自殺者数減少とはいうけれど...。

自殺者数減少とはいうけれど...。

2013.1.30 update.

宇田川廣美 イメージ

宇田川廣美

東京警察病院看護専門学校卒業後、臨床看護、フリーナース、看護系人材紹介所勤務を経て、フリーライターに。医療・看護系雑誌を中心に執筆活動を行う。現在の関心事は、介護職の専門性と看護と介護の連携について。「看護と介護の強い連携で、日本の医療も社会も、きっと、ずっと良くなる!」と思っている。

 

若年者の自殺など、むしろ増加傾向に。

 

2012年の自殺統計では、全国の自殺者数は2011年から2885人減の2万7766人ということでした。自殺者数は1998年に3万人を突破して以来ずっと3万人台でしたが徐々に減少し、2012年は男性が1万9216人(前年比1739人)、女性は8550人(前年比1146人)、都道府県別でも38都道府県いずれも減少していました。

 

しかし、内閣府の分析によると、こうした減少傾向のなかにおいても若年者層や女性の自殺者数は増加を示しています。若年者層では2001年と2011年を比較すると、◇20歳未満―36人増の622人、◇20代―209人増の3304人、◇30代―833人増の4455人でした。また女性のうつ病による自殺をみると、2011年4月から6月にかけて、幅広い年齢層でうつ病を原因とした自殺者の増加が見られています。このように、一つひとつの局面をみていくと、必ずしも楽観できない問題が感じられるのです。

 

自殺は「追い込まれた末の死」。

 

若年者の自殺の原因・動機の内訳をみると、20歳未満では学校問題、健康問題、経済・生活問題が上位を占めます。20歳以上から40歳未満の女性では健康問題が大きく、男性では健康問題、経済・生活問題、勤務問題が上位を占めました。

 

健康問題、経済・生活問題などといった言葉でまとめられた自殺原因の背景は複雑で、経済事情、家族の介護や看病などの家庭事情、自分自身の健康問題、職場の上司・同僚、友人や恋人といった対人関係など、さまざまな要因がいくつも絡み合っていると思われます。そして、追い詰められ、うつ病やアルコール依存症などを発症し、メビウスの輪のように閉塞した思考のなかで正常な判断ができなくなって一線を越えてしまう。だから、多くの自殺は本人の意志や選択によるものでなく、心理的に「追い込まれた末の死」だといわれています。そのため、世界保健機関では「自殺は、その多くが防ぐことのできる社会的な問題」と明言し、「自殺は社会の努力で避けることのできる死である」ということが世界の共通認識となりつつあります。

 

ゲートキーパー――自殺者ゼロに向けて一人ひとりができること。

 

国は2006年に自殺対策基本法を施行し、2012年8月にはいじめ自殺対策などを柱とする「自殺総合対策大綱」を決め、さまざまな対策を図っています。では社会を構成する一人として、個々人は、どのようなことを心がければいいのでしょうか。特に医療従事者は、他の人たちよりも生きることに希望をなくした人に接する機会が多いはず。しかし、医療従事者だからといって自殺を考えている人を100%見抜くことはなかなかできませんし、ましてやそれをくい止めるスキルを習得しているわけでもありません。

 

国の自殺対策の一つに、「ゲートキーパー養成」があります。ゲートキーパーとは、悩んでいる人に気づき、声を掛け、話を聞いて、必要な支援につなげ見守る人です。悩んだ人に接したとき、いったいなにから、どのように声を掛けたらいいか思い悩むことがあると思います。時には、気づかないふりをしてそっとしておいた方がよいように見える時さえあります。悩みを抱えている人の身近な立場として、どんな様子から心の変化に気づき、どんな一言から見守りや自殺予防へとつなげるのか、内閣府ではゲートキーパー養成研修テキストやDVD、ホームページなどで啓蒙しています。ぜひ、目を通して、自殺者を減らすために一人ひとりができる心がけを確かめておきたいものです。

 

参考HP

内閣府 共生社会政策 自殺対策

自殺総合対策大綱

ゲートキーパー養成研修用テキスト

平成22年中における自殺の概要資料

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