精神障害者の雇用促進へ!

精神障害者の雇用促進へ!

2012.7.13 update.

宇田川廣美 イメージ

宇田川廣美

東京警察病院看護専門学校卒業後、臨床看護、フリーナース、看護系人材紹介所勤務を経て、フリーライターに。医療・看護系雑誌を中心に執筆活動を行う。現在の関心事は、介護職の専門性と看護と介護の連携について。「看護と介護の強い連携で、日本の医療も社会も、きっと、ずっと良くなる!」と思っている。

障害者雇用率の上昇

 

6月の気になったニュースを振り返ってみると、精神科関連のニュースが目に留まりました。

「精神障害者雇用義務化」「精神科への入院、原則1年以内」「精神科へ強制入院、家族同意不要に」、などです。

うつ病をはじめとした精神疾患患者数は年々増加し、平成11年では約188万6千人だったものが、平成20年には約281万1千人となっています。それだけ身近でも起こりうる疾患なのです。いまは健康に暮らしていても、予期せず心のバランスを崩したり、超高齢社会を生きる途中で認知症になったりして障害者としての生活を送るようになるかもしれません。それに、障害を抱えた人たちの社会復帰が促進されてくれば、仲間としての付き合い方や日ごろの配慮のためにも常に意識する必要があるのではないでしょうか。もちろん医療従事者としても。

 

そこで今回は「精神障害者雇用義務化」について考えてみたいと思います。

厚生労働省は、これまで企業に対して身体障害者や知的障害者の雇用を義務付けてきました。そこに躁うつ病や統合失調症などの精神障害者を加え、障害者の働く場の拡大をさらに促進することが狙いです。

障害者雇用は現在、従業員56人以上の企業(平成25年4月以降は50人以上)に義務付けられ、雇用率は従業員数の1.8%(平成25年4月以降は2.0%)とされていますが、精神障害者を加えることでこの率はさらに上がるだろうと言われています。

 

気がかりな精神障害者雇用促進サポート

障害者の雇用や社会参加がこれまで以上に促進されることはよいことです。ただ、気がかりなことがあります。そのサポートについてです。

精神障害の場合、業務負荷や職場での人間関係などによって精神状態が不安定になることが考えられます。そこから職業生活の維持が困難になり、ひいては社会生活自体の維持が困難になることも考えられます。

こうした最悪の事態を招かないよう、医療機関では社会復帰を目指す患者さんにSST(社会生活技能訓練)をはじめとした社会復帰のためのリハビリテーションを行っています。ナースも、訓練の一環として患者さんの外出に付き添うこともあります。

地域では、自治体やNPO団体による地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターなどで社会生活の移行や職場定着のための支援を行っています。その内容は障害者の相談に応じたり、専門のジョブコーチ(職場適応援助者)によるサポートが行われたりします。ジョブコーチは、障害者と一緒に一定期間職場に出向いて仕事のコツを教えたり、症状が再発しないように働き方を当事者と一緒に検討したり、上司や同僚とのコミュニケーションの橋渡し、などしています。

また、最近では企業に対して障害者の雇用・就労をコンサルテーションし、障害者に対して就職のアドバイス、就職先の紹介・サポートを行う会社も出てきました。

 

精神障害者の自立や就労については官民によるさまざまな支援が行われています。しかし、メニューはそろっていても、一人ひとりの障害者にそのサービスが行き届いているとは言い難い現実があります、例えばジョブコーチ一つとってもそうです。平成23年度に、ハローワークを通じて求職を行った精神障害者は約4万8千件。それに対してジョブコーチは全国で1061人(平成21年度)です。しかも支援体対象は精神障害者だけでなく、身体・知的障害者も含まれます。もちろんジョブコーチとして認定された人以外も支援にあたるものの、圧倒的にその数が不足しているのは一目瞭然です。

今後ますます増えると考えられる精神障害者の就労に見合った、細やかなサポートが行える環境がどのように整い、充実していくか、日本の政治を見ていると不安が募ります。まずは共に働く仲間としての私たちは、お互いを理解し合い、助け合う努力をしていきたいものです。

 

【参考HP】

●厚生労働省 精神障害者に対する主な雇用支援施策

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha02/pdf/40.pdf

 

●厚生労働省 ジョブコーチ支援制度

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha/06a.html

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