデオに2週間滞在することにしたため、アパートメントを借りることにしたのだが、そこのオーナーも自分は父親のほうがカスティーリャとスコットランド、母親がバスクとガリシアの家系であると言っていた。

 

「ウルグアージョは自分たちがチャルーア(植民地時代に殲滅されたウルグアイの先住民族、非常に勇敢で最後まで徹底的に戦ったという)の末裔だと信じている、と聞いてたんだけど」と言うとオーナーは、

 

「実際に血を引く者は少ないよ。でもチャルーアって、精神だと思うんだよね。日本人だって、サムライの血は引いてない人でもサムライの精神は受け継いでいるって思ってるでしょう?」

 

意外な返しに妙に納得する。去年のワールドカップで優勝したドイツチームが、対戦したアルゼンチンを揶揄したガウチョダンスをして人種差別的であるという批判を浴びていたが、そのときアルゼンチンのネットラジオで聴いた言葉、「ガウチョという人種はない、仕事でもない、ガウチョとは我々アルヘンティーノ(アルゼンチン人)の生き様のことだ」を思い出した。名前は聞きそびれたが、欧州チームでプレイしていこともあった、もうすでに引退しているサッカー選手は、静かにこう語っていた。

 

 

sunムルガにハマる

 

 

さて、ウルグアイに着いたのは2月の中旬、ちょうどカーニバルが始まる時期だった。

 

2年前モンテビデオに来たときに、「タバレ・カルドーソ」というムルガ歌手のライブを観に行く機会があった。ムルガとはアルゼンチンやウルグアイでカーニバルの時期に演奏されるミュージカルのようなもので、だいたい総勢20人程度の編成でバスドラムとスネアドラム、シンバルの伴奏とコーラスである。社会風刺や批判を抽象的な歌詞で盛り込んだ歌は難しいのだが、そのライブの度肝を抜く扮装と圧倒的な声の迫力にすっかりハマってしまった。

 

彼がヤマンドゥとマルティンという弟たちと結成した「アガラテ・カタリナ」というムルガグループが去年日本で公演をするという話を聞いて、当然わたしはすっ飛んで行った。そのときヤマンドゥと少し話ができたのだが、私が「タバレのライブを観に行ってムルガを知って、まさか日本であなたたちの演奏が聴けるとは思っていなかった、またウルグアイに行く!」と言ったら、

 

「ぜひカルナバルのときにウルグアイに来て、もっとムルガを楽しんでよ! そのときにまた会えますように!」

 

こんなヤマンドゥのサービストークにすっかり気をよくして、これは絶対にカーニバルの時期にウルグアイに行かねばと思ったのだった。

 

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ウルグアイのカーニバルは規模こそ大きくないが、長期間にわたって(約1か月間)開催され、それは南米でいちばん長い。毎晩どこかしらでムルガが演奏されていて、ムルガだけでなくタブラードという太鼓のグループの演奏もあり、会場では日替わりでこういった告知が出ている。

(えぼり「漂流生活的看護記録」第5回了)

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