第9回 チームで行う救急救命対応研修

第9回 チームで行う救急救命対応研修

2012.11.12 update.

看護実践能力の中でも、「患者の状態が急速に変化する状況における効果的な管理」は実際の臨床現場で経験を重ねることは困難です。そこで、第6回の「かんかん!」で紹介をさせていただきました当院の“短期ローテーション”による卒後臨床研修から、クリティカルケア場面に対応できる的確な判断力と確実な救命技術を段階的・発展的に学べるように教育プログラムを組み立てています。今回は、その中の卒後2年目を対象に行う『チームで行う救急救命対応研修』についてご紹介します。

今回の研修は、開始までに心停止状態の患者およびそれに近い状態にある患者の救命に必要な基本的な救命技術を獲得していることが、受講要件となります。具体的には、①BLSが確実にできる、②AEDの操作ができる、③DCの操作ができる、④挿管の介助ができることです。それらを踏まえて、二次救命処置において有効なチーム実践力を身につけることを目標にしています。

 

目的

心肺停止及びそれに近い状態にある患者の救命率を向上させる為に看護師に必要な救命技術を習得する。

 

一般目標

1.心停止のアルゴリズム(VF・脈なしVT・PEA・Asystole)に沿った救命処置を行う方法を身につける。

2.2次救命処置において、有効なチーム実践力を身につける。

 

行動目標

1.4つの心停止を宣言できる。

2.患者の状態により、救命救急処置を選択することができる。

3.2次救命処置において、チームメンバーに分担された処置を確実に実施できる。

4.役割を自己で見出し対応・報告できる。

5.患者情報を医師・リーダーへ的確に伝えることができる。

 

対象者

卒後臨床研修を受けた卒後2年目看護師 130名

 

使用シミュレータ

ALSシミュレータ

 

プログラムの流れ

事前課題:知識テスト・スキルチェック

 ↓

ミニ講義

 ↓

演習:デモンストレーション・演習(ミニ講義と併せて90分)

 ↓

自己評価

 ↓

事後課題

 

◆トレーニングの内容

1.事前課題 e-learningで知識テストとシミュレーショントレーニング室でスキルチェックを行います。

知識テスト:前年度の研修で配布された救命救急資料で復習

 e-learningで満点/15点中 合格

スキルチェック:e-learningで挿管/DC介助のDVD視聴

シミュレーショントレーニング室で挿管/DC介助スキルチェック 合格

2.ミニ講義

4つの致死的不整脈(VF・脈なしVT・PEA・Asystole)

3.演習

1)デモンストレーション

設定:夜勤の巡視時、患者の意識がないことを発見し、急変対応をする場面

2)演習

グループ人数:6~7人

役割:発見者・応援者役①・応援者役②・当直師長役(研修生)、医師役(インストラクター)観察者(研修生:「演習評価シート」に基づいて)

急変場面設定:4場面

具体的運営:1場面ごとに研修生が役割を交代しながら演習を行う。1場面の演習ごとに、「ほかのメンバーと協力しながら蘇生処置を行えたか」の視点でディブリーフィングを行う。

4場面の演習終了後に、最終的なまとめとして「チームの中での動き」ができたか確認する。

4.自己評価

e-portfolioで自己評価する。

 

5.事後課題

研修後、部署における学習会やシミュレーションで実践する。

 

◆研修後のOJT

Off-JTでの学びは、臨床現場で活用されることに意味があります。そのためには、Off-JTで学んだ事がOJTに連携され、活用されるようにする必要があります。そこで、Off-JTとOJTの継続がシームレスに行えるように教育的工夫をしているので、説明します。

研修生がOff-JTで学んだ事を実践で活かすためには、部署の先輩が同じように行っている事、同じ技術を同じように教えられることが必要です。そこで、研修生が事前課題でスキルチェックを受けている場に部署で指導するスタッフが同席します。研修生が学んでいる場に同席した指導するスタッフは、研修生がどのように指導を受けているのか、実際の指導の内容やポイントを学びます。指導するスタッフが指導のポイントを学習した後に、「患者の状態が急速に変化する状況におけるシミュレーション」を部署で企画・実施します。Off-JTで「できた・学んだ」ことを、部署のOJTで、「できる」ようにしていきます。

患者の急変に対応する機会は全員に均等に与えられるわけではなく、人によってさまざまです。しかし、患者の急変が起こった場合は、看護師であれば誰もが対応できなくてはなりません。Off-JTとOJTの連携により、部署のOJTで「できる」に到達しても、しばらく実践していないとうまく対応できなかったりします。Off-JTで急変に対応する技術の基本を学び、部署で定期的に繰り返し実践することや部署で指導する立場になることが、臨床実践能力としての「できる」につながると考えています。

 

◆研修生の反応

「急変時であっても優先順位を考えながら行動すること、対応の流れをイメージしながら準備、処置をしていくことが大切であると気づいた。」、「急変時は焦ってしまい、余裕がなくなってしまいがちであるが、チームで対応するため、声をかけてお互いを補いながら対応すれば良いのだとわかった。」、「急変の場面で、自身が周りの動きを観察し、そこから自身ができること・やるべきことを見出すことの練習になりましたし、そこで黙々と自身のことをやるのではなく、声を出して周囲に知らせながら行うことが大切だと学んだ。」等、チームで対応することの必要性に気づき、急変に対応するために必要なことは何か考えて、自らが行動を起こさなくてはならないことを学んでいました。そのためには、急変に対応するために必要な基本技術は確実に実践できなくてはならない事にも気づいていました。

 

◆研修指導者として

事前課題として知識テストとスキルチェックを行った上での演習であったため、DCの操作や挿管に関する指導はほとんど必要ありませんでした。初回は声が出せなかったり何をしたらよいのかわからず立ち尽くしたりする研修生もいました。しかし、1場面ごとにデブリーフィングを行い、客観的な意見も聞くことで、最後には声を出し合い他のメンバーが何をしているのか観るように心がけながら行うことができ、チームの一員として何が大切なのかに気づき、研修を終えられたように感じています。

急変の場面はいつ起こるか予測できないからこそ、十分なトレーニングが必要です。1回では自分たちの未熟さばかりが見えてしまう状態だったものが、繰り返し演習を行うことで徐々にチーム力も見えてくるようになり研修生同士でもよい評価をつけることができて達成感の持てる研修でした。(10E病棟副看護師長 服部祐子)

 

◆研修の企画・運営して

今回の研修は既習の知識とスキルを用い、緊急時にチームの一員として他のメンバーと協力しながら蘇生処置を行い、チームとしての実践力を身につけることを目的として企画しました。しかし、急変場面に遭遇しなければ、現場で急変に対応する機会は少ないため、既習の知識やスキルが曖昧になってしまっている事が予測されました。そのため、研修前に知識テストとDC・挿管の介助のスキルチェックを実施しました。スキルチェックでは、細かい手技や観察内容などが曖昧になってしまっている研修生が多くみられましたが、最終的には研修生全員がクリアすることができました。研修生の中には、実際に急変を経験している者もおり、実際の場面を想定した具体的な質問もみられ、この1年での成長を感じることもできました。(教育専任副看護師長 中山元佳)

 

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