Part2.褥瘡の改善に必要な栄養素――代謝の知識とともに学ぶ(全4回①)

Part2.褥瘡の改善に必要な栄養素――代謝の知識とともに学ぶ(全4回①)

2011.9.22 update.

石川 環(独立行政法人国立病院機構東京病院  皮膚・排泄ケア認定看護師) イメージ

石川 環(独立行政法人国立病院機構東京病院  皮膚・排泄ケア認定看護師)

近年,褥瘡治療には除圧や局所管理の他に栄養管理が重要であることが明らかになってきました。
また,NSTや褥瘡対策チームの普及により,多くの施設でチームによる取り組みが積極的に行わ
れるようになってきています。
しかし,多職種によるチーム医療を展開するうえで,褥瘡治療と栄養管理を効果的に行うために
は,それぞれの職種が専門的知識を共有しながら検討することが必要です。
この連載では,褥瘡患者の栄養管理について,専門的な知識,技術をコンパクトに解説し,実践
の現場に役立つ情報を提供させていただきます。病棟,在宅さまざまな現場で活動するナースの
          皆さんにとって,患者さんの状態に応じた適切な栄養管理を行う指針となれば幸いです。
          *本連載は毎週金曜日に更新する予定です。

Ⅱ-1 三大栄養素の必要性

 

今回から,Part.2「褥瘡の改善に必要な栄養素――代謝の知識とともに学ぶ」をスタートします。各栄養素が褥瘡の改善に果たす役割について,知識を深めていきましょう。

 

三大栄養素が生体維持に果たす役割

 

三大栄養素には「糖質」「たんぱく質」「脂質」があり,これらは生命を維持するうえで不可欠な栄養素です。これらの栄養素は細胞増殖において必要であるため,どれかひとつでも不足すれば褥瘡治療に大きく影響を及ぼします。

では,三大栄養素は生体維持のために,どのような役割を果たしているのでしょう?

 

3つの栄養素の役割を大まかに説明すると,たんぱく質と脂質は生体の構造を保つ材料となり,糖質は生体を動かすエネルギー(燃料)として利用されます。

しかし,これらの栄養素は,それぞれがまったく別の役割をしているのではなく,実際は複合的に関与しています。ここでは,この複合的な代謝のメカニズムではなく,3つの栄養素が不可欠であることを理解するために,「車の走行」に例えて説明します。

 

栄養素の役割を「車の走行」に例えると……

 

車を走らせるためには燃料となるガソリン(糖質)が必要ですが,その前に材料となる車体(たんぱく質)や潤滑・防錆のオイル(脂質)が必要です。これらのどれかが不足しても,車は走ることができません。また,エンジンが故障しても走ることができません。

 

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また,生体において,糖質をエネルギーとして利用するためにはインスリンが必要であり,エンジンの機能はインスリンの機能に置き換えて考えることができます。つまり,エンジントラブルはインスリンホルモンの異常であり,結果として,さまざまな合併症を生じます。

そして,ビタミンや微量元素は,ミラーやライトなどに該当し,これらが不足していれば安全な走行はできません。

このようにして考えると,生体維持や人間の活動にとって,それぞれの栄養素がなくてはならないものであると理解できますね。

 

次回からは,各栄養素が褥瘡の改善に果たす役割について詳しく説明していきます。

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