腰痛を防ぐには腕は「たすきがけ」に差し入れよう

腰痛を防ぐには腕は「たすきがけ」に差し入れよう

2013.9.02 update.

岡田慎一郎 イメージ

岡田慎一郎

1972年生まれ。理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員

身体障害者、高齢者施設に勤務し、独自の身体介助法を模索する中、武術研究家の甲野善紀氏と出会い、
古武術の身体運用を参考にした「古武術介護」を提案したところ大きな反響を呼んだ。近年は介護、医療、リハビリ、育児支援、 教育など、幅広い分野で身体を通した発想と実践を展開させ、講演、執筆、企業アドバイザーなど多岐にわたる活動を行う。
著書「古武術介護入門」「古武術介護実践編」(医学書院)、「家族のための介護入門」(PHP研究所)、「介護福祉士実技試験合格ガイド」(晶文社)など多数。
ユーキャン通信講座「古武術介護講座」のニジボックス(リクルート)、「かいごモバイル」監修、株式会社JTBベネフィットのアドバイザーを務める。

 

「身体介助で腰を痛めた」という話を耳にしたことのある人は、少なくないと思います。医療・介護の現場では、身体介助に携わる人の多くが腰痛を患っているといわれており、「身体介助は腰を痛めるもの」ということが言わば“ 常識” となってしまっている現状があります。


しかし、身体介助で腰を痛める原因の多くは、介助技術のベースとなる「介助者の身体の使い方」にある場合が多いというのが、筆者の印象です。もちろん、それで腰痛がゼロになるわけではありませんが、ちょっとしたことに注意するだけで、腰痛のリスクを大きく軽減することができるのです。

 

 

腕はたすきがけに差し入れよ!

 

理屈はさておき、すぐに使える工夫をひとつ、ご紹介します。

 

それは、「腕の差し入れ方」です。ベッド上で上体を起こしたり、体位を変える際には被介助者の上半身に腕を差し入れて抱えますが、このとき、被介助者の肩に並行になる形で、腕を差し入れている人が案外多いのです。

 

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被介助者の肩に「並行」になる形は、力が伝わりにくい

 

 

 

そこで、被介助者の首筋から肩甲骨に沿うように「たすきがけ」に腕を差し入れます。このほうが被介助者の上半身全体に力が伝わりやすいのです。

 

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「たすきがけ」に腕を差し入れると、体幹全体に力が加わる

 

 

なんでもないことのようですが、これだけでも介助者の力は効率的に被介助者の身体に伝わり、結果的に、双方の負担を軽減することができるのです。

 

体幹に腕を差し入れるときは、自分から見て奥の肩を持ち上げ、首筋から腕を差し入れます。首とベッド面の間の空間(中央写真a)に腕を差し入れると、「たすきがけ」に抱えることができます。

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このように「たすきがけ」に抱えることができれば、体位変換や上体起こしの負担を軽減することができます。例えばベッド上の並行移動であれば、まずたすきがけに上半身を抱えて移動させ、その後、腰、足と順番に移動させれば、ほとんど腰に負担をかけることなく、ベッド上で並行移動させることができます。

 

 

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抱えるとき、腕をたすきがけに差し入れているために、上半身全体を動かすことができる。

 

 

 

また、たすきがけに抱えると、介助者の腕が被介助者の上体を「斜め」に横断することになるため、被介助者の自然な動きを引き出しやすくなります。例えば上体起こしの場合、たすきがけに抱えていることによって、被介助者の上体が「弧」を描くように、無理なく起き上がることができるのです。

 

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被介助者の起き上がりの動きは「直線」ではなく「弧」を描く。「たすきがけ」はこの「弧」の動きを引き出すことにも役立つ

 

 

 

もっと知りたい人は・・・

 

さて、ここでご紹介したのは、「腰痛を起こさない身体介助術」のほんの一端です。

 

・・・・・・え? もっと知りたい? 

 

そんなあなたには、ちょうど9月2日に刊行される拙著『腰痛のない身体介助術』を、よろしければご一読ください!

 

 

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『腰痛を起こさない身体介助術』

医学書院、2013年9月発行

B5変・128頁

定価1890円(本体1800円+税)

ISBN-13: 978-4260018449

 

 

 

・・・・・・ストレートな宣伝で申し訳ありません(笑)。

でも、今回の本は、現場で本当に困っている人に、ぜひ手にとっていただきたいんです。

 

筆者が重度障害者施設と高齢者施設で10 年あまり介護福祉士として勤めたのち、理学療法士として、あるいは身体介助法の講師として積んできた経験にもとづいて、「腰痛を起こさない無理のない身体介助法」について、「3つの原則」と「55のヒント」としてまとめています。

 

原則、ヒントともに、写真や図解によって、「一目でわかる」ということに狙いを絞っています。

 

もちろん、身体介助には、被介助者と介助者の体格や状態によって、無限のバリエーションがありますので、「絶対に正しい方法」はありえません。しかし、すべてに共通するような「原理」や、さまざまな場面で応用可能な「ヒント」はある、というのが筆者の考えです。

 

ハードな現場で腰痛の危険を感じている人、腰痛に困った経験のある人、少しでも身体介助の身体の負担を軽減したい方、ぜひ書店などで手に取ってご覧ください。

 

 

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