かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2011.6.21 update.
2001年4月日本女子大学卒。同年9月からカリフォルニア州にあるミルズ大学付属大学院修士課程にてChild Life in Hospitals and Community Health Centers with Children who have Medical Needsを専攻。2003年12月同大学院卒業後、2004年4月から静岡県立静岡がんセンターにてチャイルド・ライフ・スペシャリストとして勤務、2012年5月より現職。趣味はA型らしくお部屋の掃除、でも病院のプレイルームやおもちゃの片付けはいつも時間がかかり、その間に入院している子どもたちやお母様達が手伝って下さり、「本当にA型なの?」と疑惑を持たれています・・・
国立がん研究センター中央病院緩和医療科
大曲睦恵
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さて、今回は、静岡がんセンターでの私のある一日をご紹介します。これでCLSがしている仕事のイメージができるかと思います。
●午前8:30-9:30 申し送りカンファレンス
業務は朝8時半から行われる病棟全体の申し送りから始まります。私が所属する小児科は成人患者さんも入院されている血液腫瘍内科病棟内の一角にありますので、この申し送りでは成人患者さんの様子も含め、全体的な申し送りがされます。
8時50分頃になると成人チーム、小児チームに分かれての申し送りです。
小児科チームの申し送りでは、まず深夜帯看護師から前日から深夜帯のお子さんの様子や変化についての申し送りがあります。それに合わせて医師からそれぞれのお子さんの治療スケジュールや治療目標についての話があり、そのほかの問題があれば関係スタッフ全員でその場で話し合います。
この申し送りでは私もその日の予定――手術や処置が予定されているお子さんがいれば付き添いたいこと、また、クッキングやお誕生会などの特別なイベントがあるときはその時間など――の確認を行ないます。
CLSである私が参加するカンファレンスは、この毎朝の申し送りカンファレンスが主です。その他は、不定期に開催されるケースカンファレンス、亡くなったお子さんのデスカンファレンスなどなど、開催に応じて参加します。これらのカンファレンスには、医師・看護師・CLSの他に、心理士や理学・作業・言語療法士なども参加し、多職種で行います。また、お子さんが入院して間もない頃や退院するめどが立ち始めたときには、そのお子さんを中心に、ご家族(ご両親)、医師、看護師、CLS、そしてそのお子さんの原籍校(もとの学校)の先生や院内学級の先生、時には理学・作業・言語療法士も加わり、復学に向けた話し合いを行うこともあります。
●午前9:30 CLSとしての仕事が始まります
申し送りが終わると、プレイルームの整理整頓、遊びの準備などルーチンとなっている業務を始めますが、それ以外は日によって全く違います。
例えば、泊まり込みでお子さんに付き添われているお母様が、朝ご飯や買い物などに出ている間にお子さんと一緒に待つこともあります。そのほかにも、プレイルームで遊びを始めたり、朝いちばんの手術または処置を受けるお子さんがいる時には、優先して会いに行き、緊張を和らげるためにお話したり遊んだりします。
これら以外にも、お子さん達がまだ休まれていたり、入院患者さんが来られるまでに少し空き時間ができたりする時もあり、その間に学会や発表の準備、原稿の執筆などの事務作業をすることも多いです。
そうしているうちに外泊に行っていたお子さんが戻られたり、入院するお子さんやご家族が来られたりして、一緒に遊んだり、処置に付き添ったりします。
私たちCLSが、お子さんが手術や処置を受ける際にどのように心の準備の援助――「心理的プリパレイション」と言います――を行なうか、処置中どのように支援するかについての詳細は、この後に続くほかのCLSの連載で話題になりますので、今回は省略させていただきます。
●午前11:00-正午 他病棟の成人患者さんと面談
これは、当がんセンターのCLSの大切な役割の一つです。成人患者さんがご自身の子どもに対し、「がん」という病気の説明や治療、予後についてどのように、どこまで話したらいいかという相談に乗ります。また、実際に面会に来られたお子さん達とお会いし、お話をしたり、気分転換になるような制作活動や遊びを一緒にします。
実際に患者さんのお子さんにお会いする前には、小児科医とともに成人患者さんご自身または配偶者の方と面談を行なうこともあります。具体的な悩みをお聞きして、私たちがお子さん達をどのようにサポートしていくかをご説明したりします。
この支援に関しては、看護師・心理士・医師(成人患者の主治医)・ソーシャルワーカー等多職種から依頼を受け、小児科医と一緒に動くことがほとんどです。
このような「大切な人を亡くす子ども」への支援については、現在さまざまな病院でその大切さに対して意識が高まり、病気の親を持つ子ども、親を亡くす子ども、亡くした子どもたちへの支援の輪も広がっています。
●正午-午後6:00 お昼からは子どもたちにあわせて動きます
お昼からは完全に子どもたち、そしてその家族のスケジュールにあわせてうごきます。例えば、鎮静下で陽子線治療を受けるために、早めにお昼ご飯を食べ終える子もいます。そうしたお子さんは、他の子どもたちとはスケジュールが違うので、私たちが遊びの相手になったりします。病院には遅く起きて来るお子さん達もいます。そうした子たちのと遊びやお話、午後に面会の予定があるご家族とお話したりすることもあります。
●午後6:00-8:00 小児科病棟と成人病棟を行ったりきたり
成人病棟のサポートは、お子さん達が面会に来られる夕方以降の依頼が多く、依頼を受けている期間は、夕方以降は小児科病棟と成人病棟の行き来が多くなります。
現在の日本では、CLSという職種の存在や役割に慣れていないお子さん達がほとんどです。初対面の時には、「(入院している)お父さん(お母さん)を、応援しているあなたを応援する人達がこの病院にはたくさんいて、その中のひとりですよ」と自己紹介をします。
お子さん達には、小児科医とともに、「病院はお母さん(お父さん)の病気をなおすところ。いつでもお医者さんや看護師さんがいるから安心なところ。病気になっていても、お母さんはあなたの大切なお母さんに変わりはないよね」というメッセージを伝え続けると同時に、お子さん達が、自分たちも大切な人の治療の輪の中に居る、含まれていると感じられるようなサポート、言葉かけを心がけています。
CLSが独自に行なう支援としては、お子さん達と遊ぶことや、多職種と協同して、お子さんが入院中のお父さんやお母さんにしてあげたいこと(プレゼントを作ってあげたい、傍にいてあげたい、ケアに参加したいなど)ができるように援助することなどを通して、不安や緊張の緩和や、家族の関わりをサポートすることが中心です。
入院中のお父さん、お母さんが亡くなられた時は連絡が入り、小児科医と一緒にお子さん達やご家族・ご親族と話をしたり、お子さんと患者さんの手形をとったり、また亡くなられた方の髪の毛でお守りを作ったりします。
また、ご希望があれば、家族を亡くされたお子さんとご家族に外来に来ていただいてフォローアップも行なっています。
夕方からの時間帯は、小児科でも、兄弟姉妹がお見舞いに来ることが多いです。プレイルームや病室で一緒に遊んだり話をしたりすることもあります。兄弟姉妹に声をかけたり、一緒に遊んだりすることで、病院スタッフが彼らのことも大切に思っていること、入院しているお子さんの治療の輪の一員であることを伝え、疎外感が和らぐようにスタッフ皆で配慮しています。
CLSの支援対象年齢は乳幼児から思春期・青年期まで含みますが、遊びを通した介入のニーズが高い発達段階の子どもが中心になる場合が多いのが特徴です。個々のお子さんの発達段階や心理面のニーズによっては心理士と連携して支援するケースもあります。
●午後8:00-10:00 カルテを書きつつ一日を振り返ります
午後からの業務は子どもたち、そしてその家族のスケジュールで動くのであっという間に夜になってしまいます。一日の業務は、その日に関わったお子さんに関してカルテを書いて終了です。
CLSの仕事というのは、言葉での表現が難しいところもあるかかわりが多いです。ひとつのカルテ記載にかかる時間が30-40分かかることもありますが、書きながら反省したり、次回の遊びを考えたり、今後気をつけることについて考えたりします。
また、関わったお子さん・成人患者さんのカルテ上で、多職種の方々がCLSの介入についての患者さんからのフィードバックを記載してくれていることもあり、とても参考になります。
さて、なんとなく、一日のイメージが伝わりましたでしょうか?
この後の連載でも、それぞれの現場のCLS達が自分の活動の詳細やチャイルド・ライフの理念について書いていきます。同じCLSでも、勤務する施設の特色や支援対象のニーズによって活動内容が少しずつ異なると思いますので、私の担当回はこれでいったんおしまいですが、次回からもぜひお楽しみに!