かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2011.10.17 update.
近年,褥瘡治療には除圧や局所管理の他に栄養管理が重要であることが明らかになってきました。
また,NSTや褥瘡対策チームの普及により,多くの施設でチームによる取り組みが積極的に行わ
れるようになってきています。
しかし,多職種によるチーム医療を展開するうえで,褥瘡治療と栄養管理を効果的に行うために
は,それぞれの職種が専門的知識を共有しながら検討することが必要です。
この連載では,褥瘡患者の栄養管理について,専門的な知識,技術をコンパクトに解説し,実践
の現場に役立つ情報を提供させていただきます。病棟,在宅さまざまな現場で活動するナースの
皆さんにとって,患者さんの状態に応じた適切な栄養管理を行う指針となれば幸いです。
*本連載は毎週金曜日に更新する予定です。
Ⅱ-3 代謝された各栄養素が褥瘡の改善に果たす役割②(脂肪酸)
脂肪酸は投与が不足しがちな栄養素ですが,創傷治癒において欠かせない重要な栄養素です。
なぜなら,脂肪酸は細胞膜の構成成分そのものであり,細胞の機能を維持するうえで必要な栄養素だからです。
また,車の心臓部分であるエンジンが機能するためにはエンジンオイルが必要であるように,脂肪酸が不足すると細胞の機能は低下します。
なかでも,創傷治癒に特に必要な脂肪酸には,長鎖脂肪酸の必須脂肪酸であるn‐3系脂肪酸とn‐6系脂肪酸および中鎖脂肪酸があります。
1)n‐3系脂肪酸:α‐リノレン酸,EPA,DHA
n-3系脂肪酸は主に魚油に多く含まれています。
マクロファージを活性化させ繊維芽細胞の増殖を促進します。また,免疫能の賦活作用や抗炎症作用があります。また,DHAは脳内セロトニンを増加させ,精神活動に影響します。
2)n‐6系脂肪酸:リノール酸,γ‐リノレン酸,アラキドン酸
n-6系脂肪酸は主に食物性脂肪に多く含まれています。転写因子を活性化させ,細胞増殖を促進します。ただし,炎症促進作用があるため,感染徴候がある場合は注意が必要です。
中鎖脂肪酸は,胃で消化されたのち速やかに腸管壁で吸収され,肝臓に運ばれます。吸収時にはインスリンや胆汁酸を必要とせず,直接肝臓でエネルギーに利用されます。そのため,長鎖脂肪酸に比べ効率良くエネルギーの供給が行えます。
また,脂肪性の下痢を起こしにくいことも利点です。さらに,細胞質内へのCa2+イオンの流入を化学的に促進させることにより,たんぱく質キナーゼ活性を亢進させ,殺菌効果を高める作用があると言われています。
次回は,Part.2の最終回として,ビタミンおよび微量元素の役割について学びます。