ニジノカナタニ 第2話

ニジノカナタニ 第2話

2012.5.09 update.

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前回までのあらすじ

カエルの看護師ナンシーのもとに神のつかいマンジーが現れた。忙しすぎる仕事の中で遭遇する多くの難題を乗り越えて、ナンシーは大切なものを見つけることができるのか? 「ニジノカナタニ」第2話は、ナンシーが看護研究に挑むお話の前編です。

看護研究でおおわらわ (その1)

 

「ひゃー!院内の研究計画書発表会までもう10日しかないんだよー。」

3日前に知恵の神マンジュシュリーの遣いであるマンジ―との衝撃の出会いを経験したにもかかわらず、ナンシーは看護研究の研究計画書発表会の準備で切羽詰まっているため、そんなことすっかり忘れて準備にいっぱいいっぱいであった。

 

ナンシーの病院の看護研究のスケジュールはこうだ

 

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 1.研究スタート時に「研究計画書発表会」

 ここでは自分たちの発表だけでなく、別のグループの研究計画書に対して建設的なコメントをする

 2.その後、コメントを元に修正した研究計画書にしたがって研究を進め、

 3.スタートから約1年後に「看護研究発表会」で研究の成果を院内で発表するのだ! 

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これを、普通に勤務しながら行うのだから、かなりのハードな作業になるのは当たり前。しかも、ナンシーの働く「恩日比安病院」には図書室はない(大学病院や大病院でなければ普通はなかなか整備されていないものね)。したがって、電車で1時間半かかる県立大学の図書館までいかなければ、書籍はなかなか活用できない。

 そんな状況でナンシーは、手元にある書籍や過去の研修資料、インターネットを活用して研究計画書をまとめようとメチャメチャ頑張った。今日はそんなとんでもなく頑張る毎日が続いた4日目…… ほとんど限界越えの夜だった。

 

「ええと……研究目的はこれでよかったんだっけ……!? 

 改めて、考えてみると細部がよくわかってないよね。

 でも、とりあえずは発表会に間に合わせなきゃ。

 とにかく間に合わせて、それから考えるってことで……」

 

発表用のパワーポイントのスライドを作りながら、行き当たりばったりで考える。研究目的を考えて、最初から研究するには、現場の看護師って絶対に忙しすぎると思う。

 

「同じ研究のメンバーで話し合った決定事項をメモにしていたはずだけど……あ、これこれ」

 

もうすぐ時刻は夜中の2時をまわりそう。明日は遅番だけどそろそろ寝ないと、さすがに夜更かし絶好調のナンシーでも相当きつくなってきている。

 

けれど、今日は隣の病棟師長がナンシーの病棟にやって来て、早々と研究計画書を置いていった。

隣の病棟の看護研究チームのリーダーは、去年、関西の有名大学病院からやってきたヴィヴィアンだ。新人教育の連絡会でもなにかとナンシーとヴィヴィアンは一緒になる機会が多い。経験年数がだいたい同じだから仕方ないけど……ヴィヴィアンの研究計画書は、どこよりも早くできてるし、いろいろな尺度や高度な統計処理を使った研究らしい。差がついちゃって余計に憂鬱だ。

 

「おっとそういえば、この前突然現れたニシキゴイおばちゃん。結局やっぱり幻覚だったね。私って自分で気がついてないだけで、相当な精神的プレッシャー感じていたんだわ。追い詰められて悪夢を見ちゃったなんて繊細だよねー。びっくり!!

まあ、あれ以来ニシキゴイは現れないから、その段階はもう通り過ぎたんだね。幻覚見てるなんてのは、まだまだ修行が足りんってことなのかも(笑) 今の方がやばいもん!」

 

気づかないうちにナンシーは独り言をやたらと言い続けている。かなり疲れがたまっている証拠だ。

 

「うーん。全然進まない!! 頭もぼーっとしてきたし。はあ……こんな時間かあ。何か食べて、気合入れるか!」

 

週末に研究メンバーが集まった時に作ったシチューの残りを温めるため、ガスコンロに火をつけて、リビングに戻った。

 

 

 

 

……ガンガンガンガンガン

耳元で恐ろしいほどの騒音

どうやらリビングでそのまま寝入ってしまっていたようだ。

「ええっ?何の音?

 あ―――っ!!!!お鍋!!ヤダ!!どうしよう」

 

慌てて、ガスコンロに走りよると、鍋は空っぽ……でも焦げたり燃えたりしていない。

 

「ほーっ!よかったあああ。なんだ気のせいだったのかあ」

 

「気のせいちゃうわな!あんた!火事になるとこやったんやで!」

「げっ!」

 

あのニシキゴイがクッキーの缶を手に持って立っている。こいつ……これをガンガンぶっ叩いたのか……しかし、気のせいということで、なかったことにしていたのに、このタイミングで現れたか……

 

「まんじゅう……」

「だれがまんじゅうやねん。マンジー!知恵の神様マンジュシュリーのお遣いやないの。もういっぺん言うけど、あんた、火事で死ぬところやったんやで。」

「あ……ありがとうございます。ここんところ満足に寝てなくて、ボーっとしてたんで、まさか寝入っちゃうとは……すみません」

 

「うちがおらんかったら、ホンマ、火事なっとたわ。 この前から完全無視やったから、かわいそうやけど失礼しよかと思ってたんやけどなぁ。あんた、ホンマにここんとこ頑張っとったから、なんや健気でなぁ。ところが、あんた、今日はお鍋を火にかけて寝込んでもうたからびっくりしたわ。 看護研究に情熱燃やすんはええけど、家燃やしたらあかんでーって。あっコレごっつおもろいやん! でもな、うちは頑張っとる人は応援したくなるんやわぁ」

 

「はあ……看護研究が追い込みで……進んでないから、仕事の後、家でもやるしかないんです。 あれ、口のとこ白くなってますよ」

「えっ!あら、いややわ!」

マンジ―の口もとにクリーム状のものがペタッとくっついてる。それはまちがいなく鍋に入ってたクリームシチュー。

「あのお鍋のお料理がごっついおいしそうな匂いで……めちゃめちゃおいしかったわ。火事から助けてあげたお礼に、あの料理を毎日作ってちょうだいよ♪」

「クリームシチューですか?なんか神様のお遣いなのに、なんかものすごーく普通ですね。」

「あんなおいしいもん長いこと生きてきて初めて食べたわ。作ってくれるんやったら、特別に、その難儀しよる研究計画書のことを教えてあげるわ。」

「えーっ!看護研究わかるんですか?」

「あんた、うちを誰や思てんねん?知恵の神様マンジュシュリーの使者マンジ―やで。まかせてちょうだいな。」

 

次回につづく

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