第6回 ストールアレンジで「普通」のお洒落

第6回 ストールアレンジで「普通」のお洒落

2020.1.21 update.

吉備悠理(きびゆうり) イメージ

吉備悠理(きびゆうり)

健康科学に興味を持ち2016年に東京大学医学部健康科学科に進学。看護学を専攻。服飾サークルに所属するなどファッションへの関心も高く、看護分野におけるファッションの意義を考え始め、医学看護学の枠にとらわれない形でファッション×看護に取り組むために、免許取得後、アパレルメーカーへ就職。

がん看護の授業で出会ったリンパ浮腫の写真に「むくんだらお洋服どうすれば良いの?」という素朴な疑問を抱き、リンパ浮腫患者のファッションの研究に着手。卒業研究では「リンパ浮腫とうまくつきあうスタイルブック」(http://www.adng.m.u-tokyo.ac.jp/s_201806.html)を開発した。

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yuuri.kibi.contact@gmail.com

今回はいろいろな方に知ってほしい、
ストール活用法をご紹介します。
 
首周りをあたためたり、汗を拭いたり、
肌を隠したり、シルエットをカバーしたり、
ストールは看護の視点でもたいへん優秀なアイテムです。
 
とあるファッションの大先輩から教わったのは
「ストールはお洒落なタオル」という言葉。
 
気軽に巻いて、汚れたら洗って、
寒い時も暑い時もお役立ち。
さらにちょっと工夫をすれば、
いつもの服装がお洒落になります。
 
タオルみたいに日常的に、
でもタオルよりもちょっとお洒落に、
普段の生活にストールをぜひ取り入れていただきたいです。
 
以前、病院のアピアランスケアのイベントで、
来場者(多くは入院患者さん)対象に、
ストールアレンジ教室を開催したことがあります。
 
巻き方ひとつで印象が変わるうえ、
意外と簡単にアレンジができることが好評で、
楽しいというお声をいただけました。
 
そんなストールのおすすめアレンジを
イラスト解説付きで紹介します。
 
 
 

そもそもストールとは?

 
ストールのアレンジ、と書きましたが、
ストール、ショール、スカーフ、マフラー……
似たような言葉がいろいろあります。
まずは簡単に違いを見ておきましょう。
 
ストールとは、大判の長方形あるいは
正方形の肩掛けのことを言います。
季節、性別問わず肩掛け全般に使われる言葉なので、
ここでもこうした肩掛けを代表して使っています。
 
ショールも肩掛けですが、
基本的に婦人用に用いる言葉です。
 
スカーフは、正方形や長方形の布のことを言いますが、
正方形が多く、薄手の布が用いられます。
88㎝×88㎝が定番サイズ。
 
マフラーは、長方形の襟巻き。(肩掛けではなく)
幅30㎝×長さ130~150cmが定番サイズです。
 
ストールは大きめのものが多く、
肩に掛けても良し、首に巻いても良し、腰に巻いても良しと
汎用性が高いので、アレンジを楽しむにはもってこいなのです。
 
 
 

素材で変わる機能と見た目

アレンジの前に、素材についても少しご紹介します。
ストールに使われる素材はたくさんありますが、
ここでは一部だけ取り上げます。
 
まずは、綿です。
衣服、タオルにシーツなど、用途が幅広く、
生活の場面で非常に身近な素材です。
 
200112_ストール_綿.png
 
綿のストールやマフラーは、夏におすすめです。
汗対策として、首からタオルを掛ける感覚で
巻いてあげると機能的かつお洒落。
 
一方、フォーマルシーンでよく登場するのが、
絹(シルク)やレーヨンです。
200112_ストール_シルクレーヨン.png
 
また、寒い時期に活躍するのが、毛やアクリルです。
200112_ストール_毛アクリル.png
 
素材によって、風合いや機能性、お手入れの注意点が異なるので、
参考にしてみてください。
 

おすすめアレンジ

 
前置きはこのくらいにして、実際のストールアレンジを紹介していきます。
 
まずは、病院でのストール教室でも好評だった、8の字アレンジ

 

200112_ストール_8の字.png

 

 

 

 

200112_ストール_8の字howto.png

 

8の字に端を通すだけの簡単アレンジです。
薄手の柔らかいストールを使うと、
ふんわりボリュームが出ていい感じです。
屋内でも首が寒い時に使えますし、
入院中の防寒&ちょいお洒落にもおすすめです。
 
 
次はケープ風のアレンジ
200112_ストール_ケープ風.png

200112_ストール_ケープ風howto.png

端を結んで掛けるだけ。

厚手のストールを使うと
あたたかなケープ風になりますし、
シルクなどの薄くて光沢のあるストールなら
パーティーシーンにも使えそうです。
どんなストールを使うかによって
雰囲気が変わるので、このアレンジだけでも様々に楽しめます。
 
 
続いて、正方形のストールやスカーフのアレンジも紹介します。

 

200112_ストール_アフガン.png

 

200112_ストール_アフガンhowto.png
アフガン巻きと呼ばれるアレンジです。
結び目を横にずらすことで、大人っぽく、こなれた印象になります。
 
また、大判のストールを使えば、
羽織風のアレンジもできます。

 

200112_ストール_羽織風.png

200112_ストール_羽織風howto.png

 

 
内側の端を結ぶのがポイント。
ずれにくく、腕も使いやすいです。
入院中もちょっとした羽織のように使えるので、
先ほどのストール教室でも紹介しました。
イラストのように表と裏で色の異なるストールを使うと、
配色も楽しめます。
 
 
最後に、スカート風のアレンジも紹介します。

 

200112_ストール_腰巻き.png

 

 
腰にストールを巻くことで、
コーディネートのアクセントになります。
ワイドパンツに合わせてメリハリをつけたり、
スリムなボトムに合わせて腰回りや太もものシルエットを
カモフラージュしたりと、お役立ちです。
 
 
連載第2回でご紹介した、腕吊りスカーフも、アレンジのひとつです。
普段のスタイルにプラスすることで、
生活をちょっと華やかに、ちょっと楽しくできるのが
ストールアレンジの強みではないでしょうか。
 
 
 

普通にお洒落に見せたい

 
「普通」という言葉は、
患者さんの生活において
大事なキーワードだと思います。
病気や障害によって、
周りの人と同じようにできないことがあると、
QOLの低下につながります。
 
リンパ浮腫の方にインタビューをしていると、
「普通の生活がしたい」「普通にお洒落がしたい」
「普通のお店でみんなと同じように服を買いたい」
といったお言葉を伺います。
 
もちろん、医療・看護的な機能性は重要ですが、
ファッションにおいては、
いかにも医療用という感じの
アイテムや特注品は避けたい。
 
つまり「普通」がいい、ということです。
お洒落を楽しめることも「普通」の生活の一部なのです。
 
ストールのアレンジも、肌を隠すことが目的であっても、
巻き方がお洒落であれば、お洒落目的で巻いている印象を与えます。
 
ケアにお洒落を取り入れることは、
患者さんの生活の「普通」らしさを高めることではないでしょうか。
 
患者さんの生活に「普通」を取り戻すために、
ファッションを活用していただきたいです。
 
 
参考資料
閏間正雄監修:服地の基本がわかるテキスタイル事典、ナツメ社、2019.
ファッションビジネス学会監修:1枚でおしゃれに差がつく よくわかる スカーフ、ストール&マフラーの巻き方バイブル、主婦の友社、2019.
InRed特別編集 ストールの巻き方決定版、宝島社、2018.
ファッションビジネス用語辞典 改訂第3版、日本ファッション教育振興協会、2018.
 
 
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