Part1.褥瘡ケアと栄養管理の基礎知識(全5回②)

Part1.褥瘡ケアと栄養管理の基礎知識(全5回②)

2011.8.26 update.

石川 環(独立行政法人国立病院機構東京病院  皮膚・排泄ケア認定看護師) イメージ

石川 環(独立行政法人国立病院機構東京病院  皮膚・排泄ケア認定看護師)

近年,褥瘡治療には除圧や局所管理の他に栄養管理が重要であることが明らかになってきました。
また,NSTや褥瘡対策チームの普及により,多くの施設でチームによる取り組みが積極的に行わ
れるようになってきています。
しかし,多職種によるチーム医療を展開するうえで,褥瘡治療と栄養管理を効果的に行うために
は,それぞれの職種が専門的知識を共有しながら検討することが必要です。
この連載では,褥瘡患者の栄養管理について,専門的な知識,技術をコンパクトに解説し,実践
の現場に役立つ情報を提供させていただきます。病棟,在宅さまざまな現場で活動するナースの
          皆さんにとって,患者さんの状態に応じた適切な栄養管理を行う指針となれば幸いです。
          *本連載は毎週金曜日に更新する予定です。

(2)褥瘡ケアと栄養管理のエビデンス

 

前回は,褥瘡対策チームとNSTのコラボレーションの価値について解説しました。今回は,徐々に明らかになっている褥瘡ケアと栄養管理の関係性について,国内外で報告されているエビデンスをもとに解説します。

 

ガイドラインで検証する褥瘡治療と栄養管理のエビデンス

 

褥瘡治療と栄養管理のエビデンスを国内外の4つのガイドライン(表1)で検証したところ,信頼性・妥当性の高い研究はいまだ不十分であると言えます。よって,褥瘡治療におけるエビデンスは,実はまだ十分でないのが現状です。

 

使用するエビデンス.jpg

 

その理由には,個々の疾病により消化・吸収が異なることや,圧迫,ずれなどの局所要因および体圧分散マットレスの使用状況など個別性が強いことが挙げられます。このことから,ランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)などエビデンスレベルの高い研究を行うことが困難であることが考えられます。

 

そのなかで,2010年に厚労省長寿科学研究がRCTによる立証を行っています(参考文献1)。この研究は,栄養介入が栄養状態と褥瘡治癒に及ぼす効果を検討しており,栄養介入の約300kcal(BEE1.5±0.14)を増加させることでRCTにおいて有意に褥瘡の縮小が認められたと報告されています。この結果は,褥瘡ケアに栄養介入が非常に重要であることを示していると思われます。

 

また,各ガイドラインによって推奨レベルが異なるなかで,わが国のJSPENのみが推奨レベルAとしています。このことは,エビデンスレベルの高い研究はこれからであるが,褥瘡治療における栄養管理は極めて重要であることを示していると考えられます。

 

褥瘡治療と栄養管理が医療の質を高める!

 

これらのことから,エビデンスはまだ不十分であっても,褥瘡治療における栄養管理の重要性を高く認識し介入すべきと考えます。
2004(平成16)年,厚生労働省は,重症度の高い褥瘡を発生させた場合,事故報告書を日本医療評価機構に提出することを義務付けています。そして,近年では,診療報酬に伴いほとんどの病院で褥瘡対策チームと栄養サポートチーム(NST)を設置するようになりました。

 

つまり,褥瘡対策と栄養管理は,安全で質の高い医療を行うための「病院の義務」なのです。褥瘡予防は医療事故予防であり,栄養管理は医療の基本です。設置したチームが「絵に描いた餅」とならず,きちんと機能するために,医療者は「医療の原点」を忘れずに取り組むことが重要なのです。

 

次回は「栄養管理の重要性の再認識」のテーマで,ブレーデンスケールについて解説します。

 

 

参考文献1 大浦武彦:栄養介入は創傷治癒を促進させる(厚労省長寿科学研究:RCTによる立証).日本褥瘡学会誌,12(3):277,2010.
 

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